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『死に戻り』しまくって助けたヒロインが、記憶を引き継いでいたので全員病んだ  作者: 水葉わいん/わいん。


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第17話 曇りのち恋慕


【花恋side】



「せん……ぱい……」


 私は、枕に顔を埋めて、呟いた。


 薄暗い部屋の中、私の頭の中で何度もセンパイの言葉が反芻される。


『――三人には俺なんか気にせずに、普通の幸せを手にして、普通に生きて欲しいんだ』


 ……無理だよ。

 センパイに壊れるほどの苦しみを強いて……そして、何も出来なかった私に……普通に生きる権利なんてない。


 自分の幸せなんて考えずに、罪を一生、償って生きていかなきゃいけないの。


 ――なのに。


「どうして……なんで……センパイのことを考えると、こんなに胸がドキドキするの……?」


 自分の胸に手を当てれば、胸が高鳴っているのが、よくわかった。


 センパイのことを考えれば考えるほど、脳は甘くとろけていき、なんとも言い表せない悶々とした気持ちが全身が支配していく。


 私は罪人なのに、センパイが辛い時に何も出来なかったのに……


 ――センパイのことを好きになってしまったのだ。


「ごめんなさい……ごめんなさい……」


 こんな気持ち、忘れよう。

 そう思っても……どれだけ思っても、想いは消えない。


「なんで……なの……」


 溢れるセンパイへの想いを痛みでかき消そうと、思った。

 だから、私は何度も自分の腕に爪を立てた。


「ッ……」


 痛い、痛い、痛い……。

 痛いのに。


 ――なんでまだ……ドキドキしっぱなしなの……?


「ぁ……なんでよ……」


 私なんかがセンパイを好きになるなんて、絶対に許されていいはずない。


 私は、何時間も爪を立て続けた。

 痛みに耐えながら……何時間も。


 けれど……どれだけ頑張っても、センパイへの想いは消えなかった。


「ごめんなさい……ごめんなさい……私なんかが、センパイのことを好きになって……本当に……ごめんなさい……」


 全身から力が抜けた私は、ボソボソと謝罪の言葉を繰り返していた。

 なんのために謝っているのか、誰に謝っているのか……もうわからなっていたけれど、こうしないと正気が保てなかった。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


 数えきれないほど、謝り続けた。


 ――でも、最後には。


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい……私は……センパイのことが……好きみたいです……」


 結局、私は自分の欲望に打ち勝てなかった。


 我慢していた想いが……堰を切ったように溢れ出した。


 センパイの全部が好き。

 センパイが嬉しい時にする太陽のような笑顔が好き。センパイが嘘をつくときに左頬を掻く癖が可愛くて好き。考え事する時に髪の毛を弄る癖が好き。私たちの感情に機敏で色々気がついてくれるのが好き。何がなんでも助けてくれるのが好き。絶対に諦めようとしないのが好き。センパイが私たちが病んでいる時に苦しそうに顔を歪めてるのもちょっと好き。


「好き、好き……すきすきすき……センパイ、大好き……」


 近くにあった枕を、ぎゅっと抱きしめた。

 私なんかが好きになっちゃいけないのに……私はセンパイの全部が好き。


 もしも、センパイのことをこうやって抱きしめられたら、どれだけ幸せだろうか。

 死んじゃいそうなくらい幸せなんだろうなぁ……。


「……ぁ」


 薄暗い部屋の中。

 ボロボロになった十字架のアクセサリーが視界に入った。


「ぁ……あああ……そうだ、私なんかがセンパイと結ばれるなんて……絶対にダメなのに……ごめんなさい……」


 唇を噛んで、理性を呼び戻す。

 私の心の中では、理性とセンパイへの想いがせめぎ合いを始めた。


 ごめんなさい……ごめんなさい、ごめんなさい……好き……好き好き好き……ごめんなさい、好き、ごめんなさい、好き……好き……好き好き好き……好き、ごめんなさい、好き……。


