14恋 2名の勝負が始まります
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14恋
2名の勝負が始まります
2学期最初の日。生徒たちは体育館に集まり、校長や生活指導主任の長い話に、耳ではなく首と腰を傾ける。生徒によっては適当な理由をつけて体育館を後にする始末だ。
結局、1時間目を丸々使い、生徒が順番に教室へ戻り始めたのは9時40分。そのタイミングで恋神が、体育館の壁際で佇むデスランの元へ向かう。
「おい。お前はどこのクラスなんだ?」
「ボクは2-Dだから、恋にいとは隣のクラスですらないよ〜。残念」
すかさずガッツポーズをする恋神。
「なんでそうなるのさ!」
「だってお前とはなるべく関わりたくないもん。つーかもう帰ってくんね?」
「いや今日が初日だから! それに、勝負でボクが負けたら、いさぎよく身を引くつもりだよ」
案外潮らしい態度で返され、若干恋神も言い過ぎたかなとテンションを落とし、話を切り替える。
「てか、なんで高峰を排除できたんだ? 神のお前じゃ人間に強引なマネ早々できないはずだが……」
最高神が黙っているはずがない。ましてや現在、人間の恋愛の神としての勉強している恋神に大きく関わる要素の改変だ。間違いなく咎められるだろう。しかし、デスランの態度からはそういった事が起こったようには見えない。
「まぁ代償を支払ったからねぇ〜」
「何を支払ったんだよ」
恋神は代償の“大きさ”よりも、“何を”代償にすれば最高神の許しを得たのかが気になっている。だからこそ、次にデスランが言い放った代償に驚愕した。
「『人間の死を司る神』になる権利を放棄したんだよ」
「……………………………………………は?」
意味がわからない。なんの理解もできない。役職を与えられた神には、神の中でも群を抜いて優秀な者しかなれない。なるまでに物凄い量の努力と何よりも才能を必要とし、それを有していたとしても自分に向いている役職が空席でなければ選ばれない。運も絡んでくる。それをあっさり放棄したのだ。目の前の神は。たかだか自分と勝負するためだけに………。
「お前、ほんっっっっとに馬鹿かぁ⁉︎ 何がどうなったら役職と俺との勝負が釣り合うんだよ!」
耳元で怒鳴られたため、デスランが耳の穴に指を突っ込んで痛そうにしながら恋神の後ろの方を指差す。
「あんまり大声出すと、目立っちゃうよ? 特にここは体育館だし」
デスランの指摘に、急遽口を押さえてその場のテンションで大声を出してしまったことを反省するが、そうも言ってられないのが事実。続けて口を開こうとしたが、その前にデスランが言葉を挟む。
「いやそりゃ、ボクだって常識がないわけじゃない。勝負どうこうはそれこそ役職を与えられた後でもできただろうことはわかる。けど、ボクは恋にいを1番尊敬してるんだ! だから勝つまでは……恋にいと同格にはならない」
役職を与えられると言うことは、人間の恋愛を司る神である恋神とある意味同格になるということ。それを恋神に勝つまではなれないと、そうデスランは主張する。
「そんなこだわるほどのことなのか? それに……」
それにで言葉を止める。大半の者からすれば、恋神が止めた言葉の先を予想できないだろう。しかし、デスランは察していた。
「わかってるよ。恋にいの性格なら、気づかないくらいの範囲で手を抜いてボクに勝たせてくれるだろうってことくらいは。そうすればボクは役職を与えられる様にまた立ち回るだろう。けどね、ボクだって馬鹿じゃないんだ!」
今度はデスランがだいぶ大きな声を出すと、先ほどとは立場が変わって恋神が自分の後ろの方に指を指す。
「声、響いてるぞ?」
「あっ………」
口を押さえるところまでが一連のお約束。気と声量を取り直して話を続ける。
「最高神様に話してあるんだ。高峰を制圧する。その代償はボクの役職見送り。そして、もうひとつ。恋にいにちゃんとした勝負で勝つまで、今後永遠に役職にはつけない」
デスランの目が、おおよそこのタイミングではあり得ないほど据わった。本気なのだろう。最高神に“ちゃんとした勝負”と言った以上、これで恋神も下手な内容の勝負も手抜きもできなくなった。
「お前わかってるのか? これでどうしようもなくなったんだぞ。俺に勝つまでお前は……」
「面白いね。まるで自分が負ける事を疑わないような言い方と気の遣い方だよそれは。言っておくけど、ボクも人間界に来るにあたって人間に近しい肉体。つまり出来得ることは恋にいと同じになってる。負けても言い訳なんてできないことは知っておいてね?」
