表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/17

12恋 恋愛の神様の秘書は受けて立ちます

少しでも読んでいただけると幸いです!

            12恋


     恋愛の神様の秘書は受けて立ちます


 自分がもし人間ならば。そう何度、ここ最近の恋神こいがみは考えたことだろう。自分が人間で、高峰と同じ立場ならばかえってやれることは多かったかもしれない。それこそ脅して、真山凪沙まやまなぎさの安全を保障してやることくらい。


 「ハーーァ、」

 「なんだよ恋田れんだ。そんなデケーため息吐いて」


 少し離れた所からでも聞こえるくらいのため息を吐くと、隣を歩く中島がすかさず反応を見せた。


 「いや、暑いなぁと思ってな」

 「確かに今日は特別暑いもんなぁ。気温どれくらいだっけ?」

 「都心は最高気温38℃だ。今は昼前だから、35℃くらいじゃないか?」

 「人間が生きていける環境じゃねぇ〜ぜ〜」


 気温を聞いてダラッと姿勢を崩す中島を尻目に、「神の俺もこの暑さはゴメンだよ」と心の中でボヤく恋神。

 今日の恋が身は、前から遊びに誘ってくれていた中島とゲームセンターに行くことにしていた。それ以外には特に何をするとかって話はせず、成り行きでやろうとのお達しを中島からもらっているため、恋神はただ中島の斜め後ろを歩いているだけだ。


 「それにしても、杉八木と松田は残念だったな。今行こうとしているゲーセン。結構盛況なんだろ?」

 「そうだぜ! 特にUFOキャッチャーが激アツだ! よく取れるらしい‼︎」


 ガッツポーズをして取る気満々の表情と体勢を築くが、どうにも中島はその手のゲームが苦手そうな気がしてならないと恋神は考えていた。

 因みに、本来今日一緒に行動する予定だった杉八木と松田だが、杉八木は塾の夏期講習の予定がズレて急遽顔を出せなくなり、松田は夏風邪にやられて昨日から寝込んでいる様だ。

 しばらく内容のない会話を繰り返して、2人は目当てのゲームセンターに到着した。


 「当然だが綺麗な建物だな」

 

 新しくオープンした店舗なので、色が薄くなったりとかは全くしていない、誰が見ても新しく綺麗な建物だと認識できるゲームセンターがそびえ立っている。


 「6階建なのか。凄いな」


 建物に入ってまず、恋神は建物の案内板を見て驚く。てっきり別の店舗が入っているのかと考えていたが、全てがゲームセンターの管轄らしい。


 「あったりまえよ! とまぁ、上2階はボウリング場だけどな」

 「ゲーセン管轄のボウリング場ってことか?」

 「そうだ。ボウリングでいいスコア取ると、ゲーセンで使えるチケットを貰えたりもするんだ………」


 恋神が、中島の前ではせいぜい昼食時にまだ食べたことのない食べ物を食べているときの様な、輝かしい表情を見せると、それに気圧されて言葉が止まる中島。


 「ん、え、、っと、もしかしてボウリングやったことない?」

 「ない! やってみたい‼︎」


 凄まじい好奇心の圧に、中島は有無も言えない感じで了承した。

 

 ゲームセンターに来たが、2名はまず最初にボウリングをしに5階を訪れた。そこで受付を済ませ、予約の取れたレーンに向かう流れだ。幸い4階以下の階層が本日は人気だったためか、ボウリング場はちらほらレーンに空きが見える。


 「もっと混んでると思ったが、ラッキーだったなっ」

 「おおお。ボール、あそこから選んでくるんだよな⁉︎ どれがいいんだ?」

 「マジでボウリングの予備知識ないんだな。ボールの選び方は、まず入れる指3本。親指、中指、薬指の太さがボールに空いてる穴と合っているか。それと、重さも重要だ。俺は11ポンドを使う。大体の他の学生もそこら辺の重さを選ぶと思うから、前後で好みを選ぶといいんじゃね?」

 「ふむふむなるほど」


 そう言いながら、まずボールを台に置いたままの状態で指の幅を合わせる。2、3個試して、それなりにしっくり来たものを持ち上げると、今度は重さの確認だ。


 「ん、」


 ボールを持って違和感を覚えたが、その理由がすぐにわかった。


 「よいしょっと、、」


 ボールを選んで持ち上げる中島を見て、ボウリングのボールがそれなりに重たい物であることを理解した。そう、恋神はボールを持ち上げてその感覚を味わうことがなかったのだ。やはり人間に近しくなっているとは言え、筋力はかなり高いままのようだ。無論、それでも並の倍程度に収まってはいるが……。

