表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/92

レベル上げをしよう(1)

 

 *注 作中のゲーム『イルファリア・クロニクルⅡ:リバース・オブ・ザ・ヒーローズ』は、このお話より『イルファリア・リバース』へと変名いたしました。


 その前作であるイルファリア・クロニクルはそのままとなります。ご迷惑をおかけしますが、ご了承ください。

 変名箇所、誤字やその他読み辛い部分など、追って全て修正したいと思っています。気長にお待ちいただければ嬉しいです。


 

 ニアと髪飾りを購入した、その翌日の土曜日。


 お散歩をしたり、友達と通話をしながら学校の宿題を終わらせたりして……夜になってから『イルファリア・リバース』へとログインをした。


 フレンドリストを開いてみると……お母さんと買い物に行く――と言っていたニアは、まだログインしていないみたい。



 とりあえず、噴水の傍へと腰掛けて……それから髪に付けられたままの謎の髪飾り(・・・・・)を外して、改めて眺めてみる。


 昨日は……少し薄暗くて分かりづらかったけれど……こうして太陽の光の下に照らしてみると――やっぱり、この髪飾りは十中八九ミスリルであるのは間違いない、と思う。この質感、色味、輝きは……前作『イルファリア・クロニクル』をプレイしたことのあるプレイヤーであれば見覚えがあるし……見間違えようがないものだ。



 それを眺めていて……なんだか、うきうきとした楽しい気持ちに包まれてきて――思わず笑みが漏れてしまう。


 未だに不明なステータスはともかくとしても……見た目はとても可愛いし。それに――……ニアから貰った世界でたった一つのプレゼントみたいで、本当は……すごく嬉しいのだ。



 ……ちなみに。

 その髪飾り以外には、私の装備、外見はゲーム開始時から変わっていなくて――


 シャツを、チェック柄のスカートへとインしている……現実(リアル)の私が通学している時にほど近い格好。首元にはネクタイ――その上に、墨色のフード付きのクローク(・・・・・・・・・・)を羽織って、背中には刃の欠けた、大きな両刃の斧(・・・・)を背負っている。

 顎の下ほどの長さの灰色がかったブラウン(・・・・・・・・・・)の髪に、足元は紺のソックスにローファー……と、そんな感じ。


 ――もう一つついでに言うと、お財布の中はすっからかんである。


 †


 髪飾りを髪へと付け直すと――それから、地図を開いて……さて、と首を傾げる。


 ……とりあえずは、鑑定士さんを訪ねてみたい、のだけど。


 …………それって、何処だろう?


 前作だと、NPCを探す機能があったのに。今作のイルファリア・リバースには、それがついてない、みたいなんだよね。



 そんなわけで、地図を広げてうーん、と唸っていると。


 ポンと通知音が響いて……


 顔をあげると、そこには見知ったプレイヤーさんからのメッセージが届いていた。



<ユリ> カナちゃん。何してるのー?


 ――その下には、こんばんは、と挨拶をしている……可愛い女の子のキャラクターのスタンプ。

 そのメッセージ欄をタップして返事を打ち込む。


<カナト> 今は、特には何もしていないですよ。ユリさん、こんばんは

<カナト> 鑑定がしたくて、鑑定士さんを探しているところです

<ユリ> やほー♪ 良かったら、私も行っても良い?

<カナト> はい、もちろんです! でも、特に楽しいところもないと思いますけど……

<ユリ> カナちゃんと一緒なら、なんでも楽しいよー


 ……とのメッセージの後に続けて、『ゆるーん……。』と書かれた、木の実のようなキャラクターが寝そべっているスタンプ。


<カナト> ……えへへ、嬉しいです。それじゃあ一緒にお散歩しますか?


 ありがとう、と書かれたスタンプを一覧から選んで、送信してみる。


<ユリ> オッケー。それじゃあ、今から中央広場に帰還するね?

<カナト> はーい。私も、中央広場の噴水に座っています



 と――そんなやり取りをして。

 ……それから数分もしないうちに、ユリさんがぱたぱたと駆けてきた。


「やっほー♪ カナちゃん」


「ユリさん。こんばんは」小さく手を振り返す。


 ユリさんは……私にガサルさんのお店を教えてくれた張本人で、〈ノルン〉――つまり、私と同じ種族のプレイヤーさん。以前野良のパーティで一緒になって、すぐに仲良くなって……それからは時々、こうして一緒に遊んでいる。


 その外見は……茶色のセミロングの髪に、ほわーん、とした優しそうな顔立ちをしていて……性格も見た目通りの、ほんわかとしたお姉さん、といった感じ。


 オート生成(・・・・・)をしたキャラクターみたいで、服装は……可愛らしいキャラクターがちょこんとプリントされたフーディに、短めのハーフパンツ、スニーカーと言う、普段の私服らしい出で立ち。その上にファンタジー風のローブを羽織っていて、背中には槍を背負っている。