完全に戦闘態勢。レミニアラとの戦闘と同じ。下手すればそれ以上の気配を放って恋神の目を見ている。
それに対して、恋神は応えてやるべきだと素直に思った。ここまでして、無碍にしてやることはまず失礼だし、勝負の場を設けてやらなければデスランは2度と勝利できずに役職ももらえなくなってしまう。何より……。
「…………わかったよ。そこまで言うなら、たまには本気で叩き潰してやるよ。かかってこい」
一瞬にも満たない僅かな時間の中で、恋神が発した気配は、気の類いに無自覚な平和ボケの人間。つまり、この場に居る生徒や教員にも伝わったらしい。皆一様に謎の悪寒に襲われて自分の肩を抱いた。
「但し条件がある。俺はあくまでもここの生徒。そしてお前もだ。だからそこから逸脱した内容の勝負はしないこと。それと、俺の仕事になるべく支障が出ないようにしてくれ。それくらいは、持ちかけるお前ならやれて当然の配慮だよな?」
「もちろん! もう勝負の内容は決めているんだ!」
「ほう。で、内容は?」
少しのためも作ることなく、デスランは答えた。
「次の定期試験。つまり2学期の中間テスト」
「その点数を俺と勝負するのか?」
「ハハハッ。な訳ないじゃん。ボクらが人間界の勉強で勝負したってどっちも満点で勝負にならないよ。だから勝負の内容は、お互いにレベルが近い生徒を指導して、どこまで点を伸ばせたかで勝負しよう。因みに合計点ね」
元々9教科500点の生徒が2人居たとして、それを2名がそれぞれ指導し、どちらが合計点を前のテストから伸ばせるかのシンプルな勝負。
「それと、一応ボクたちの合計点も勝負の対象に入れよう。人間界の勉強内容には、ボクたちがアカデミーの頃に習ってない内容も含まれているみたいだしね」
「わかった。それで行こう。じゃあ、俺が指導する生徒はもう決めたから、お前が俺の指導する生徒のレベルに合わせて生徒を選んでくれ」
「随分早いね。いいよ! じゃあ教えてもらおうか……恋にいが選んだ生徒の名前と学力」
恋神はちょうど、自分のクラスが体育館を後にしようとしている所に目をやりながら答えた。
「俺が指導するのは……俺と同じクラスの中島だ。学力は……超がつくほど低い。とだけは言っておく」
「もう本人からの了承は貰えるって確信してるの?」
「前にアイツと賭けをしたからな。それの報酬を使って、俺の生徒に今回はなってもらう」
中島とは夏休みにボウリングで勝負をし、見事勝利を収めている。勝利報酬は、『大したものじゃないが、貸し1つ』を中島が恋神につくったことにすると言うもの。その貸しを、この勝負で使おうと言うわけだ。
「よくわからないけど、そう言うなら深くは考えないことにするよ」
恋神が選ぶ生徒は決まった。次はデスランが指導する生徒の選定だ。
「これどうぞ」
「うっわ! レミニアラ先輩‼︎」
当然現れたレミニアラが、何やら10枚程度の紙を2人に手渡しした。
「ご安心を。生徒や教員には見えないようにしてありますから。それより、そろそろここから離れないと叱責を受けますよ?」
「そうだな。じゃあデスラン。放課後この体育館の裏で話そう」
「りょーかいっ」
レミニアラが2名に渡した紙には、どうやら2名が在籍する第2学年のテストの結果が記されているらしい。
「随分と用意がいいな」
周りの生徒に怪しまれないよう、小声でレミニアラに感想を述べると、レミニアラは姿も音も周りには認知されないため普通の声量で返答した。
「後輩君の進退が掛かってますし、恋神様が負けて苦そうな顔をするのも楽しみなので少し手を貸しました。これくらいなら最高神様にもお叱りは受けないでしょう」
「………回り道にも程があるんだよなぁ。早く恋愛を成就させないといけねーのに」
「そうとも言い切れませんよ? 生徒たちの恋愛なんて、席が近くなったとか部活動が一緒とか偶然の産物が多いのですから。後輩君が持ち出したこの勝負内容ならば、学生生活の範囲を逸脱していませんし、問題ないと私は思います」
「ハーーァ。手厳しいねぇ。とりあえず、どっちも手は抜かずやるよ……」
恋神の苦労は絶えない。
果たしてデスランに勝利し、恋愛の成就にも結び付けられるだろうか……?
読んでいただき、ありがとうございました!
自分で設けた期限から2日ほど過ぎてしまいました。素直に悔しいです。本当は木曜22:00投稿にしたいのですが、なかなか自分に甘く実行できない。次回はちゃんとそれを実行したいです!
話は変わりますが、来週から新年度新学期ですね。私は学生生活を終え、いよいよ社会人です。めちゃくちゃ緊張しています。でも、投稿は頑張りますので、応援よろしくお願いします!
それではまた次回……




