片4。
暗闇の雲
末世界に立ち込める暗雲
日常を現実と呼ぶ錯覚
何も言わない空が
未来時間軸
それを産み落とした
巨大な雲の谷間の分娩台
積乱雲から顔が覗く
巨人機体──、そう呼ばれた
黒煙の竜巻が無人の大洋を逆巻き荒ぶる
黒体の頭部に月光の眼差しが開闢する
かつての古代人たちはそれを神とも天とも呼んだ
万物の頂きにも登る深淵の憧憬
突如として現れた亡霊海域より放射される結合中心点
西暦より数えて2000と幾年月
異能者にしか視えなかったそれが
災害級の大津波と大地震を従え
飛来した地球外次元惑星捕食者とともに目覚める終末世紀
それでも夢追い人たちは地表に生きていた──
──それから、
ある離島の海域での民話
晴れわたる空に浮かぶ幾千年後の創世記の物語
「ねぇ、みてみて、シュナ!」
「んだよ、ミナ? 巨人機体のことかよ」
大人たちは皆、18の歳を迎えるころには星戦士と呼ばれ
海洋をまたぎ大陸へと襲来する惑星捕食者を討つべく
自らの身体の一部を古代文明より抽出化された機械模倣を纏わせ課することが
大人への通過儀礼となっていた未来時代
まだ古の文明残存する高校に通い始めた15歳の幼い二人が
腐敗した捕食者たちの骸横たわるかつての砂浜に座り語らう
未だ堕ちない巨人機体の頭部が白い雲間から逆さまに覗いて映る水面と渚
「世界ってさ、いつ終わるのかな……」
「んだよ、らしくねぇな」
人々が絶望に暮れる終焉なき戦闘
せめて人らしく生きようと最期の時を未来に託す
「巨人機体に憑依出来りゃ、世界を救えるんだろ?」
「だね。けど──、いったい、誰が? 誰もいなかったじゃん。救世主でさえ……」
「チッ……!」
戦闘は、機械化された大人たちの運命
無尽蔵に現れる未体生物に命が尽きる
「アイツらの目的ってさ、なんなんだろ? なんで現れたの?」
「さぁね? 巨人機体を喰いたいんじゃね?」
「趣味悪いよね」
「まったく……」
かつて、地球外次元惑星捕食者とも呼ばれた先史時代
人々の悪夢を型取り具現化して二次元の彼方より超越して現れる生命体
人類はその灯火を、風前にして終息を迎えようとしていた
「なぁ、ミナ。二人ならアイツら──、殲滅出来るんじゃね?」
「な、何!? きゅ、急に、シュナ……。えと。融合神話の伝説?」
「そ……。救世主は独りだった。けど、俺たちは二人」
「え──?」
かの言い伝えは古
創世主が言葉を聴く
古来が眠る海の底
古代人の放つ光
赤と青の心臓に震え
巨人機体、無より呼びかけられし時の声
光朽ちても
生まれゆく一握の砂粒に
星の涙も
月の雫も
時の遡ることなく
ひと息つく間さえなく
命震え
御霊震え──、
「おぃっ! しっかりしろ、ミナ!!」
「──え? あ……。ご、こめん。シュナ」
空より堕つる神体に乗りて
星の命も民も愛しきものたちを許す限り時の流れる懐にて大空を舞う
少女と少年の合わさる機体
欠片満つる潮の砂浜
足もとの月の漣に映る影
覚醒者
巨神光霊──、クロノクロノス。
運命は螺旋を描く