 ちなみに、ユリさんのクラスは〈シアー〉。回復魔法や強化魔法などを使うことが出来て……後々は〈シャーマン〉や〈ドルイド〉などに派生するクラスだ。


 最初は、三年生の優しい先輩……くらいのつもりで接していたのだけど。お仕事の話やお酒の話を時々しているので、もしかしたら、私よりも結構な(・・・)年上なのかも。



 それから私は、ユリさんにかくかくしかじかっ…………と、昨日起きたことの説明をすると――私の髪につけられたその髪飾りをじいっと眺めて、ユリさんが言う。


「可愛いねぇ……! カナちゃんにぴったりだよー」

「……えへへ。ありがとうございます」


「……ふむ、そっかぁ。それで鑑定、なんだね」


「どこに向かえばいいか、わからなくて……。私、すぐ迷っちゃうし」

「よーしよしっ。それなら、お姉さんに任せなさーい♪」


 なんだか妙にテンションが高いユリさん。その後ろへ付いていくようにして、私達はトレイアの鑑定士巡りを始めた。


 †


 一番最初にユリさんに連れて行ってもらった中央広場から最寄りの鑑定士さんは……やっぱりスキルが足らないらしく、『全くわからん……』と鑑定を諦められてしまい。


 私達はそれからトレイアを散歩しながら、あちらこちらのNPCというNPCに話を聞いて、髪飾りを鑑定をしてくれそうな腕利きの鑑定士さんを探して回った。


 ユリさんも私と同じ〈ノルン〉なので、NPCから話を聞き出すのに少し悪戦苦闘をしつつも……しばらくの聞き込みの後、トレイアでも目利き(・・・)であると名の高い鑑定士さんの名前を聞き出すことに成功。……それからそのお店へとお邪魔をして、髪飾りを鑑定してもらったのだけど……。


 ――鑑定士さんは、なんだか悔しげな表情を浮かべつつも何度か鑑定を試みて(・・・)くれたものの。


 最終的には『ワシには見抜けぬ……!』と涙目で言われてしまい……結局、髪飾りを鑑定することは出来なかった。



 鑑定を諦めた私達は……私とユリさんと、それから後から合流したユリさんの友達と三人で、ちょうど三人の空きメンバーを募集していた野良のパーティへと合流して、経験値を稼いだ。


 1~2時間程のまったり(・・・・)プレイの後、レベルが10へと上がって……念願の新スキルも獲得。ニアのレベルにも追いつく事ができた。



 獲得したスキルは、〈チャージストライク〉と言う名前で、


 これは、しばらくの間力を溜め(・・・・)次に繰り出す攻撃を一回だけ大きく強化する、と言うスキルなのだけど……、力を溜めている間は攻撃ができないので、ただ戦闘中にそのまま使っても逆にDPS(一秒間に叩き出せる平均ダメージ量のこと)は落ちてしまう。



 それから、夜も遅くなってきてしまって……もうちょっとレベルを上げていくというユリさんとそのお友達、他のパーティメンバーへとおやすみを言って、パーティを離脱。帰還アイテム〈クリスタル・オブ・リコール〉を使用しトレイアへと戻ってきた。


 それから、中央広場にてログアウトをしようとしていた時に。――ふと、手持ちの水と食料が底をつきかけていることに気付いて……。


 その時点で、寝落ちて(・・・・)しまいそうには眠くて……どうしようか、と迷ったのだけど。明日はニアと狩りに行く約束をしているからと思い直して、消耗品を補充してから寝ることにした。


 †


 それから、最寄りのお店で一通りの買い物を終え、お店から出てきたその時――。


『きゃーっ……!!』という……、なんだか押し殺したような悲鳴が響いて、咄嗟にそちらを振り返ると。



 ……そこには、女の子二人がピッタリとくっつきながら……なにやら、ぼそぼそ、と内緒話をしていた。



「……あの二人、付き合ってるのかなぁ?」

 白のブラウスに、黒髪を頭の後ろで括った――ポニーテールにリボンの女の子が言う。


「えー……でも、結構な年の差(・・・)だよね」

 おへそが見えるくらいに短めのトップスに、ライトブラウンのセミロングヘアをふわりとウェーブにした女の子が返事を返すと……それから、一拍置いて――なんだか、示し合わせたみたいな同じタイミングで……二人が揃って、その後ろを振り返る。



 二人の視線の先には……背を向けて遠ざかっていく、なにやら、カップルのような二人組。


 ……なんだ。泥棒か何かかと思って、身構えちゃったよ。



 ――ちなみに私は……こういった、女の子らしい話題とは縁遠いところがあって……。


 良し悪しがよくわからない、と言うか――……普段、学校で仲良くしてくれている友達も、捌けた――ドライな雰囲気の子なので、全くそういった話題が上がらなかったりする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