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04 気がつくと更に色々説明していた私

説明回の続きです。色々、設定が必要になって時間かかりました。

 途中乱入してきたウェスさんは今、枕を抱きかかえて眠っている。

 少しいびきが大きくて心配だったけれど、リードさんいわくいつもこうだから問題ないそうだ。


「――さて、色々ありましたが、改めまして。チェスカ、結界について教えていただけますか」


 仕切り直しのつもりなのか妙な口上をのべるリードさん。

 いや、それ逆にやりにくいです。困っているとリードさんは少し考えたあとに簡単な質問をしてくれた。


「そうですね。じゃあ、まずチェスカにとって結界とはどういうものですか?」


 うん。それなら答えられそうだ。結界とは……そうだなぁ。


「魔法に代わる便利なものでしょうか。子供の時に結界を使えるようになって、冒険者になるまでは、ずっと結界の使い方を模索してました」


「模索?何でまた」


 不思議そうな顔をするリードさんに私はどう話したものかと悩む。

 あれって周りに魔法や結界に詳しい人がいなかったのと、子供特有の好奇心の発露というか、無知ならではの暴走というか。ぶっちゃけ黒歴史なんだよね。変に思われないといいけども。

 私は大きく深呼吸をすると覚悟を決めて話し始めた。


「ええと、そもそもお恥ずかしい話。私が結界に異常に力を入れたのはトイレのためなのです」


「は?トイレ?」


 間の抜けた表情に少し、心が折れかける。

 うん。あのね。そういう反応だと思ってた。だから、あんまりこの話ししたくないんだよね。えいやと一気に話す。こういうのは一気に説明したほうがダメージが少ない。


「えっと、冒険者になる前は私はスォルティモア教系列の孤児院におりまして。おまじないの結界をシスターから教えてもらったところ発動しちゃって、魔術持ちってことが分かったんですよね」


 スォルティモア教っていうのは、この国で広く信仰されている宗教ね。私は孤児院育ちなのにあまり信じてないけども。


「まじないが発動とは初耳です。結界がどういったものか分かりませんが、強い力を持っているようですね」


 私はあははと笑った。褒められたのかな?なんか恥ずかしい。


「村の畑に植えたカボチャに猪が寄ってくるんで、害獣避けのおまじないを教えてもらって子供たちで作ったんですよ。そしたら私のやつだけおまじないの紐で囲った範囲に見えない壁ができちゃって、大騒ぎになりました」


「それは……凄い。その見えない壁を結界と教えてくれたのはシスターなんですか?」


「いえ、神官様です。おまじないの元になったのは古い時代の土地神様の魔法だったのではないかと。村には結界を使える人はいなかったので詳しいことは分からないけれど、魔力があったから古い言葉の結界が発動したんじゃないかって話になりました」


 神官様、かなりしどろもどろだったし、大分こじつけな気もするんだけどね。子供心に適当なこと言ってるって思ったもんなぁ。


 リードさんも何か思うところがあるのか考え込んでいる。


「ふむ、チェスカの周りにはあまり結界の力に詳しい人はいなかったようですね。そのまじないとはどういったものなのですか?」


「シスターの故郷に伝わるソルの獣避けのやつです」


「ああ、太陽神ソルを信仰していた人たちですか。それのまじないか。ナグダの北方辺りは昔は多かったと聞いてますが」


「はい。あんまり珍しくもないおまじないだって聞いています」


 獣を避けたいところを紐やロープで囲い、古い言葉で『いたずらするやつはいなくなれ』みたいな言葉を唱えるだけ。わりと色んなところで似たようなことをやってる人を見たことがある。


「それに、今は古い言葉を使わなくても結界は使えますよ。たぶん、おまじないはきっかけであってあまり関係ないんじゃないかって思っているんですけど」


「そうですね。しかし初めて結界が発動した環境には興味があります。その時に魔術師がいれば、何かしら分かったかもしれないのですが……」


 そう言って、リードさんはチラリとウェスさんのほうを見た。丸まった背中がピクリと動いた気がする。

 あれだけも大きかったイビキもおさまっていた。……もしかして起きてる?


