第27話 スイカのち誘惑
俺を襲ってきたのは――マシュマロみたいな柔らかな感触だった。
……いや、月乃だろ。
この柔らかくて大きな感触、絶対に月乃だろ……!
俺が何回、押し付けられたと思ってるんだ。
柔らかさや大きさで簡単にわかってしまった。
「月乃だよな?」
「あれ? もうバレてしまいましたか?」
月乃は驚いた様子だった。
「まあ……月乃と他の二人じゃあ、大きさが違うからな……」
「……? それは、どういう……」
「あ、ああいや、何でもないよ!
月乃がスイカだとすると、花恋は小ぶりなメロン、雪那に関しては……。
「――痛っ?!」
次の瞬間、耳に鋭い痛みが走った。
まるで――耳を噛まれたようだった。
「――ユ、ウ? 今、超失礼なこと考えなかった?」
耳元から少し不機嫌そうな雪那の声が聞こえてくる。
「ゆ……雪那?!」
「雪那ちゃん? 今は私のターンですよ?」
「ごめんごめん……なんか、ユウが超失礼なことを考えてるような気がしてさぁ」
そうして雪那は離れていった――かと思っていた。
「――私のターンの時は覚悟してね?」
耳元でそう言い残していった。
っ……ど、どうしよ……。
俺が冷や汗を流していると――
「――ユウさん」
今度は、月乃の声が優しく鼓膜を揺らした。
「雪那ちゃんの邪魔が入りましたけど……今は私のターンですからね? 私だけに集中してください……!」
「つ、月乃……」
「ほら、もっと私のことを触らないと何を着ているのか当てられませんよ?」
月乃は扇情的な声で俺を煽る。
そういえば、人物を当てるだけではなく何を着ているのか当てなきゃ、解放されないんだよな……。
俺は……恐る恐る月乃の体に手を伸ばした。
「んっ……」
偶然にも――触った場所は月乃の二の腕だった。
少し揉んだり、触ったりしていくと……服はふわふわとした肌触りで、生地はかなり薄かった。
「ユウさん……! んっ……く、くすぐったいです……!」
「ああ、ごめんごめん……でも……ごめん、全然何着てるか、わからないや……」
何だこれ……?
ふわふわしているし、防寒服かと思ったが……それにしては、あまりにも生地が薄すぎる。
「流石に触っただけじゃわかりませんか……? じゃあ……ヒントを一つ、あげますね?」
「いいのか?」
「はい……! でも、ヒントをあげても、わからなかったら……代わりにユウさんには罰ゲームを受けてもらいますから」
「え……?」
「では、ヒントです! この服は……普通の服屋さんでは売っていません!」
「普通の服屋では売っていない……?」
そう言われて……とある可能性が脳裏をよぎった。
いや、まさか、そんなこと……。
「さあ、わかりましたか?」
「……あ、ああ。わかったよ。月乃が今着ている服は――」
俺は、唯一、思い浮かんだ答えを話した。
「――水着じゃないか?」
「不正解です……! 後で罰ゲームですね……!」
月乃は嬉しそうに言った。
いや……これ無理じゃね?
どう考えても着ている服を肌触りだけで当てるなんて……正解させる気ないだろ……。
俺がそう思っていると……月乃は俺の元から離れて、今度は別の人物が近づいてきた。
その子は至近距離まで無言で近づいてきて――
「――センパイ、好きです」
――耳元で甘く囁いた。
「ッ〜〜〜! か、花恋?!」
「あれ? バレちゃいましたか?」
「そりゃあな……! てか、隠す気なさすぎだろ……」
「えへへ、ゲームよりもセンパイをドキドキさせる方が面白そうだったので……!」
「っ……」
まあ、実際にちょっとドキッとしたけどさぁ……!
「というわけでセンパイ、あとは私の着ている服を当てるだけですよ?」
「くっ……それが難しいんだよ……!」
「ふふっ、頑張ってください……! ちなみに言っておくと、私たちは3人とも共通の服を着てますから、月乃ちゃんのヒントも使えますよ?」
「そうなのか……!?」
月乃のヒントは、『普通の服屋では売っていない』……だよな。
さらに水着でもない……。
「情報が少なすぎて、わかんねえな……花恋、質問だけど、俺はその服の名前を知っているよな?」
「はい、勿論です! 基本的にみんな知っていると思いますよ?」
「となると……なんだ?」
みんなが知っている服……?
ワンピースとかパーカーとかジャージとかか?
「ふふっ、まだわからないみたいですね? なら……ぎゅ〜っ!」
すると、花恋が正面から抱きついてきた。
「――ちょ、ちょっと?! 花恋?!」
「えへへ、こうすれば服の肌触りや形がよくわかるでしょう?」
「っ……そ、そうだけど……」
大きくて、柔らかいブツが当たっている上に……花恋の体温や吐息、柔らかな四肢の感触などが、俺の理性を溶かしていく。
「――そういえばセンパイ」
花恋は何かを思い出したような口調で話し始めた。
「な、なんだ?」
「もしも……もしもですよ? センパイが私たち3人の中から誰を選ぶのか悩んでいるというのなら――」
花恋は一呼吸挟むと、俺の耳元で――
「――『全員選ぶ』っていうのも、アリなんですよ?」
その囁き声は……鼓膜を甘美に溶かし、脳の中を甘く蹂躙していった。




