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呪縛

作者: She

自閉スペクトラム症

人間とのコミュニケーションが苦手。物事に強いこだわりがある発達障害である。

相手が何を言っているのかわからなかったり、相手に何かを伝えるのが困難な状態になる。


ADHD・注意欠陥多動性障害

発達に比べて注意力が足りない、衝動的で落ち着きが無いといった特性で日常生活に支障をきたしている状態。

脳の中が常にゴシャゴシャになっている。

今日も朝が来る。

不思議だ。どんなに長い時間眠っても起きるころにはまだ眠い。二度寝は日常である。


ピピピピピッ…ピピピピピッ…


スマホにセットした目覚ましを止め、二度寝する。最近は、二度寝することを見越して二回鳴るようにしている。勿論、三度寝する。


ドンドンドン…


暫く眠っていると、母の階段を登る音がし、その音でやっと体を起こすことが多い。

壁にかけてある時計を見ると、7時55分。


「…」


そこでやっと立ち上がって、朝のルーティンが始まる。

まず最初にトイレで用を足し、制服に着替える。そして胡座をかきながら学校へ行く支度をする。


「…あぁ…」


支度を済ませ、階段を降りてリビングにドサッと荷物を置く。そして、冷蔵庫に入っている乳酸菌飲料を一気飲みする。

マフラーを巻き、手袋をつける。そして、玄関に向かってお気に入りの眼鏡をかける。ヘルメットを被り、自転車の鍵を持つ。


「…」


玄関の扉を開ける。



外は少し肌寒い。暖かめの制服とマフラー、そして手袋のお陰でかなりマシになる。自転車の鍵をつけ、出発する。


「…ふぅ…」


急ぎ目で自転車を漕ぐ。急がないと学校に遅刻するからだ。


「…はぁ…」


軈て、大通りに出る。信号を渡らなければならないが、如何せん横断歩道の配置が不親切で毎日不快になる。


「…」


やがて、細い道を通ることになるが、道が狭すぎる。道が狭いくせに車の交通量はかなり多い。自転車の真横を車が通り過ぎる訳だからヒヤヒヤする。

さらに、赤信号が長いのか、車が渋滞している。道が狭すぎて歩道に車が少し入る為、自転車をスレスレで通りながら進む。毎回ぶつけそうになり心臓に悪い。


「…」


信号を渡った先には橋がある。橋を渡った先には腐った柿の臭いのする道を通る。不快な臭いは嗅ぎたくない為に口呼吸をしながら自転車を漕ぐ。

軈て臭いが無くなってくる頃には学校に着くのだ。


「…」


急いで来たがために少し息切れをしながら学校の玄関に向かう。周りの人を見ると、ちらほら走って玄関に向かう人がいる。それを見ると焦燥感に駆られてストレスが溜まるので、非常に自分勝手だが走らないでほしい。


バッ…バタッ


下駄箱に靴を入れ、教室に直行する。しかし、私の教室は四階にある。足に負担がかかりながらも教室に辿り着くのだ。



ガラガラガラ…バタン


私は一番後ろの席に座る。隣はさほど仲良くない女子と隣で、もう片方は誰もいない席である。

皆は友達と話しているが、私にはそんな余裕が無いので席に座る。


ガラガラガラ


担任が入ってくる。そして、書きたくもない昨日の振り返りや今日の予定を配られた手帳に書かされる。怠い。

朝のHR(ホームルーム)が終わり、一時間目の準備をして席に座る。私は特にすることも無いので足を組みながら前を向いてボーッとしている。


キーンコーンカーンコーン


聞きたくもない授業が始まる。楽しければそれでいいが、退屈な授業は好きでは無い。

私はボーッとしながら先生の話を聞くフリをする。さほど厳しくないので何も言われない。


こんな調子で三時間目まで終わらせ、昼休みに入る。


「…」


母が作ってくれた弁当を開ける。勿論日によって変わるが、最低でも一週間に一回は必ず卵焼きが入っている。

私はそれを自分の席で黙々と食べる。一緒に食べる友達がいない訳では無いが、今はやっているスマホゲームの趣味が合わなく、つまらない為一人で食べるのだ。


「…」


食べ終わり、弁当を仕舞ってスマホを弄る。私は他の人とは違い、スマホゲームやSNSをしている訳では無い。最近は2の階乗をひたすら計算しているだけである。これを書いている時点で、2の246乗まで計算をしている。