 摘み上げるようにボールを持ち上げ、レーンに備え付けられているボール置きにボールを置く。選択したボールの重さは13ポンド。置いてあるボールの中では1番重たい物を恋神は選んだ。大きいボールになるにつれて穴の幅も大きくなっていることはすぐにわかったためやや焦ったが、なんとか重たいボールでも自分の指幅に合うものがあって恋神は一安心した。


 「じゃっ、投げるか! 10ピン倒せばいいってのはわかるよな?」

 「さてはお前馬鹿にしてるな?」

 「いやいや想像以上にボウリング知らなかったから聞いただけだよ! 怒んなって」

 「どこを狙えば倒れやすいとか、そういうのは知らないからぜひ教えて欲しい」

 「任せろ! ボウリングは少し上手いんだぜ俺様は‼︎」


 腰に手を当て自信を覗かせるが、どうにも信用できない。そんなある種の期待は、すぐに打ち砕かれることになる……。


 「っしゃ! 176。今日は安定感も抜群だぜ」

 「自信があるって言ってたけど、本当に上手いんだな」


 ゲームが始まって早々、恋神は携帯端末でボウリングの平均スコアその他調べられるだけの情報を調べ閲覧した。

 恋神が閲覧したサイトによれば、平均してスコア150を超えればかなり上手く、130でも上出来とのこと。既に3ゲームを終え、中島のスコアは168、158、176である。


 「なんというか、お前の言うとおり安定感が凄いな。正直もっとメチャクチャな投げ方すると思ってたよ」

 

 中島の性格からは考えられないほど効率の良いフォーム。決して無理に曲げようとしたりせず、まっすぐなボールを放っている。


 「俺どんなふうに見られてんだよ……。コツはベッドピンをとにかく倒すことだ。そこを当てられなきゃストライクは狙えない。もちろんごく稀に初撃で当てられなくても後で倒れてくれたりとかするけどな」

 「うん、やってみるよ」

 「んまっ、俺には一生かかっても勝てねぇけどなぁ‼︎」


 事実、恋神の3ゲームのスコアは78、84、96だ。100は素人の最低ラインとも言える。となれば、素人の中でも下手な部類に恋神は属していると言える。


 「中島は1日で何ゲーム投げられる? スコアを下げずに」

 「んーー多い時は12ゲームとか投げたこともある。まぁ流石に後半はスコアも落ちるが、今日は調子がいいし8ゲームくらいまでは結構スコア維持できるかもな! それがどうした?」

 「1ゲームでも俺がお前に勝ったら、大したものじゃないが、貸し1つってことでどうだ?」

 「なんだよ貸しって。ジュース奢りとかでいいんじゃ……」

 「えー何。あんなに偉そうなこと言っておいてジュース? うわ〜カッコ悪ぅぅ」


 恋神はここで、少しでも貸しを作っておくことで行動範囲の拡張を狙っていた。恋愛を成就させること。それが大きな目標である恋神だが、例えば友人の中島の恋路であっても介入できる範囲には限度がある。それを少しでも拡張するために、恋神はこうして動いているのだ。


 「くぅ。わかったよ。そんかわし、俺が全ゲーム勝ったらジュース奢れよな!」

 「交渉成立だな。貸しは今日のところは消費しないから忘れるなよ?」


 勝負が始まった。恋神は最初の3ゲームで工夫できるだけの投げ方を1通り試し終えている。だからこそ、このタイミングで勝負をふっかけたのだ。中島によれば、8ゲームまではそれなりの精度で投げられるとのこと。つまり勝負できるゲーム数は残り5ゲーム。

 勝負1ゲーム目。つまり累計4ゲーム目からは、投げ方を毎回変えたりはせず、中島を見習って一定のリズムで安定した投げ方を試みる。結果、勝負1ゲーム目。累計4ゲーム目にしてようやくストライクを取ることができた。しかし、勝負の結果自体は118対163で敗北した。


