始まりはいつも奇跡
夜の街に小雪がチラつきはじめる。
その光景に感動する道行く人たちはそれぞれに感嘆の声を漏らしている。
天気予報通りの初雪に皆喜んでいるのがわかる。
「ホワイトクリスマスだ」
誰かの声が聞こえる。
イルミネーションの光に反射する粉雪は幻想的な光景を作り出している。
22時を回ろうとしているのに人々はどこか浮かれ賑わいが落ち着く様子はない。
まるで、お祭りのようね。
乾いた乾燥が浮かぶ。
そんな街の様子とは真逆に淡々と歩く中年のスーツ姿のサラリーマン達、風景を邪魔しないように、家路を急いでるように見えた。
きっと私もその中の一人なんだ。
ふと横を見る。
ショーケースのガラスに反射している私はひどく疲れているのように見えた。
背景のイルミネーションが虚しさを増長させる。
そんな自分を見て佇む。
眩い光を見て思い出してしまう。
光に憧れていた、そんな時期を…
「なんだコレ」
自分の姿に思わずつぶやく。
嬉しそうなカップルが私をちらっと見る。
「私、何やってんだ」
暫く、そうしていたんだと思う。
きっと疲れていたんだ。
落ち着いた頃に、やっと気づいた、華やかな夜の街に流れるアップテンポの音楽、駅のちかくには大きなディスプレイ、そこには可愛い女の子たちが綺羅びやかな衣装を身に纏い、歌い踊っていた。
いつか、憧れていた自分がそこにはいる。
もう一度、許されるのなら、
強い思いが湧き上がってくる。
動き出した思いは止まらなかった。
昔好きだった歌、それを口ずさみながら歩く、自分に暗示をかけるように、具体的なものなど何もないけど、思いだけが動き出す。
きっかけはそんなことだった。