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13恋 恋愛の神様の弟分は突きつけます

少しでも読んでいただけると幸いです!

            13恋


      恋愛の神様の弟分は突きつけます


 一同は話の流れのまま、明日から内装工事が始まる建物の屋上に到着した。

 

 「と、言うことで、恋神こいがみ様。ぬいぐるみを持っていて下さい」

 「それはいいけど、お前大丈夫なのか? デスランはアカデミーを最近卒業したばかりとは言え、成績は折り紙つきだ。特に体術はな」

 「なるほど。それで、恋神様は私が負けるとお思いですか?」


 その問いかけに、恋神は口角を上げてから静かに答える。


 「いいや、全然」


 恋神の返答にレミニアラは少しだけ顔を綻ばせ、すぐにデスランの方に向き直る。


 「秘書としての、れんにいとの最後の会話は終わったのかな〜?」

 「お待たせしました。早速その鼻っ柱を折らせてもらいますよ? 後輩君」


 レミニアラはデスランと同じアカデミーを卒業している。それが故、2名は先輩後輩の関係にあると言える。


 「それはボクの台詞だよ先輩。この決闘を受ける条件に、アンタが入れた内容に『顔を触れるまでの手段は自由』ってのがある。これはアンタお得意のスキルを連打するためのものだろ?」


 そう、恋神が体術オンリーでは不安がりながらも、手段が自由となった瞬間レミニアラの勝ちを確信した理由は、スキルの使用が可能となったからだ。

 レミニアラは本来、10個使用できれば優秀と言われるスキルを、なんと100個以上も有している化け物。人間界では目立つスキルは使用できないにしても、手数はデスランを圧倒的に上回る。ただ、それをデスランが見越しているあたり、その有利すらも覆せる何かを持っているのかもしれない……。

 一気に緊張感が高まったところで、両者が構えた。


 「恋にい。始めの合図をお願い」

 「わかった。…………………始め!」


 両者がより平等に戦いを始められるように、一呼吸置いてから恋神が合図を出した。その直後、両者は動くのではなく、まず最初にある行動をとった。

 それは、スキルの発動である。

 意外だったのはデスランのスキル発動。恋神はてっきり、デスランは最初からガンガン肉薄してレミニアラに打ち込みに行くものとばかり考えていたから動揺している。

 スキルの掛け合い。お互いに初手として最善と考えたスキルの使用。ただ、戦いにおいて両者共に最善の行動が取れるわけがない。必ず全ての行動に優劣がつき、より優れた行動を取り続けた者が勝利する。それが勝負だ。

 故に2人のスキルの掛け合いにも当然優劣がつく。そして、最初の一手において優勢に立ったのは……デスランだった。


 「ん、これは」


 レミニアラがすぐに自身の変化に気づく。


 「気づいたか。今ボクが使ったのは、『スキル避けのスキル』 対象者と自分がスキルを発動できなくなるスキルさ。つまり……当初ボクが望んでた通りの戦いができるってわけだ‼︎」


 『スキル避けのスキル』は、発動した後のスキルを消すことはできない。あくまでもこれからスキルを発動しようとしている者とこれからの自分にのみ有効なスキル。特別強いスキルとは言えない。効果も限定的な上に、自分もスキルをしばらく使用できなくなるからだ。しかし、今回のレミニアラとは相性がいい。スキルなしじゃ自分に勝てない相手を倒すにはもってこいのスキルと言える。

 何より賞賛すべきはデスランがスキルの早撃ちでレミニアラに勝ったこと。レミニアラがスキルを発動するよりも早く、スキルを発動し封殺した。おそらく体術に絶対の自信をもつデスランが、スキル中心に戦う者にも絶対に勝つために、このスキルの早撃ちを訓練していたのだろう。


 「言っておくけど、ボクは顔に触れる気なんてさらさらない!」


 いきなりレミニアラの顔目掛けて蹴りを放つ。


 「顔を殴るか蹴る気だからァー」

 

