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『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ  作者: 水葉わいん/わいん。


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第2話 状況整理のち記憶喪失





「えっと……俺、なにか不味いこと言ったかな」


 俺は、3人の凍りついた表情を交互に見ながら、苦笑いする。

 えっと……さっきの発言は、不味かったのか?


 でも……どこが?


「……い、いえ、なんでもないですよっ! それよりも、怪我の方は大丈夫ですかっ?」


 後輩感あふれる銀髪女子は、俺の左足に視線を移す。


 ――そこには、包帯でぐるぐる巻きにされた俺の左足があった。


「痛ッ!!!」


 次の瞬間、足に激しい痛みが襲ってきた。

 どうやら、怪我している足に気づいたことで、今まで意識していなかった痛みを感じるようになったらしい。


「ご、ごめんなさいっ! そんな大きな怪我を負って大丈夫なわけありませんよね……」


「ま、まあ……流石にちょっと痛いかな……ところで、俺の左足って完全に壊れちゃったのか?」


「い、いえっ! リハビリをすれば、いずれ歩くことは出来る……らしいです。でも……スポーツに関しては、少し……難しいって……」


 後輩系の女子は、申し訳なそうに、顔を曇らせる。


 そうか……スポーツは無理か。


「そっか! まあ、歩けるようになるならいいや!」


 まっ、前世はサッカー部で、沢山運動したからな!


 今世は室内で出来ることに情熱を燃やすのも悪くないかもしれないな!!!


 俺は、そうやって心の底から明るく振る舞った。

 ――なのに。


「ッ……ま、また……」


 またしても三人の顔が苦しみで歪んだ。


 また、俺は何か不味いことを言ってしまったのか?

 ……わからん。


「えっと……何か、俺が不味いことを言ったのなら、教えて欲しいんだけど……」


「い、いえ! なんでもありませんから!」


「そっか……」


 本人たちが何でもない、と言うなら気にしなくてもいいか。


 それはそうと、俺はベッドを囲んでいる3人の少女の顔を見渡す。


 改めて思うが……あのギャルゲーのキャラたちが、現実にいるって不思議な気分だなぁ……!


 俺は、左から順番に見ていく。


 まずは、染めたのであろう金髪を胸まで伸ばし、少し赤みがかった瞳をしたダウナー系ギャルだ。

 スタイルも良くて、肉付きのいい体をしており、顔も当然いい。

 まさに、超絶美少女だ。

 名前は、確か……


星宮(ほしみや)雪那(ゆきな)さん……だよね」



「そ、そうだよ……! て、てか、あたしに『さん』なんて付けなくて良いよ。雪那って雑に呼んでくれて良いから。だって、あんた……ううん、貴方は私たちを()()()()救ってくれた恩人なんだし」


「別に恩人って程じゃないって! あんま気にしないでくれよ! ……でもまあ、折角なら、お言葉に甘えて雪那って呼ばせてもらうな!」


「ん……そうしてしてくれると、あたしも助かる」


 しかし、雪那は「でも」と付け加えると――彼女の瞳から光が消えた。

 顔から感情は消え失せ、光ない瞳を俺に向けて――


「貴方が、恩人じゃないってのは認められない。貴方はどう考えても、あたしの恩人。何回も()()()()あたしを助けようとしてくれて……恩人じゃないわけ、ない……ッ!」


「っ……」


 ど、どうしたんだ?

 様子が……なんだか、変だ。


 それに、何回も助けたって、どういうことだ……?

 俺は、一回しか雪那を助けたことは、ないはずなのだが……。


「えっと……何回も? 地獄から? ……一体、どういうことなんだ?」


「ッ?! ……そっか、やっぱり、全部、覚えてないんだ」


 雪那は、悲しげに、言葉を漏らした。


「あたしが言ったことは、気にしないでいいよ。ごめんなさい、変なことを言っちゃって」


「あ、ああ、そうか」


「うん。本当に……ごめんなさい」


 雪那は、表情を曇らせたままだった。


 ……何が起こってるんだ?


 ……まあいいか。これ以上は考えても仕方がなさそうだし、一旦、次に移ろう。




 次に、中央に居る黒髪を腰まで伸ばした黒目の真面目そうな少女に視線を移す。

 立てば芍薬、座れば牡丹という言葉がよく似合う。

 まさに、大和撫子だ。

 名前は……


月島(つきしま)月乃(つきの)さん……かな?」


「はい。そうです、月島月乃です……私のことも、月乃って呼び捨てにしてくれていいですから……」


「おっけー、月乃ね」


 月乃は、どこか暗い雰囲気だった。

 言葉の節々には元気がなく、表情の節々から絶望のような感情が感じ取れるのだ。


 ……一体、何が起こってるんだ?


