捜査一課刑事、お荷物部署に飛ばされる
「ということで聖良ちゃん。おまえ明日から108号の仲間だから!」
「は?」
俺の名前は桜田聖良。24歳。
捜査一課の女刑事である。
いわゆる花形といわれる部署だが、たった今俺はそこをクビになった。
「どういうことですか!もういちど説明してください!」
バンと両手を机にたたきつけながら俺はいう。
「だから!君がジャンヌだからなんだって!」
ハゲヅラの岡本警部がそういい、たばこをスパーと吐く。
「はあ?意味わかりません!私は絶対いきません!」
「いや、でももう決まってるし、俺なんもできないですわ。」
だるそうにタバコの吸いながらハゲヅラがいう。
「だいたいあそこは刑事の墓場でしょ!俺はがなにをしたというんですか!」
「まあ、特になにもしてないかな。でもちょくちょくミスはあったからその件かも。」
岡本警部が人差しゆびをたてる。
「上が決めたからこれ絶対。今日から頑張って!」
バタン。
無理やり追い出された俺はにただ佇んでいた。
「よりによって108か」
警視庁捜査108課、通称「ヤッ課」
刑事として不適合な者が集まると噂されている場所だ。
淫らな行為をした者、現場で許可なく爆弾を爆破した者、寝てばかりいる者、犯人を取り逃し続けた者。
色々な刑事がいるという。
俺は、仕方なく荷物をもった状態で歩き出す。
「はあ」
ヤッ課の扉の前につくと、あきらかに寂れたドアノブ。
もとは倉庫室かなにかだったという感じのドアである。
そこに108号室という文字。
そして何より俺の目を奪ったのは、表札の課の名前だ。
『悪魔討伐課』
「悪魔討伐課?」
「なんだそれ。」
そういえば、ある時同僚の正義がいってたっけ?
ヤッ課が悪魔がいるとか騒ぎ立ててるって。
俺が扉をあけようとした時、ドアノブがまわり、ピンクのキャバい女性が出ようとしてきた。
ポニーテールのメイクが濃く、明らかにギャルとしかいえない女性だ!
「あ、こんにちは!」
女性は、俺をみると「なんかよう?」という。
「今回から配属になりました。桜田聖良といいます。」
「ああ。桜田さん。いいよ。入って。話は聞いてる。」
女性は、すっと扉を全開にし、俺のために道をつくってくれる。
「守坂警部〜桜田ちゃんきたよー。」
甘ったるい声で女性がそういうと、のぶとい声で「やっとか!」というこえがきこえる。
俺が入っていくと、頭がバーコードハゲでチョビひげのおじさんがでてきた。
「いや、お待ちしてました!桜田さん。」
汗をハンカチでふきながら、おじさんは嬉しそうにする。
「よくわからないですけど、よろしくお願いします。」
「席どこですか?」
「あ、そこだよ!正義君の隣」
俺がその席を見ると、白い机にロングコートで黒髪の刑事がすわっている。
「ま、まさよし!なんでお前!」
「知らん。」
勝俣正義。24歳。独身。捜査三課の人間だ。普段からリーダーシップからあり、また話しやすく女の私にも対等に接してくれる。
「なんか突然飛ばされた。ジルドレとかいうやつらしいぞ。俺は」
少し不貞腐れたようにいったあと、ふうと彼はいきをはく。
「はあ?」
「いやー捜査一課から1人、捜査三課から1人。本当今日は吉日です。」
「いや俺たちは凶日です。」と正義がいう。
「へえ。この子が噂の!!」
髪がピンク色の女性がいう。
「私はクレオパトラ!クレオって呼んで〜主に魔除けメイクが得意なんだ〜、あとボーガン〜」
ズキュンと弓矢の仕草をする。
「そ、そう」
俺の顔が引き攣る。
オホンと守坂警部が咳払いをする。
「まあ、看板にもでてたとおもうけど。主に悪魔討伐のために頑張ってもらいます!ちなみに私は普段僧をしております。前世は空海です。」
「はあ。」と俺がそういうと
「おっさん、悪魔討伐ってなんだよ。」と不機嫌な顔で、守坂をにらみつける。
「悪魔討伐は悪魔討伐です。厄災を人間に降らしている者をやっつけます。」
「言うなれば降魔調伏です!悪魔から人類の解放を!」
と金で出来た仏教の密教道具五鈷杵をもち、ふる。
「悪魔から人類の解放・・・・ハハ」と俺が口をひくつかせる。
(やばい。こいつやべえ。こいつが警部!?)
その時だ。
バタン
「やっほーごめんくだちゃい?おいでなす!!!」
突然ばかにあかるい男の声が聞こえる。
振り返ると黒と白、半分に分けられたマスクをつけた男が片足をあげ、白鳥のポーズをしている。
髪は紫のショートだ。
「ジュリー警視!」
「いやー守坂昨日ぶり!今日も頑張ってルシファー馬鹿にしてきたわ!」
「警視!?」
思わず背筋がピンとする。
「ん?君は!」
俺をみて、ジュリー警視と呼ばれた男が、すっとすごいいきおいでとんでくる。
「クンクン!これはまた童貞くさい男女だ!」
「もう警視がいったんですよ?ジャンヌがあそこにいるって。」
守坂があわてる。
「そうだったわ!ごめんね?名前はえっと。」
「桜田聖良です。」
「ああ、ジャンヌね。よろしく。」
「いや、聖良です。」
「いや君はジャンヌ!!!」
また白鳥のポーズをする。
(なんだこいつ。)
「ジャンヌちゃん、ごめんね!どうしても君が必要だったから!突如来てもらった!」
「えっ、あなたが俺を?」
「うん。友達に連絡したらすぐオーケーしてくれた!」
なぜか提灯をもち、こんどはすると祭りの格好をしながら、手をたたく。
キラキラと星が頭の上でかがやいている。
「えっ!」
「銀座のママとのご馳走と引き換えだったんだけど!」
「はあ!俺銀座のママと引き換えですか!」
「まあ、これから君はここ悪魔討伐課でジャンヌとして働いてもらう!」
「つらい戦いになるかもしれないががんばろう!」
「大丈夫、いざとなったら身を守るルシファーの呪文あるから。」
「はぁ?それでその呪文は?」
「聖ルシファーを信仰せよ!シリ・タタケツァン」
俺はあまりにコケにされているとかんじ、
「そんなんで悪魔倒せるわけねぇだろうがあぁぁあ!」と絶叫した。
ーーーーヤッ課、これは警視庁内で花形組織にいた俺たちとお荷物クラブといわれたその仲間たちの織りなす物語だ。