 それを前後の緩急で見事に避けると、デスランの攻撃と攻撃の間にレミニアラが攻撃を狙うが、あまりにもデスランの繋ぎが早すぎて中断せざるを得なくなってしまう。結果、次から次へとデスランの攻撃を捌く以外に無くなってしまう……。


 「どーしたのぉ? 守ってばかりじゃいずれ死ぬよぉ‼︎」


 もはや殺すくらいの勢いになっているデスランを見ながらも、レミニアラは冷静に攻撃の対処を続ける。力では決して勝てない。また、そこからなる早さも到底勝てない。だからこそ、常に後ろに下がり続けながら戦いを進めることで、懐に飛んでくる攻撃を僅かでも緩めて捌き続けているのだ。


 「あー出た出たちょこまか作戦。ホント鬱陶しいよっ!」


 拳と蹴りのオンパレードだった連続攻撃を急遽やめ、レミニアラの手首を掴みにかかる。が、それを華麗に避けて、ガラ空きとなったデスランの脇腹に拳を1発叩き込む。その後、すぐにふたたび後方へ移動しようとレミニアラが動き出した瞬間、脇腹への1発で僅かに残ったレミニアラの手首をデスランが物凄い握力で捕まえる。どうやらレミニアラのカウンターを最初から誘っていたらしい。


 「攻撃軽すぎるって」

 「ぐっ、」

 「はい終了〜」


 左腕を肩より後ろまで振りかぶって、顔面へ拳を叩き込む手筈をデスランが整えたが、振りかぶった際に一瞬生まれた握力の緩みを見逃さなかったレミニアラが的確に手首と腕を返して掴みにくい形をデスランに強制。顎目掛けて蹴りを放ちつつ、デスランの間合いから外れた。無論、その蹴りは簡単に防御されてしまった。


 「ハハハ。結構動けるじゃん。華奢だからって舐めてたよ。それじゃあっ……!」


 レミニアラと並べると、1回りも2回りも大きいデスランの体が猛進する。進む先は当然レミニアラ。間合いに入ると、先ほどまでとは違ってよりコンパクトな攻撃を繰り出す。今までのは小手調べ。実力差があるが故にどの程度動けるのかを適当な攻撃を加えながら見ていたのだ。なんとも悪趣味。しかし、それでも顔を殴られるか蹴られてしまえばレミニアラの負けとなる。先ほどと変わらず後方へ移動しながら攻撃を捌くが、ちゃんとした体術を駆使し無駄を省いたデスランの動きの前じゃ、その意味もほとんどない。今あるのは純粋な身体能力の差。実力の差である。

 完全に避けきれなくなったと同時に、ちょうど一撃分の隙間がレミニアラの胴体に空く。そこへ、デスランの足が伸びてきて、レミニアラの腹を射抜く!


 「がはっ!」


 鋭い横蹴り。下がりながら戦っていなければ、間違いなくレミニアラの筋肉量からなる防御力じゃ意識を刈り取られていただろう。


 「あーあ。そうなっちゃったらもう逃げ回ることもできないね。じゃっ、素直に1発殴られてよ」


 あまりの痛みと腹部に攻撃をもらったことによる息苦しさから膝を地面につけてしまうレミニアラ。もはやデスランの方に顔を向ける以外に何も示せない。と、デスランは確信していたのだが……。


 「私の勝ちですね。後輩君」

 「ぇ、、」


 デスランの目の前に居るレミニアラは、口を動かしていない。にも拘らず、レミニアラの声は確実にデスランの元へ届いている。


 「まさか……『幻覚のスキル』 でもおかしいだろ。ボクが『スキル避けのスキル』を使ったんだ。スキルを使えるわけが……」


 声はするのに、目の前のレミニアラは口を動かしていない。そのことから、『幻覚のスキル』で目の前に居るレミニアラは偽物で、本物はどこかに身を隠しているのではないかとデスランは当然疑う。だが、そう疑うと同時に『スキル避けのスキル』によってレミニアラがスキルを使えるはずがないと考え前者の考えと矛盾が生じ、頭がこんがらがる。


 「ほら、本物の私はあなたの後ろですよ」


 混乱の中にレミニアラから提示された答え。それに対して咄嗟に自身の後ろを振り向いた……次の瞬間!