「――好き……センパイ、好き……」


 最後に勝ったのは……センパイへの想いだった。


 私は十字架のアクセサリーを掴んだ。


 そして――床に叩きつけた。

 アクセサリーは、三つに砕け散った。


「……ごめんなさい、センパイ。私はどこまでも我儘で……この想いを諦めきれないみたいです……」


 この想いを諦めるのは、やめた。


 告白しよう。

 センパイに……この想いを伝えよう。


 そして……砕け散れば、この想いも消えるはず。

 ああ……でも、もしもセンパイがOKしてくれたら……どれだけ幸せなことか……。


「――ううん、ダメ……」


 よくよく考えれば……それはダメだ。


 私がセンパイのことを好きになって告白するのはいい。

 けれど……センパイに私と付き合うかどうかを判断させるのはダメだ。


 だって――センパイは、私がセンパイに何をしでかしたのか、どれくらい大きな罪を犯したのか……何も知らないんだから。

 もしも、告白を受け入れてもらえたとしても……それは、騙しているのと同じだ。


 だから――私とセンパイが付き合うためには――


「――センパイに……失った記憶を全部、思い出してもらうしか……ない」


 自分で言っていて、残酷だと思った。


 あんなに辛い経験をしたのに――それを思い出さなければいけないのだ。


「……だ、だめ……ここで……とまらなきゃ……」


 あんな経験、永遠に忘れていた方が絶対にいい。

 私の私利私欲のために、思い出させるなんて……絶対にあってはいけない。


 私は理性で自分にブレーキをかけた。


 ――けれど。


 湧き上がってくる想いは……理性じゃ止まらなかった。


「好き……好き……この想いを……センパイに、伝えたい……」


 呼吸がしづらくなるほどに胸が苦しくって……私は胸元の服を力強く握った。


 苦しい、苦しい苦しい……苦しい。


 もう……センパイを苦しめたくないのに。

 センパイの精神状態を第一に考えるのなら……絶対にこんな選択肢、あり得ないのに。


 ――なんで、なんでなんでなんで、私は止まってくれないの……?!


 嫌だ、センパイをこれ以上苦しめたくない……けど、好き。


 私は最低だ。最低で最悪で醜い。


 ユウに酷いことをしたのに好きになってしまうのが最低。

 普通に考えれば、あんなに酷いことをしたら受け入れてもらえるはずがないのに。


 自分の欲望のために、ユウを苦しめようとしているところが最低。

 そんなの罪を重ねるようなものだ。ただでさえ、償い切れないのに……これ以上、罪を重ねてどうするの?


 そして。

 何よりも。


「――どうしても、ユウのことを諦め切れないところが……最低」


 苦しい……苦しいよぉ。

 好きな人を諦めようとするって……こんなに辛いの?


 いつの間にかに目から涙が溢れ出し、視界はぐちゃぐちゃに歪んでいく。

 私は、何度も手で涙を拭おうとするけれど、涙は止まらなくって……ベッドを濡らしていった。


 喉に鉛がつっかえているような感覚だった。


 だから、思わず私は喉に手を伸ばした。


 ――今、ここで……死んじゃえば……ユウも私も幸せになれるのかな


 そんな考えが脳裏をよぎった。


 そうだ、こんな最低な私、死んじゃえ。

 これ以上、罪を重ねる前に死んじゃえばいいのだ。


 両手を首に伸ばした。


 最後にセンパイのことを思い出した。


 ――『絶対に、助けてみせるからッ!』


 真っ先に思い浮かんだのは……センパイが、光に満ちた瞳で、私たちを助けようとしている場面だった。


 無限の地獄にいた私たちを救おうとしてくれたの……嬉しかったな。

 貴方が唯一の希望だった。


 本当に……ありがとう、センパイ。

 じゃあね。


 私は両手に力を込めて。


 そして。














「……無理だよ。そんなの」


 私の全身から力が抜け落ちて、手はぶらんと垂れさがった。


 この命はセンパイが救ってくれたもの。

 それを……殺すことなんて、私にはできなかった。


 それに私が死ねば、それはそれでセンパイが苦しむ。


 死ぬことなんて……絶対に出来ない。


 ……でも、だったら……私は、どうすればいいの?


 私には……何もわからなかった。


 ――そんな時だった。


 ――ピコン


 メールが届いた。

 私は視線だけをスマホに移すと――


〈――花恋さん、ユウが貴方たち3人に隠している秘密について、知りたくありませんか?〉


 というメールが送られてきていた。


「……どういうこと?」


 明らかに怪しいメールだというのに……私は引き寄せられるようにメールを確認した。

 送り主は匿名であり、どうして私のメールを知っているのかはわからない。


 けれど、送り主は真実を教える代わりに、頼み事をしてきた。


 ――ユウに、『ヒロイン全員死亡エンド』について知っているか、尋ねてほしい


 という頼み事を。




 ――◇――◇――◇――




 センパイと別れた後。




〈頼まれた通り、『ヒロイン全員死亡エンド』について尋ねてきました〉


 私は例の人物にメールを送り、証拠として、こっそり隠し撮りしていた動画も送った。


 すると、すぐに返信はきた。


〈ありがとうございます。お陰様でユウさんが転生者であり、ゲームについて知っている存在だとわかりました〉


 ゲーム。

 一体……どう言う意味なのだろうか?


 この人から話を聞いていると……ユウが私たちを助けた背景には別の何かがあったらしい。


 私は……それをラッキーだと思った。

 ユウが善意以外に打算的な理由で私たちを助けたのだとすれば……ユウの死に戻りは、私たちが原因じゃないということになる。

 もし、そうであれば……これ以上、罪悪感で苦しまずに済む。


 何よりも――センパイに自信を持って『好き』って言える……!


 そもそも、ただの全員で1万回以上、死ぬなんて出来るわけないのだ。

 きっと、センパイには何か、打算があった。


 そう思うと……気持ちは楽になっていった。


 ――ピコン


 例の人物から、またメールが来た。


〈――では、約束通り、真実をお教えしますね? 住所を送りますので、そこに来てください〉


 きた。


 ついに……真実が明らかになる。








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