 「後4ゲームだな。どうだい勝てそうかい?」


 と、中嶋が煽りを入れるが、それに負けじと恋神も返す。


 「言っておくが、俺はかなり天才だからな? 予想じゃ最後のゲームの方で並び追い抜くぞ?」


 ゲームとゲームの間は会話をするが、いざゲームが始まるとお互いに真剣モード。余計な声かけはしない。

 勝負2ゲーム目。累計5ゲーム目も、126対154で中島が安定感を見せ勝利。

 この辺りまではまだ中島にも余裕があったが、次のゲームを境にそれが無くなり始める。

 勝負3ゲーム目。累計6ゲーム目の結果も恋神の敗北。しかしスコアは、143対170とジリジリその実力の底を上げつつあることが明らかに窺えるくらいになっていた。

 恋神の成長速度を考えると、おそらく次のゲームは150後半か160前半は叩き出してくるだろう。そんな簡単な計算と予測は当然中島もできるため、自分の中で勝利に必要な最低スコアを頭に入れつつ、次のゲームに進んだ。

 勝負4ゲーム目。累計7ゲーム目は物凄い展開となった。恋神がこのゲームでスコア165を叩き出したのだ。このスコアなら、中島の調子によっては勝っていたかもしれない。しかし、中島も中島だった。ここに来て192という、本日最高スコアにしてもうすぐ大台の200が見える位置にスコアを伸ばしてきたのだ。

 勝負はとうとう最終ゲーム。勝負5ゲーム目。累計8ゲーム目に持ち越された。


 「最後のゲームってことでいいな? 中島」

 「いやーマジでスゲーよ恋田。でも今日初めての奴には流石に負けたくないわ!」


 2名はこれでもかと言うくらいにボールをタオルで拭き、いよいよ最終ゲーム開始。

 序盤、お互いに1回ずつストライク。それ以外は必ずスペアを取り、スコアは横並び。中盤も序盤と変わらず、1回ずつストライク。それ以外をスペアで締め、いよいよ残すは9、10フレーム。まずは中島。ベッドピンを捉えるも残念ながら倒れたのは9ピン。残す1ピンを確実に倒ししっかりとスペアを獲得する。続いて恋神の9フレーム目。ここで恋神が勝利を引き寄せるストライクを獲得。最終フレームに勢いをつける形となった。

 泣いても笑っても最後のフレーム。先行の中島がストライクを取った。直後、力強いガッツポーズを見せる。それを見ながら、恋神は僅かな笑みを浮かべるほどの余裕を見せた。

 10フレーム目は特殊で、ストライクかスペアを取れば合計3球投げられる。

 中島が勝ちを引き寄せるには、恋神が10フレーム目でもストライクを取ってくることを見越してストライクを取らなければならない。つまり、ダブルを獲得しなければならない。しかし、現実はそう甘くなかった。最後は8ピンスペアで終わり、残す恋神の10フレーム目を見守るしか無くなった。ここで恋神が大きく崩れればまだ望みはあったのかもしれない。だが、そんな期待も虚しく1投目をストライク。最後も8ピンスペアで締め、ゲームセット。スコアは恋神が203。中島が195で、なんと恋神が大台の200を超えて勝利をもぎ取った。


 「くう……そっ。200超えに負けちゃ文句言えねぇわな。負けたぜ恋田。ガチで天才かもなお前」

 「そう言ったはずだ。とは言え、最後まで気の抜けない勝負だった。またやろう」


 ただの遊びなのに、2名は力強い握手からの熱い抱擁をし、お互いの健闘を讃えあった。なお、周囲の客はドン引きである。

 その後下の階層にある色んなゲームをして1日はあっという間に流れ、恋神が中島と別れたのは暗さが感じられる程度の時間帯だった。


 「恋神様」

 「お、レミニアラ……って、お前もゲーセン居たのかよ」


 レミニアラの手には抱えきれないほど大きなぬいぐるみと小さなお菓子の詰め合わせがあった。


 「少し持ってやるよ」

 「じゃあこのぬいぐるみを」

 「恥ずかしいからお菓子の方な」


 レミニアラからお菓子を受け取ると、恋神は手ぶらだったが片手に荷物が追加され、逆にレミニアラは手元が幾分マシになった。


 「UFOキャッチャー、結構盛況でしたが、行かれなかったのですか?」

 「盛況だから行かなかった。混みすぎてる所は好きじゃない。それに、取れすぎてもさっきのお前みたいになるからやめたんだ」

 「なるほど。珍しく頭がいいですね」

 「珍しくは余計だよ」


 しばらく何を話すでもなく、ただ恋神宅まで歩いていると、空気が痺れるような感覚を恋神が覚えたその刹那!