 「詰めが甘いんですよ、後輩君」

 

 再びレミニアラの声がしたため、前へ向き直ると、直後デスランはレミニアラにデコピンを食う。


 「痛っ、」

 「顔に触れました。私の勝ちですね」

 「ぁ!」

 「勝負あり! レミニアラの勝ち!」


 最後の最後でデスランが呆気に取られたまま、決闘は済んだ。レミニアラの勝利で。


 「待て待ておかしいでしょ⁉︎ なんで『スキル避けのスキル』を受けたはずなのにスキル使えてんのさ!」

 

 結局分からずじまいなこの謎を、デスランはかなりの声量で問いただすが、レミニアラは何か特別なことをした覚えなどないと言わんばかりの無表情・低声量で答えた。


 「腹話術です」

 「……………へ?」

 「私が『幻覚のスキル』で姿をくらまし、どこからか話しているとあなたが勘ぐった時、私は腹話術で口を開かず動かさず、ただ喋っていただけです。つまり先ほどの戦い。私はスキルを1度も使用していません」

 「そ、そんなわけないだろ。だってあの時、声は………」


 よくよく考えてみると、レミニアラの声は口は動いていなくとも確かに目の前に居たレミニアラの方から聞こえてきていた。そのことにデスランは今、ようやく気がついた。


 「な……たかだか口が動いてなかっただけで、目の前の奴が偽物だってボクは勘ぐっていたのか……」

 「いいや、それだけじゃないな。あの時レミニアラは、お前が自分の勝利を絶対に疑わなかったその瞬間に、『私の勝ちですね。後輩君』って言った。幾分自分の勝利に疑念があれば、冷静に立ち回れていたんだろうが、100自分が勝ったってお前は考えてたから、その言葉に大して頭を使わずに考えちまったんだろ。その結果、レミニアラの策にハマった」

 「くっ……そ、」

 「ですが、私の想定以上の戦いぶりだったことは認めましょう。最初からわざと隙を作り、攻撃をもらって最後の腹話術の流れに持って行くつもりではありましたが、あなたからもらった蹴り、かなり重たかったです。一瞬腹話術を断念するか迷うほどに……」


 レミニアラが先ほどの戦いで負傷した手首と腹部を『治癒のスキル』で治しながら、かなり悔しそうにしているデスランに賞賛の言葉を送る。


 「とは言え、勝ったのは私ですので、恋神様の秘書は引き続き私が務める。よろしいですね?」

 「あぁ。そりゃ、ボクが負けたしね」

 「で、私が勝ったのですから、私も何かひとつ、後輩君にお願いをしてもよろしいのでしょうね?」

 「ええ⁉︎」


 それは少し予想外だったのか、2、3歩後ろに下がるが後ろは壁。もう逃げ場はない。


 「当然でしょう。あなたが勝った時だけ報酬を得るなど、都合が良すぎますから」

 「うえーーん、恋にい何とかしてよ〜」

 「泣きついてもダメだ。今回の件は全部お前が悪い」

 「とのことです。では……そうですねぇ」


 何を自分がさせられるのか。内心かなり不安がるデスランだが、レミニアラから言われたのは大した願いではなかった……。


 「今後は私のことを、ちゃんと『先輩』と呼んでください。わかりましたね? 後輩君」

 「ん…………はいはい。わかりましたよ。レミニアラ先輩」

 「よろしい」


 これでこの場は丸く収まった。が、デスランの要件はまだ済んでいないらしい。決闘が終わり、話がまとまったことですぐに建物から出ると、デスランが恋神宅にレミニアラのぬいぐるみを持ちながら話を始めた。


