表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/22

第4話:この令嬢、本格的なライブに出演しましてよ

「……で? なんで私が“お笑いライブ”なんて出ることになってますの?」




放課後、校舎裏のベンチ。


制服姿のまま、私は腕を組んで相方の小林くんを睨んでいた。




「いや、文化祭でバズったのを覚えてるだろ?


あれがキッカケで、お笑い好きの三年生──吉沢先輩からスカウトされてさ」




小林くんは汗をかきながらも、どこか楽しそうだ。


私はというと、納得いかない表情でふんっと鼻を鳴らした。




「それは“文化祭の余興”でしてよ。本物の舞台とは比べものになりませんわ」




「いや、そこまで否定しなくても……。


でもさ、あれは本当にウケてたよ。


ネットに動画あがって、今じゃ2万回再生だぜ?」




「……ふむ」




さすがに2万回は無視できませんわね。


貴族としての矜持はともかく、“芸人としての魂”が刺激される数字ですわ。




「しかも、吉沢先輩って、実は元・地下芸人だったらしい。


今でもライブハウスのツテ持ってて、“次の若手”を育てたいんだって」




「つまり──この私を、現代で再デビューさせようというわけですのね?」




「お、おう……そうなるな」




私はため息をついてから、空を仰いだ。




(断頭台で果てた私が、まさか令和の高校生として──“芸人”になるなんて)




「──小林くん」




「な、なに?」




「コンビ名は『ノーブルソウル』で決まりですわ。


今さら変える気はありませんわよ?」




「へっ、もちろんだって!」




彼の笑顔が眩しい。……いや、直視するのは少し恥ずかしいですわ。




***




週末。渋谷のライブハウス。




薄暗い照明、狭い控え室、緊張した空気。




「おお、来た来た。“ノーブルソウル”ちゃんたち!」




声をかけてきたのは、眼鏡にキャップの青年──吉沢先輩。どこか飄々とした雰囲気の人だ。




「初舞台、緊張してるかー? でもまぁ、大丈夫。


前説は俺がやっとくし、お前らは笑い取って帰ってくればOK」




「……責任が重いですわね」




「リディア、大丈夫だって」




「ええ、覚悟はできてますわ」




鏡の前で、制服を整える。


マイクを持つ手に少し汗を感じたが、気品は失っていない。




(ステージは処刑台よりはるかにマシ。命までは取られませんもの)




「いよっ、次の登場は〜!“貴族と平民の笑撃漫才”! ノーブルソウル!」




拍手が聞こえる。ライトがまぶしい。




舞台の上、私は一歩前に出て、胸を張った。




「皆様、ごきげんよう──令嬢ツッコミ担当、アヴァローネことリディアですわ!」




「どうも〜平民代表、小林でーす!」




会場、笑い。




「なんでやねん、って言う前に、まずその自己紹介のクセがすごい!」




「平民の割には喋れますのね。どこで覚えましたの? 漫才塾ですの?」




「貴族が通う塾って、そんなピンポイントなもんある!?」




笑いが広がる。




ああ──やっぱり、気持ちいいですわ。




この“拍手”と“笑い”に包まれる感じ、


私がこの時代に転生して得た最大の宝物かもしれませんわね。




舞台袖に戻ったあと、吉沢先輩が言った。




「お前ら、今日のネタ……マジでウケてたぞ」




「ありがとうございますわ!」




「マジで続けろよ。次、月末の高校生芸人バトル、エントリーしといたから」




「え?」




「えぇ!?」




こうして──私の“芸人令嬢”としての人生が、本格的に幕を開けたのでした。




(つづく)



ここまでお読みいただきありがとうございます!

もしこの内容が面白い、続きが読みたいと思ったら、


下にある☆☆☆☆☆から、

作品への応援お願いいたします。


コメント等も頂けると励みになります。

ブックマークもめちゃくちゃ嬉しいです。


何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