街の外へ(4)
「その前に、ラグさん。スキルも取っておきましょう」
おおー。もう、スキルを取れるんだね。
「キャラクターから、スキルツリーで、スキルポイントが割り振れるので」
「ふむ」
操作画面のメニューから〈スキルツリー〉をタップすると、
その内部に、ぱあっと、きらきらと輝く星々が無数に広がる。
星々は星座のように線で繋がっていて、木の枝というよりは夜空の星図に似ているかも?
星図の中の“小さな星”からは各種ステータスが、“大きな星”からは戦技やアビリティが取得できるみたい。
今は星図の中央の一点のみが明るく輝いていて、それ以外の星々は全て薄暗く――未取得になっている状態。
ここからポイントを振って、光の点と線を拡げていくようなイメージかな。
「……あ、そうそう」
「スキルを選択する際に“お手本の映像”が流れるので、その型をよく覚えておいてくださいね」
「基本的にその動きを模さないとスキルが発動しないっす。多少のズレやアレンジは問題なく通りますが……」
「なるほど、了解した」
「ちなみに僕のキャラは、デバフやスリップダメージ主体のスキル構成にする予定っす。ご参考までに♪」
「ほう。ローグといえばアサシン、背後からの一撃かと思っていたが」
「前作ではまんま“それ”だったんで、今回は少し捻ろうかなぁ、と」
「ふむ……」
……あれ?
アサシンの、アドリック。
……やっぱり、なんだか聞き覚えがあるような……?
ともかく。
現時点で私はスキルポイントを5、所持しているみたい。
このポイントを自由に割り振って、好きにステータスとスキルを取得する事が出来るね。
……ということで、まずは最寄りのめぼしい戦技を確認してみる。
〈ヘヴィストライク〉
すべての武器種で発動できる、威力120%の強攻撃。
〈クリーヴ〉
斧のみで使用可能な、威力150%の強攻撃。
ダメージはずば抜けているけれど、コストが重めで、クールタイム(スキル使用後の待機時間)も長いみたい。
〈アーマーブレイク〉
すべての武器種で発動できる。対象の防御力を一時的にダウンさせる、威力80%の攻撃。
〈スマッシュ〉
メイス・ハンマーなどの打撃武器のみで使用可能な、威力60%の攻撃。対象の攻撃速度を一時的にダウンさせる。
〈シールドバッシュ〉
盾を叩きつける一撃。対象をスタンさせる。
……と、今取得できそうなのはこれくらい。
ひとまずは、この中のどれか一つから選ぶ感じだね。
スキルツリーをどの方向に伸ばすかでキャラクターの方向性もだいぶ変わるみたい。
〈シールドバッシュ〉や〈スマッシュ〉の方面は、ステータスもHPやVIT上昇が多め。
私が目指している〈バーサーカー〉は飽くまで物理ダメージを叩き出すのが主な役割なので、
単純な攻撃スキルとSTR優先でいいかな。
……ということで、戦技〈クリーヴ〉と、その手前の四つの星からSTRを+4獲得。
早速、狼で試してみよう。
†
「……しかし、具体的にどうすれば戦技を発動させられるんだ? 前作にあったようなスキルのボタン類が見当たらないが」
「……ふむ。ちょうどいいので、軽く戦闘のおさらいでもしましょうか」
「頼めるか」
「オッケーっす♪ ……ではまず、各種スキルを使用する大前提として……」
「僕ら物理攻撃を主体とするクラスは、基本的にSPを消費します。これは、自分のHPが表示されている辺りの“黄色いバー”っすね。」
「視界の端に張り付いて表示されている奴だな」
「そっす。赤いバーはHP、青いバーはMP、黄色いバーはSP。それぞれ、体力、マナ、スタミナ、なんて言い方をする人も居ますね」
「で、スタミナは、単に武器を振ったり、走ったり、跳ねたりでも消費します。使いすぎると〈疲労〉状態となって、スタミナバーが点滅――移動・攻撃・防御にきついペナルティがかかるので、使いすぎないよう管理が重要になるっす」
「了解した」
うん。ここまでは前作と同じかな。
「ちなみに。もし、スタミナが完全に0を割ると――これは“スタミナダメージ”などの特殊な攻撃を受けた場合の話ですが――」
「〈ブレイク〉状態となって、ほとんど行動不能に近い状態に陥るっす。この状態で重いスキル攻撃を受けたりすると……タンクでもない限りはほぼほぼ即死っすね」
「ほう……」
――“タンク”は、ナイトや戦士のような――敵の攻撃を一手に引き受ける、パーティーの盾役となるような防御主体のクラスのことを指す。
逆に、私とアドリックさん――ブリガンドとローグは、“DPS”と呼ばれる攻撃主体の脆いクラス。万が一どちらかが〈ブレイク〉へと陥ってしまえば、そのまま全滅、かも。
「ま、このあたりにはそこまで強烈な攻撃をしてくる敵は居ない筈ですが」
「一応、気を付けるに越したことはないっすね♪」
「さて、次に」
アドリックさんが短剣を引き抜くと、胸の前に差し出し構える。
「……戦技を発動する方法っす。まず、武器を構えている状態で、武器に意識を集中します」
「簡単に言うと、武器に力を流し込むような感じっす」
掲げた短剣をじい、と睨み、意識を集中させるアドリックさん。
すると……。その短剣が光を集めるようにし、輝き出した。
「おお」
「……と、このように武器が光るっす。この状態で、さっきの映像の型をイメージして敵を攻撃すれば、戦技が発動。」
「ただし、武器に含ませたSPが少なければ不発になってしまうっす。逆に多いと、発動はするものの“あぶれた”分は無駄になるので、加減が重要っす」
「なるほどだな」
「逆に、敵の武器が光りだしたらスキル攻撃を放ってくる予兆なんで、距離を取るのがベターっすね」
ふむ。毛玉のときと同じだね。
「……また、せっかく武器にSPを注いでも、長いこと放置していると……」
アドリックさんの短剣が放っていた光が次第に弱くなり、やがてふつりと途切れる。
「……と、このように。注いだSPが霧散してしまって、単にSPの無駄となってしまうので、ご注意を」
「……よし。了解した」




