表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/92

レベル上げをしよう(6の1)

 

 他のモンスターを引っ掛け(・・・・)ないよう気を付けながら、池の縁で佇んでいる一体のカニへと近づいていく。



 ……すると、その頭上に『アワアワクラブ』――とその名前が浮かんで、レベルは15であることが分かった。


 このルディア丘陵の敵は概ね――高くてもレベル10程度なので、周囲の敵よりも頭一つ(・・・)ほどは、カニのレベルだけが高い感じだね。



 カニ同士がアシストをしないように、他のカニの動きやその視線(・・)をチェックしながらタイミングを測って……それから、〈スローイング〉という遠隔攻撃スキルを使ってカニを攻撃。――無事、一体のカニを岩場まで引っ張って来ることに成功。


 それからニアと二人でカニを前後から挟んで戦闘を開始する。


 カニことアワアワクラブは、見た目通りの結構な硬さ。攻撃をしても、がきん、がきん――と斧が弾かれてしまって、物理防御力が高そうだ。――その上、レベル10の私より+5(レベル11のニアより+4)もレベルが上な事もあって……かなりの難敵と言った感じ。


 ハサミを使ったその攻撃も、一撃一撃が重くて……スキル攻撃の直撃を食らってしまうと、ちょっと危ないかも。



 ……そんなカニを相手に、ニアと二人で戦技(スキル)を使用して攻撃を重ね、じわじわとそのHPを削っていく。



 そういえば――ニアは、ルーシィさんとの別れ際に要らなくなったお古の短剣を貰って、今では短剣の両手持ち(・・・・)をしている。


 それは〈ファレベク坑夫(こうふ)の短剣〉と言う名前の武器で、ルーシィさんに曰く――トレイア西北西の門から出た荒地エリアには〈ファレベク廃坑〉というダンジョンがあって、そこの雑魚敵であるアンデッドが時々にこの武器を落とすらしい。


 攻撃力が6、攻撃速度は『早い』、推奨レベルは10――という性能の武器で、ニアに言わせると性能的には『まあまあ』とのこと。


 ルーシィさんと別れた後で「やったね!」と私が言ったら、ニアはぼそりと『あの人からあんまりアイテムを貰いたくないっすー』と言って笑っていた。「ルーシィさんはなんだかんだで、良い人そうだったけど?」……と私が言ったら、『カナカナは奴の本性を知らないんすよ』――だって。


 ……そうなのかな?


 ――そんなわけで、今のニアの装備武器は、右手にその〈ファレベク坑夫の短剣〉。左手には初期装備である〈古びた短剣〉を装備している。


 ちなみに、〈古びた短剣〉のステータスは――攻撃力が3、攻撃速度は『とても早い』の推奨レベルは1、らしい。


 私の武器、〈古びた大斧〉は攻撃力が12の攻撃速度は『とても遅い』で、私の武器のほうがぱっと見では(・・・・・・)圧倒的にダメージは高いのだけど――そのかわり、ニアの短剣はものすごく(・・・・・)攻撃速度が早いので、それを右手と左手に2本持った今となってはニアのほうが攻撃ダメージは高い感じ。


 とはいえ私も、新しく手に入れた装備――〈亡きエレオノーレのミスリルバレッタ〉の強力な筋力(STR)ボーナスのお陰で、武器は同じながらに一撃一撃のダメージは増強されているので……ニアよりも大きくダメージが劣っている、と言った印象はないかな。


 †


 それから……数分に渡る戦闘の後、やっとのことで一匹めのアワアワクラブを討伐。


 そのHPが0になると同時。ぽん、とその体が光になって弾けて――……経験値(EXP)といくつかのアイテムを入手することに成功した。



「ふうーっ……」

 一息をついて、額の汗を拭う。


「お疲れーっす♪ ――……お。今ドロップした、〈アワアワクラブの甲殻〉だのハサミ(・・・)だのと言うアイテムが概ね全部、銀貨5枚以上で売れるらしいっす」


「ええっ……それは、かなりすごいね?」


 どれくらいの頻度で落とすのかはまだ良くわからないけれど――通知のログ(・・・・・)に曰く、私が甲殻(・・)を、ニアがハサミ(・・・)を、一個ずつゲットしているみたい。


