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舞台はオーストラリアへ。

それから三日後、スティーヴンはオーストラリアのスキーリゾートへ向かった。

渡航の前日、スティーヴンが言った。

「一人でこの荷物を持って電車に乗って空港に行くの大変だなー」

私は、この間の夜以来、あと何か月会えないのだろうかと考えていた。

だから、こう言ったのだ。

「札幌から手伝おうか?力はないけど手なら二つあるよ!」

「Yes, please!!!」


こうして私たちは空港まで一緒に行って、ランチを食べる約束をした。

Wi-Fiがなければ連絡がとれないスティーヴンとはまるで、

小学生のときに友達と外で待ち合わせをするドキドキ感があった。


スピードを落とす電車の中に彼の優しい笑顔を無事、駅のホームから見つけ電車に飛び乗った。

とにかく会えて触れられて、本当にうれしかった。

電車に30分ほど揺られている間、複雑な心境だった。

砂時計はどんどん落ちていく。彼は遠くに行ってしまう。

一緒にラーメンを食べて、搭乗ゲートの前の椅子に座り、できるだけたくさんの時間を一緒に過ごした。

椅子に座って冗談を言い、おどけあって、次に会う約束をして、キスをたくさんした。

隣に座るオジサンが咳払いをして移動して、私たちはバツが悪かったけど、それも可笑しかった。


彼は私とは違って時間に余裕をもって行動したい人。

よく「本当に日本人?」とからかわれた。

彼は空港のゲートに吸い込まれていく。

でも大丈夫。これで終わりではないのだ。

私と彼の物語は始まったばかり。


それから6月の一か月間、私はワーキングホリデービザの取得に奔走し、地元の友だちと楽しみ、

そして毎晩彼とスカイプした。つなぎっぱなしで3時間別々なことをしてたこともある。


私が自転車旅をしていたとき、疲れているのに遅くまで彼とメッセージのやりとりをしていたもんだから、

彼が返事をくれる間の時間で寝落ちすることが多くて、それをわたしたちはhis special powerと呼んだ。

スカイプしてる間も、よくその不思議な力が発揮されてた気がする。

彼と過ごす時間は、何よりも落ち着く。安らぎであった。


そして7月になり、私はシドニーへ渡った。

自転車旅で結構貯金を使った私は、オーストラリア人の友だちに、オーストラリアは賃金が高いから稼げるよ!と聞いて、自転車旅のあとはオーストラリアに行くことに決めていた。


渡航する前日に、日本人のお母さん、オーストラリア人のお父さん、二人の子どもの家に短期で間借りすることに決めた。

決して便利なところにあるうちではなかったが、その家族が大好きになって、シドニーにいた4か月間ずっとそこに住んだことは言うまでもない。


そして4か月しか滞在予定のない私は職探しに難航した。

日本語で働きたいと思っていたのだが、日本食レストランのほとんどが違法な賃金で日本人の若者を雇っていた。

寿司屋の面接で、自称元ボクサーの店長が言った。

「君は将来何がしたいの?寿司屋のウェイトレスで永住権がとれると思う?結婚すればいいと思っているんでしょ。結婚も永住権もそんな簡単じゃないからね。」

どうして私はたった今あった違法な賃金で日本人を雇う寿司屋の店長にこんなことを言われないといけないんだろう。

帰りながらスティーヴンにメッセージして、そんな君の人生に関係ない人の言った言葉に悲しまないで。と言われ、ちょっぴり泣いた。


私は職探しはほどほどに、スティーヴンに3泊4日で会いに行くことにした。

バスは往復で7000円くらいだった。

片道6時間の道のりはそんなにいいものじゃなかった。

道端に横たわる死んだカンガルーと羊の数を数えた。

バス停で待っている彼を見つけ、バスの中から手を振り、バスから飛び降りて彼に飛びついた。

体全部から嬉しいという気持ちが湧き出た。









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