 まあいいや。

 それよりも、俺はこの子に聞きたいことがあったのだ。


 俺は、ゆっくりと部屋の壁に目を向ける。


「――ところでさ、あそこにある大量の千羽鶴は……月乃さんが?」


 壁には、数え切れないほどの千羽鶴が飾ってあった。


 千羽……いいや、それどころじゃない。

 五千羽くらいあるんじゃないか? これ?


「あ……はい。これは私がやりました……貴方が目を覚ましますようにって願ってたら、1万羽ほどになってしまいましたけど……もしかして、迷惑……でしたか?」


「いやいや! ありがとうな! 俺……そもそも千羽鶴なんて貰うの初めてだから、めっちゃ嬉しいわ!!!」


「ッ……ほ、本当ですか」


 月乃は、パアッと顔を明るくする。


 良かった、さっきからこの子、ずっと表情を曇らせてたから、心配だったんだよな。


 そう思った瞬間――


「あっ……」


 月乃の視界に、俺の怪我した足が入った。

 次の瞬間、月乃の表情は再び暗くなっていく。


 もしかして、足の怪我に対して、罪悪感を抱いているのか?


「別に、俺の足に関しては気にしなくても良いんだけど……」


「――それは、絶対にできません」


 パシャリと、月乃は、口を挟んだ。


「足の怪我に関しては、一生をかけて、償わせてください……車椅子を押す人が必要なら、いつでも呼んでください。肩を貸して欲しいなら、いつでも貸します。私は……死ぬまで、なんでもしますから」


 月乃は、光が消えた瞳で、矢継ぎ早にそう言った。


「あー、そう? でも、別にマジで俺、全然気にしてないからさ! 償ってくれるのは嬉しいけどね!!!」


 真面目な子なんだなぁ。

 一生をかけて償うなんて、大袈裟なことを言うものだ。



 最後に銀髪ショートで、青い瞳をした女の子に視線を移す。

 彼女は、どこかあどけない雰囲気を纏っている1個下の後輩である。

 どうやら、ヨーロッパ人とのクォーターらしく、彼女は月乃とは違ったベクトルの美少女だな。

 名前は――


夜桜(よざくら)花恋(かれん)……で、合ってるよね?」


「は、はいっ! みんなと同じように、花恋(かれん)って呼び捨てしてもらって良いですから……!」


「そっか! 花恋ね。えっと……俺の一個下の後輩だよね?」


「はいっ! ユウ先輩!」


 ユウ先輩……ああ、そういえば、俺の今世での名前って『ユウ』なのか。

 死亡エンドを回避するのに夢中で、自分の名前を忘れていた。


「ユウ先輩! 私たちを助けてくれてありがとうございますっ!」


 花恋は満面の笑みで、感謝を告げる。


 なんだろう……さっきの二人が、どこか暗い表情をしていたから、花恋の明るい笑みは、少し助かる。


「――でも、絶対に、二度とあんなことさせませんから」


 次の瞬間、ドスの効いた低い声が聞こえてきた。

 それは――花恋の方からだった。


「永遠の苦しみに囚われた私たちを、何回も何回も助けようとしてくれて……ついには、その苦しみから解放してくれて……。何もできなくて、本当にごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。――次は絶対に私が守りますから」


 花恋は、濡れた瞳でじぃっとこちらを見つめて、言葉を繰り返す。


「ですから、ですから、ですから、ですから、ですから――」


 そして、最後に心底、心配そうに――


「もう……無理、しないでくださいね……」


 そう言った。


「えっ……あ……うん」


 あ、あれ?

 明るい子……だと思ったんだけどな?


 お、おかしいな。


 何が起こってるんだ?


 普通、ここは俺が感謝される場面じゃないのか?

 どうして……彼女らは、こんなにも表情を曇らせているんだ?


 俺の足の怪我に罪悪感を抱いているのだろうか?

 なら――


「えっと……みんな。俺の足の一本くらい、みんなの未来に比べりゃ大したものじゃないんだから、あんまり重く捉えないで欲しいな……!」


「「「……………………」」」


 次の瞬間――3人の間に沈黙が走る。


 俺は、恐る恐る3人の顔を覗いてみると――全員の表情からは明るい感情が消え失せていた。


 そこにあるのは、後悔と絶望をぐちゃぐちゃに混ぜたような表情だった。


 ……どうやら、俺は不味いことを言ったらしい。


















「大丈夫なわけない、平気なわけない……あんなに死んで、平気なわけない……」


「あああああああああ……やっぱり……記憶を失って……私のせいだ……」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……お願いだから……センパイ、もうこれ以上、壊れないでよぉ……」


 三人の亡霊のような声が、病院の廊下に響き渡った。








 この時の俺は、何も知らなかった。


 彼女たちが暗い表情をしているのは俺に怪我をさせてしまったからではなく――俺の死を1万回以上、見ていたからだってことを。

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