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03


「それにしてもお菓子の方も上等ですが、この指輪、仮面夫婦にしては随分と奮発したんですね」

「いやいや、妖精国産の特上プラチナに魔法誕生石の指輪なら、貴族の婚約業界では常識と言えるでしょう。我々の果てしなく続く【愛】をアピールするためにも必須かと」


 黄金色のお菓子、即ち金貨の存在を確認したのち、さっそく左手薬指に婚約指輪を嵌めてもらいます。仮面夫婦には勿体無いほどのサファイアがきらりと光って、契約結婚ぶりに拍車を掛けます。


(綺麗、こんな妖精の国でしか産出できない上品なプラチナのリング、しかも魔法のチカラを宿す誕生石付きで。細工もいちいち凝っていて凄いなぁ。あれっ裏側に名前が記してあるんだ)


「この異世界の貴族って、本当は優雅な暮らしをしているんですね。私、以前もお話しましたけど、前世でも今世でもお金の苦労ばかりで。一生、いえ何度生まれ変わっても、こんな素敵な指輪を貰えることはないと思っていました」

「一般的に人間は、前世での業を引き継いで生まれてくるとされています。ですが、あなたの業は今世でスッキリと解消されることでしょう! あなたも僕も、前世の記憶持ちという共通点がある。この美しくも時代錯誤な異世界で、同じ地球での転生者である我々が夫婦になることは必然。例え、契約結婚であってもね」


 前世では家業の工場経営が危うくなり、学費を自分で賄う苦学生だった私。そして恐ろしいことに今世でも、自転車操業のように田舎の畑を経営する辺境伯のご令嬢に生まれ変わってしまった。この契約結婚は、私の輪廻転生の歴史をガラリと変える画期的な、玉の輿プログラムなのです。


「よく似合ってますよ。これだけ上手くやれば、誰も僕達が『契約結婚』だなんて気づかないでしょう。では、おやすみなさい」

「ええ。おやすみ……んっ?」


 気分が盛り上がっているのか、仮面夫婦であるはずの旦那様から、甘く柔らかな口づけをされてしまいます。小鳥さんのような可愛いらしい口づけが、次第に深くなり……あれっ?


「あ……んっ」

「ふっ……慣れていないのかな? 息継ぎを上手くして、ん……」

「……ん、ん。ちょ、ちょっと待ってください。あのこれ、契約結婚ですよね?」


 びっくりして、慌ててクライン公爵を引き剥がすと、当然のようにポカンとした顔で私を見つめて意図を説明し始めます。


「はい。けど、結婚式のために口づけは、練習しておいた方がいいですよ。あと、使用人を黙らせたい時とか。では、そろそろお風呂の時間ですので」


 ちゅっ。

 今度は軽く、ほっぺたにキス。


(なんていうか、ほっぺたのキスは結婚式では必要ないだろうし、練習いらないんじゃないかな?)


 キス現場を目撃してしまったばあやさんが『あぁっ公爵様もついに、好きな女性が出来て、嬉しい限りですっ』と涙を流す始末。


 ぽぽぽぽぽっ!


 と、思わず顔が赤くなっていく私を見ると、クライン公爵はちょっと意地悪そうに微笑んで。『初めてのキス、ご馳走様でした』と、イケボをアピールしながら耳元で囁いて退室されました。


 自然の流れでファーストキスを奪われてしまい、『契約結婚』ってどんなだったっけ。と、ここまでの流れを懸命に思い出すのでした。


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