 「あのさ恋にい。先輩との決闘は、正直ボクがここに来た理由からすればついでみたいなものなんだ」

 「お前マジでふざけんなよ。真山のラノベで例えたら1話の半分くらいお前とレミニアラの決闘で尺使ってんだからな?」


 結構マジな話である……。


 「ちょっとよく分からないけど、マジで1回勝負したいんだ。アカデミー卒業したし。ボクだって恋にいに負けないくらいになったってとこ見せたいんだよ!」

 「熱いところ悪いが却下だ。特に最近は忙しい」

 「知ってるよ! 高峰たかみねって奴がネックなんだよね?」


 どうやらここに来る前に最高神などから最近の恋神の事情は聞いているらしい。


 「そうだ。だからお前と遊んでる場合じゃない。勝負はまた今度だ」

 「…………なるほど」


 何かにしっかり納得したのか、デスランはその後、その話題を掘り返すことはなかった。


 あっという間に夏休みは終わり、新学期を迎えた。高峰という不安要素をどう対処するか。その決定打に欠けている中、真山は勇気を振り絞って登校していた。無論、その横には恋神。いいや、恋田神大れんだこうだいの姿もある。


 「本当に大丈夫か? とても顔色がいいとは言えないが」

 「だ、大丈夫です。これは私の問題ですから、私が踏み出さないと……」


 角を曲がり、ちょうど高校の校門が見えた時、2名をドデカい声が迎える。


 「おっはよう恋にい‼︎ 新学期早々、気持ちのいい青空だねぇ‼︎」

 「な、なんでお前が?」

 

 そう問うたが、もうその答えは見えていた。デスランが着用している服は、恋神が通う高校の制服だったからである。


 「決まってるじゃん! 恋にいと勝負するためだよ!」

 「んだから、それは忙しいから無理だって」

 「そうそう。その忙しい理由、ボクがチョロっと解決しておいたから」

 「解決? 何を」


 これもまた、恋神は問う前から薄々答えを知っていたが、それでも聞かずにはいられなかった。


 「何って……高峰だよ。ボクが痛い目に合わせておいたから、多分もう、この学校には来れないと思うよ? 来たらぶち殺すって言っておいたしさ。だから恋にい。改めて、ボクと勝負してよ」

 「おま……」

 

 恋神がその話題の中に取り残される中、デスランが真山に話を振る。


 「んお! 君が噂に名高い真山凪沙まやまなぎさだね。よかったね。これで君、これからはまた普段通りの生活できるよ……?」


 とても人間じゃ放てない異質にして濃厚な気配。それを神だと知った上で恋神とそれなりの時間を過ごした真山は悟り、デスランもまた、恋田神大同様に人間ではなく神なんだなと理解した。

 高峰の件が落ち着いたことと、目の前に居る恋神以外の神。その2つをどう受け止めればいいのか分からない。

 そんな苦悩の表情を真山が浮かべたところで、恋愛の神様の物語は新学期へと進む……。

読んでいただきありがとうございました!


 前話から後書きを残そうと思い立ち、今回もしっかり残させていただきます! 

 前話の後書きで、次話投稿の目標は2週間と書きましたが、なんと1週間で投稿することができました! 我ながら素晴らしい。文字数は0話を除いて、大体1話あたり5000字前後を目安にしていますが、今回は6000字弱と少し多めです。しかし、読んでいただける方々が居ると思うと嬉しくて張り切ってしまいますね笑

 話を物語の方に切り替えますが、謎に戦闘描写が目立った話はひとまずここまでです。次話からはちょっと変わった学園ラブコメを再開したいと思います! (あまり戦わせすぎるとジャンル変わっちゃうので……)


 まだまだ至らぬ点が多いと思いますが、少しでも読んでいただけたら幸いです。感想や評価もいただけるとなお嬉しいです。「ここがなってない!」とか、教えていただけたら私自身の成長にも繋がりますので、どうぞよろしくお願いします。それではまた、2週間後を目安に投稿します。

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