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「ではまず、どのような衣装でお食事デートに挑むか考えなくてはいけませんね。マリッサお嬢様のピンク色の髪が際立つような、素敵なワンピースを検討しなくては」

「こんな時、我が領地が洋服の生地が手に入りやすいところで助かったと思うわ。お金をそれほどかけなくても、着るものには困らないものね」

「はいっ。まさに、神様がこの日のために、洋服の御加護を与えていたのでしょう!」


 盛り上がりまくるメイド長とお母様がいそいそと私のお部屋のクローゼットをバッッと開けて、ワンピースの確認作業を開始しました。我が家は自転車操業の農園経営者ですが、運良く洋服の布や素材が手に入りやすい土地柄のため、ドレスやワンピースも今時のものが安く手に入るのです。

 実は私自身もお針子作業のアルバイトを夜な夜なしている関係で、サンプル代わりのワンピースが沢山あるだけなんですけどね。


「本当はマリッサのピンク色に映えるのは、この白くて清楚なヒラヒラミニワンピースなんだけど。流石にまだ花嫁でもないのに、白いワンピースなんて気が早いかしら?」

「辺境地のご令嬢という田舎的な要素を逆手にとって、清純さをアピールしつつクライン公爵を堕とせるファッションを構築するのが宜しいかと。この最新デザインのワンピースは……一見可愛らしいですが、少し太ももの露出度が高めかも知れませんわ」


 何を思ったのかお母様のチョイスは、白いヒラヒラの激ミニワンピースでした。清楚なデザインのレースがふんだんにあしらわれているものの、露出が高すぎるとサンプルの段階でボツになったものらしいです。

 捨てるのはもったいとかで、私がもらったのですが今のところ出番はなく。箪笥の肥やし状態でしたが、ついにお母様は日の目を見たと言わんばかりに、娘のデート服としてプッシュしています。


「うーん、けどねメイド長。男の人って何だかんだ言って、脚が好きな人が多いわよね。わざとらしくない程度には、美脚をアピールさせてあげないと。我が家の経済難をこれで乗り切れかもなのよっ!」

「しかし、向こうは伝統ある公爵家。もう少し露出度を下げて、品よく攻めるのが良い作戦かと」


 もはや私の意思は完全に無視されて、ただの乙女ゲームのアバターくらいの扱いを受けている気がします。ふとデートの内容を思い出して、私が自らミニワンピースにストップをかけることに。


「あぁ……そのことなんですけど、お食事会と言っても実は向こうで私が自らお料理をする約束なんです。だからあまり露出が気になる格好は無理なんで、お料理しやすいスタイルにしたいと……」


 すると手料理というキーワードを聞いた二人の動きが、ピタッと止まりました。


「えっ? 手料理、あなたが。確かにうちの農園の賄いなんかも作っているわけだし、料理は出来るでしょうけど。そう……手料理ね」

「あなたの手料理が食べたい的な展開、マリッサお嬢様……おめでとうございます! この勝負、勝ったも同然ですわよっっ」

「やったわぁ! 今日はマリッサの婚約決定前祝いよぉおおっ!」


 何を勘違いしたのか思わず、盛り上がるお母様とメイド長。けれどこの二人の淑女の女の勘はほどほど当たっていたようで、私は本当にこのお食事会で婚約を決めることになるのです。


 ――ただし、契約結婚ですが。


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