キーンコーンカーンコーン


そして、四時間目と五時間目も適当に過ごす。そして、その後の掃除も適当に済ませ、さっさと家に帰るのだ。


「…」


家に帰り、ヘルメットを外して手袋を外す。そして眼鏡を外してリビングに入る。

まず最初にトイレで用を足し、水筒と弁当をキッチンの流しに広げて置く。そして、部屋着に着替えて二階の自分の部屋に戻る。


「…はぁ…」


適当にスマホを弄った後、眠る。


「…」

「ご飯だよ。」


その声で目覚め、階段を降りてダイニングに向かう。

夕食を食べた後、再び二階の自分の部屋に戻って寝る。


「…」


目が覚めると、日付が変わる頃に目が覚め、一階に向かう。皆が寝静まった後にいつも風呂に入るのだ。そして、歯を磨き。自分の部屋に戻ってまた眠るのだ。



毎日がこれの繰り返し。つくづく自分でも自覚をしている。


空っぽだって。


つまらない。退屈。そんな日々に私は毎日嫌気が差した。勿論、面白いことも多々あるし、ちゃんと友達はいるので学校は楽しい。

しかし、何かが違う。それがとある日、わかったのだ。



三者懇談の日、私は母と一緒に担任と話されたこと。


勉強が足りない。


知っていた。私は毎日全く勉強をしていない。つまらないから、退屈だから。

担任と母の双方から勉強というワードが聞こえてくる度にストレスが溜まった。


全てが嫌になった。


三者懇談が終わった直後、私はストレスのあまり物凄く苛ついていた。どこにも飛ばすことのできないこのストレスを抱えながら私は只管母の言葉を無視して一人で帰った。



私は、勉強が嫌いだ。

誰しもが共感するだろう。


私は、今共感した人を呪いたい。


私は勉強が嫌いというより、恨んでいる。

私はこの社会が嫌いだからだ。

勉強したらきっといい大学に行ける。いいところに就職出来る。それはわかっている。

私は、勉強の何がいいのかわからない。

小学生の頃はよかった、何も疑問にも思わずに学校の宿題をやってテストで100点を取った。


新型コロナウイルス。


それが原因なのか私にもわからない。しかし、そこが私の人生が狂った日だというのはわかった。

自粛期間が始まった途端、私は突然勉強が大嫌いになった。

勿論、親や小学校の頃の先生に怒鳴られた。特に当時の担任から物凄い大声で怒鳴られて涙を流した。

それから小学校卒業まで、私は宿題をちゃんと出すようになった。もう二度とあんな事が無いように。


「…自閉スペクトラム症と、注意欠如・多動症障がいがあります。」

その言葉に、私は意外とあまり反応しなかった。しかし、これまでの人生を振り返る中、確かにおかしい部分があった。


なんで、こんなクソみたいになったんだろう。


こんなクソガキみたいな私はお払い箱に捨てたほうが社会の為になる。しかし、社会は私をあるべき道に戻そうとする。


「…はぁ…」


私は何故この腐った脳で、腐った社会に産まれてしまったのか。


「勉強は自分の為になる。」


この言葉を何百回も耳にした。その度に思う。

気持ち悪い。


勉強をすれば救われると思い込んでいる人が多すぎる。私はこの世界にいる何十億人いる人間が気持ち悪く思う。まるで、勉強という神にすがっている宗教のように思う。

「勉強はしたほうがいい。」なんて言葉は、もはや宗教勧誘みたいなものに聞こえて気持ち悪くて仕方が無いのだ。

勉強したら偉いなんて風潮が気持ち悪い。私は今までこんな一般常識に縛られていたと考えたら鳥肌が立つ。


私は、この腐った世界に産まれたタブーなのかもしれない。だが、私から見れば周りの人間が全員タブーに見える。皆、何かおかしい。気持ち悪い。気持ち悪くて堪らない。




この呪縛から解放されたい。

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