 すべてのカニがそれぞれ銀貨10枚相当のアイテムを落とすのだとしたら(・・・・・)――……私達が普段狩っている敵の5倍から10倍に相当する程の稼ぎが、たった一体のカニから得られることになる。



「はい♪ ……ただし、一度倒し切ってしまうと湧き直し(リスポン)まではしばらく掛かるんすけど。カニの数は少ないっすからねー」


経験値(EXP)の伸びもすごかったよ」


 カニを倒した途端に、明らかに……ぐぐっ!と、経験値(EXP)バーが大きく伸びるのが見えた。――体感だと、周囲の雑魚モンスターと比べて6倍~8倍は経験値(EXP)が美味しいような……と言っても、たった一体を倒す苦労も段違いではあるのだけど。


「っすねー。……正直、これは想像以上に美味しい狩り場かも、ですね♪」

 ニアも驚いているみたい。



 基本的にイルファリア・リバースの敵は、難度に応じてドロップ品が美味しくなる傾向があるけれど……このカニは、難度の割にはそのドロップ品も、経験値(EXP)の入りも、周囲の雑魚的に比べて相当に美味しいように感じられる。


 それというのも――ニアに曰くこの〈アワアワクラブ〉は、本来は〈エトネア湖畔〉や〈タフラ沃野(よくや)〉というもっと高レベルのエリアに生息している敵らしい。

 ……のだけど、何故かこのルディア丘陵の〈ヘルベスの秘密の泉〉にだけは、例外でたった数体が生息しているんだって。


 〈エトネア湖〉はこのルディア丘陵よりもさらに北東へ行った場所にあるエリアで、当然、出現する敵のレベルも高く辿り着くのも一苦労。

 ……馬やミルカを借りないと、移動だけでも相当な時間を浪費してしまう。そんな場所に出てくる敵が、数体とは言え、街から比較的な近場で安全に倒せるこの場所は……本当に、かなりの穴場スポットかも?



 ……それと、ちなみに……


 現在、トレイアの周辺には発見されている限りでも20箇所程のダンジョンがある、らしいのだけど……安全に敵の狩りやすい屋外エリアとは違って危険の多いダンジョン内では、より性能の良いドロップ品や高い経験値(EXP)を得ることが出来る。


 それなのに、なぜ私達がダンジョンへ向かわないのか? と言うと……第一に、単純に難易度が高く私達二人では全滅の危険性が高いから。そして第二に、そのリターン(・・・・)の高さ故に、ダンジョンはどこもかなり(・・・)混み合っているから、である。


 ……しかも、今日はリアルでの(・・・・・)日曜だしね。


 そんなわけで、ダンジョン内の中ボス(・・・)大ボス(・・・)などは実力のあるパーティや攻略ギルド間の取り合いになっていて、場合によってはその場でプレイヤー間やギルド間の争いが発生するほどの激戦区と化しているらしい。


 ルーシィさんのギルド《アラネア》が真夜中にダンジョン攻略を開始するのは、そういった混雑を避ける理由もあるみたい。


 ――そんな理由もあって、新発見のダンジョンの情報は(こういった美味しい狩り場(・・・・・・・)の情報もそうだけれど)プレイヤー間・プレイヤーギルド内で秘匿されやすく、表には出てこない傾向がある。


『20箇所程のダンジョンがあるらしい』――なんて言う噂が流れているだけで、(有名な数カ所のダンジョンを除いては)ほとんどの人がその場所も名前も知らないのが実情だ。


説明分が長いですね!

二回に分けます……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