第2話:SNSを始めたこの令嬢、バズる気あり──ですわ
──転生から数日が経った。
私ことリディア・フォン・アヴァローネ、もとい“朝霧リディア”としての生活にも、ようやく慣れてきたところですわ。
「いや、慣れるの早くね?」
などとクラスメイトの男子に言われましたけれど、それはこっちの台詞ですわ。
だって、あなた達──制服って、こんなにピチピチしてて動きづらいものなの?
それに給食とか、なにあれ? 栄養兵站か何か? 味よりバランス重視とは、まさしく“庶民の美学”ですわね。
とはいえ、私も令嬢。適応力には定評がございますの。
「……朝霧さん、ほんと最近キャラ変わったよなあ」
「文化祭のあれからずっと“貴族モード”だし」
いいえ、それは違いますわ。
私が変わったのではなく、帰ってきたのですのよ。真の自分が。
*
さて、この“現代”という世界。
まずもって理解不能な点が多すぎますわ。
たとえば「SNS」──エスエヌエス?
貴族ならではの社交界システムかと思いきや、これ、誰にでも扉が開かれているんですのね?
「朝霧、Xやってんの?」
「“#令嬢の日常”とかやれば、バズるんじゃね?」
何が“バズる”ですの!? 虫の話!?
でも、それが“注目される”という意味だと知った時、私はひとつ、思いましたの。
──あら、それってつまり……現代の社交界ですわね?
*
「そうですわ。まずは“お笑い界”に踏み込むためにも、このSNSとやらで、存在感を示してみせますわ!」
私は即座に、クラスメイトに使い方を習い、「X(旧Twitter)」なるアプリをダウンロード。
初投稿は、こうでございます。
《貴族ですが、芸人を目指しますわ。#令嬢芸人 #ツッコミ養成中》
結果──
「うわ、なにこれ」「じわる」「なんか知らんけどフォローした」
フォロワー、初日で327人。
──ふふっ、思ったよりも悪くありませんわね。
“この令嬢、バズる気あり”──ですわ。
*
そして、運命のイベントがやってまいります。
「朝霧、なんか“高校生漫才コンテスト”ってやつ、出てみない? クラスから1組出場らしくてさ」
「え? 私が? どうして?」
「いや、だって文化祭のとき、ウケてたじゃん。“ドレスの裾踏んでる時点で貴族失格ですわ!”とか」
「……確かに」
ツッコミと気品と、転生パワーで、私は既に実績を残していたらしいですわ。
──よろしい。この令嬢、引き受けましょう。
しかも漫才の相方は、あの文化祭でボケを担当していたクラスメイトの男子──小林翔くん。
彼は言いました。
「まさか令嬢とコンビ組むとはな……じゃ、コンビ名どうする?」
私は即答しました。
「“ノーブルソウル”──高貴なる魂、という意味ですわ」
「……なんか、強そうだな」
「強いですわよ?」
──こうして、異世界令嬢と現代男子の漫才コンビが誕生したのですわ!
けれど、このときの私はまだ知らなかったのです。
お笑い界が、剣と魔法よりも過酷な戦場であることを──
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