9恋 恋愛の神様は思い知らされます
10部目となりました! 読んでいただけると嬉しいです
9恋
恋愛の神様は思い知らされます
恋神は真山凪沙から恋愛成就の連絡を貰うや否や、すぐに電話をかけた。
「お前、そう言うのは電話で伝えろよ!」
結果の報告はメールなりで。そう言ったのは恋神だが、上手くいったなら直冊話して欲しかったのだろう。理性よりも先に本能で物申す。
『す、すみません。私もとんとん拍子に話が進み過ぎて、、その………ビックリしちゃってて!』
真山の話によると、デート自体予定通りに進んだらしい。そして、別れる際にもう一度話をしてみたところ、その流れのままOKを貰ったえたそうだ。
「まぁなんだ。とりあえずおめでとうだな」
『ありがとうございます!』
「で、次いつ会うとか、そういう話はあったのか?」
『はい。とりあえず次の日曜日に、またデートするって話になりました』
週1ペースでデート。それを考えると、悪くない滑り出しと思える。
『あと、もうしばらくは私と高峰先輩が付き合っていることは内緒にしたいって言ってました』
「なんで隠す必要があるんだ?」
『わかりませんが、おそらく私との面識が今まで全くなかったからだと思います。面識がなかった私と突然付き合って、もしすぐに別れたなんて話になれば、先輩の心象も私の心象も良くないからかと』
恋神はその話を聞いて、違和感を覚えた。果たして高峰という男は、そんなことを考えるような人間なのだろうか……と。
「そうか。まぁ何はともあれよかったよ。じゃあこれで、お前と図書室で話し合うのも終わりだな」
『そう……ですね。本当に、恋田君には助けられてばかりでした。何より、あーやって作戦会議したり、なかなか作戦が決まらなくて、私の書いている物語の話をしたりするのが楽しかったです』
思い返せば、恋神のこれまでの学生生活。そして人間としての生活には、真山凪沙という存在が必ず居た。自分が支えていたようで、実は支えられていたところも多かったのかもしれない。
「それは俺もだよ。人間として生活初めて、どうしたらいいのかわからなかったが、お前の存在のおかげで目標も定まってたし、何より暇しなかった。これからはまた別の人間の恋愛を助力していくよ」
『フフフ。楽しみにしています。恋愛の神様が、そのお力で今度はどんなカップルを誕生せるのかを』
「あぁ。楽しみにしてろよ。じゃあ、何かあったらまた連絡するし、そっちからもしてくれ。じゃあな」
『はい。また明日学校で』
通話を終えると、少し長めに息を吐く。大きな仕事がひとつ、終了した。大きな一歩のようで、先はまだ遠い。あと何人。何組分の恋愛を助力すれば神に戻れるのだろうか。
そんなことを考えていると、レミニアラがフワッと頭上から姿を現す。
「真山という人間の恋愛。無事に成就したようですね」
「あぁ。長いようであっという間だったよ」
「最高神様が一度、直接話をしたいそうですので、神の住む世界に戻りましょう」
一瞬「おっ」となったが、たった1組の助力を終えただけで勉強の終了が、神に戻れるはずがないと思い頷いてレミニアラの力で一度、恋神は神の住む世界に戻った。
戻った先の目の前には、最高神がだいぶ立派な椅子に鎮座していた。すぐさま膝をつけ、頭を下げて最高神からの言葉を待つ恋神。今回レミニアラは恋神を連れてくる事が仕事だった故に、少し離れた所で立ってその光景を見ている。
「……………恋神。とりあえず、真山凪沙という人間の恋愛を成就させたようだが、何か感想はあるのかね?」
「感想……ですか。長いようで短かった。そんな感想が最初に出てきました」
「うむ。素直な感想でいいと思う。とはいえ、それだけじゃないはずだが……どうだね」
核心に迫る様な最高神の問いかけに、恋神は僅かに体を震わせたのち、硬直した。ただそれでも、恋神はそれ以上の言葉を発しなかった。
「特にないか。まぁいい。感想とともに浮き彫りになったであろう、心のしこり。それがどうか、悪い方に収束しないことをワシは願っているよ。ひとまず、お疲れ様。もう戻っても良いぞ」
「…………失礼します」
恋神は確かにひと仕事やり遂げた。にも拘らず、どうにもスッキリしない。その様子を、人間界に帰った後のレミニアラも問うた。
「恋神様。どうにも満足していない様に感じられるのですが………」
「いや、満足してるはずだ。どうせ、真山凪沙という人間も俺からすれば仕事そのものに他ならないんだからな。高峰と交際させる事ができた時点で、もうこれ以降、不必要に関わるつもりはない。後のことは、アイツ自身がどうにかするだろうし、どうにかなっても、俺が何かを思うことはない」
恋神は、人間を。真山凪沙を突き放す様な言い回しで返答した。
レミニアラは知っている。冷淡に、冷酷に。そんな風に突き放した答え方や考え方をした時の恋神は、決まって自分に嘘を吐いていると。
「ではどうして、“はずだ”なんて言い方をするのですか?」
先ほどの最高神からの問いかけの時同様、レミニアラの問いかけに恋神が答えることはなかった。
次の日以降。恋神はしばらく、何の変哲もない人間としての生活を。学生生活を送った。真山はというと、高峰と付き合えたことを口外することはなかったが、それが理由で少し自分に自信がもてたらしく、クラスメイトから話しかけられても少しは対応できるようになっていた。恋神と関わって1ヶ月弱。本当に目覚ましい進歩と言える。
「なぁ恋田。なんか最近、真山さんますます可愛くなってないか!」
と、小声で訴えてくるのは、先日眼鏡からコンタクトにイメチェンした瞬間、真山に恋心を抱く様になった男子生徒の中島だった。
「人見知りしなくなったんだろう。好意をもってるのなら、話しかけてみたらどうだ?」
無論、恋神の一連の言葉には何の気持ちもこもっていない。高峰と交際している真山には、今現在どんな人間の恋の矢も届かないし刺さらないからだ。
「は、話かけて……みようかな」
「いいんじゃないか」
驚くほどに退屈な日々だった。色がなかった。1番の問題は、色が失せた理由が真山凪沙の恋愛を助力する事がなくなったからではないということ。もちろんそれも全くないわけではないが、到底全体像には及ばない。
次の週の月曜日。
真山は学校を欠席した。
理由はわからなかった。
次の日。
その日は、あと2日で夏休みに入るという日。
朝、いつもより少し早めに登校した恋神は、早々に担任の高橋先生に呼び出されて廊下に出た。
どこか深刻そうな面持ち。何より、かなり疲弊している様子の高橋先生に言葉を投げようと思ったが、それよりも先に向こうが問う。
「真山さんのこと、何か知らない?」
「…………………ここ1週間のことならわかりません。何かあったんですか?」
自分が担任にその質問を投げた時、心から棘が生えて、体の中心を抉るような感覚を恋神は覚えた。同時に、手足が冷えた。
「……………本当はこういうの良くないけど、恋田君にだけは伝えるね。
真山さんが自殺を図ったの」
「……………………ぇ」
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