 「隙ありィィィ‼︎」


 真後ろから、あたり一帯に突風を巻き起こす威力の拳が恋神の頭部目掛け飛んで来た! それを恋神は、お菓子の袋を持っていない方の左前腕を強引に滑り込ませて防いだ。


 「ぐっ、」

 「あ、いっけねぇー。今のれんにいは肉体が人間に近いんだったな。こりゃ失敬」

 「恋神様!」


 レミニアラが抱えていたぬいぐるみを道におくと、すぐに恋神のひしゃげた左前腕に治癒のスキルを用いて再生を図る。


 「随分な挨拶だな。デスラン」

 「いやいや。それは恋にいの肉体が人間に近いものだからだよ? 本来の肉体ならもっと早く反応できただろうし、もっと素早く対処できたはずだもん。軽くいなされると踏んでたからさ、ゴメンねこの通りだよ。許して!」


 頭を軽く下げながら合掌し、謝罪の意を表するが、当然恋神には響かない。


 「んで、何のようだ? 正直今の一件でだいぶお前のこと嫌いになったんだが……」

 「うわーゴメンってば! ちゃんと用事はあるんだよ? だから邪険にしないで」

 「はいはいわかった。んで、用件ってのは?」

 「まぁ、その前に……」


 デスランの瞳から危ない色が漏れ出た次の瞬間、今の恋神では目で追えない程の速度でデスランが急接近。恋神の左前腕の治癒を終えたばかりのレミニアラの腹部目掛けて冗談じゃ済まない威力の蹴りを放つ!


 「んっ!」


 後方数メートル先までレミニアラは吹き飛んだが、直撃寸前にしっかりと手で威力を殺しつつ受けたため大したダメージにはなっていない。

 一方で、攻撃の余波だけで体勢を崩した恋神はこの状況には流石に苛立ちを隠しきれない。


 「なんのマネだ! 俺に用があんだろ⁉︎」

 「うん。ボクの目標は恋にいだよ。けど、それと同等か、下手すりゃそれ以上にそこの女にも用事があるんだ」

 「レミニアラに?」


 軽く埃を払い、立ち上がるレミニアラを見た後、デスランが続ける。


 「その女が恋にいの秘書なんて認めない! ボクこそが恋にいの秘書に相応しいに決まってる! だから決闘だ」


 役職のある神はもちろん、それの秘書や近しい役を与えられた神は皆、神の中でも物凄く優秀な者たちだ。その優秀さは座学だけじゃない。ありとあらゆる役職が神にはあるため、そのいずれにも適性をもてるよう戦闘力も関わってくる。

 ただ、拳を交えるとなればレミニアラが幾分不利だ。神とて性別はあるため、男のデスランより女のレミニアラの方が力では劣る。何よりデスランの体術は、神の中でも特別優秀なレベルにある。

 だから恋神はその申し出に横槍を入れようと口を開いた。しかし、恋神が言葉を発する前に、レミニアラが話す。


 「いいですよ。その決闘、受けても。但し条件が2つあります」

 「なんだ?」

 「1つは、ここじゃ人目につくので場所を変えること。ちょうど明日から、内装工事が始まる建物がありますので、そこの屋上なら、おそらく今日は誰も居ませんからそこでやりましょう」

 「いいねぇ! ちょこまかと狭い所でやるのは嫌だったんだ! そこでやろう‼︎」

 「2つ目は決着の基準について。これはお互いの顔に触れたら勝ちにしましょう。無論触れるまでの手段は自由。あと、条件に入れませんでしたが、建物から出ることと、人間を巻き込むことはなしです。いいですね?」

 「おうよ。んじゃあ早速、始めようぜ‼︎」


 ラブコメが、ここに来て思わぬ形で、バトル展開になった。戦いの行方は次回に続く……。

読んでいただき、ありがとうございました!


 この回から、少しずつ後書きを書かせていただきます。私の大したことない作品のついでに少しでも目を通して頂けると、本当に嬉しいです。

 私は来年度から、いよいよ社会人になります! 最近は就職先に書類等を提出するのが忙しく、筆を進めるペースがかなり遅くなってしまいました……。本当は週1で投稿したいのですが、なかなか難しいですね。せめて2週に1度は投稿したい……! 

 では次回、今日から2週以内に投稿できることを目標に頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