「古の神の力なのか血によるものなのか分かりませんが、魔術師の術系統と違うことは確かです。古代魔法の可能性もありますね」


「古代魔法ですか?」


「太陽神ソルや月女神ルナなどの古い神を信仰していた頃の人々が使っていた魔法です。現在は失われていて一部の特殊な研究をしている魔術師くらいしか知らないでしょう。貴女の結界はその古代魔法かもしれない。しかし、それから貴女が独学で結界を練習したということは導く者が誰もいなかったということですよね。残念です」


 リードさんはそう言っているけども、私は全然、ピンと来なかった。古い神様なんて物語の中でしか知らないし、太陽神を信仰しているわけでもない。私が使っているのは本当に古代魔法なのだろうか?

 そんな私を見てリードさんは苦笑して先を促した。


「すみません。古代魔法かどうかなんて今の段階だと分かりませんよね。それより、何でしたっけ?ああ、そうだ。トイレのお話でした」


 おおっと、話がめちゃくちゃそれていた。私たちは二人揃って笑う。なんだか今夜でリードさんとずいぶん打ち解けた気がするな。


「あ、そうです。えーと、結界自体はおまじないの言葉を使って何度か同じことをするとコツを掴みました。そしたら、おまじないの言葉なしでも使えるようになって。それを見た神官様が、こんなに簡単に結界が使えるのだから魔力も強いだろうっておっしゃったんです」


「それ思いっきり素人の発言ですね」


 私は苦笑いした。あれで調子にのってしまったんだよね。


「それで魔術師になれば色んな魔法が使えるって聞いので、孤児院を出たら冒険者になろうと思ったんです。けれど孤児院の子供はスクロールなど買えないので児童書で冒険譚ばかり読んでました。すると冒険の妄想ばかり育っていって……」


「ああ。分かります。私も子供の頃はそんな感じでした」


 リードさんは朗らかに相づちをうってくれる。

 魔力や剣の才能を持っていても、子供の頃からちゃんとした訓練を受けたり勉強したりできるのはほんの一部の人たちだけだ。だから子供はチャンバラごっこや冒険譚で英雄や冒険者にあこがれるのだ。あるあるネタなんだろうなぁ。


「そこで私は絶対に嫌なことを想像しました」


「嫌なこと?」


 きょとんとした顔のリードさん。これ本当に馬鹿らしいから笑われないといいんだけどな。


「それは冒険中にトイレで恥ずかしい死にかたをすることです」


「は?」


 リードさんの目が点になった。私は慌てる。


「いやいや、子供でしたからね。子供。山の中とかで、こうお尻丸出しの時にオークに殺されるとか嫌でしょう?」


「ええと、まぁ、そうですね」


 引きつり苦笑い、いただきました。相手の反応に焦って言葉を重ねる。

 どうしよう?話せば話すほどリードさんに呆れられている気がする。


「あの頃は本気で嫌だと思って、唯一発動出来た結界で色々と実験したんですよ。それを8年間やりました」


「8年間ですか?」


 子供だったんだもの。

 私はナップサックから丸い輪っかを手に取り、身振り手振りも交えて説明する。


「この輪っかを地面に置くと穴が空きます。で、四方にニワトコの木のピンを刺して壁を作ります。すると、完全に安全なトイレができるのです!」


 勢いで言い切ったものの、部屋に奇妙な沈黙が落ちる。


「結界を解除するまで、絶対に壁は無くなりませんし、用を足して輪っかを取ると自動で埋まります!後片付けの面倒もありません」


「…………………………」


 リードさんは私の顔と手もとを交互に見て、何か言葉を探しているようだ。

 沈黙が痛い。え?どうすんの、この空気。


「ぶっ、ぶはっ。ぶひゃひゃひゃひゃ」


 突然、後ろから変な笑い声が響いて私もリードさんも驚きつつ振り返った。

 先ほど寝たと思ったウェスさんだった。咳き込むほど笑ってる。


「お、おまっ。ぶはっ。すげぇな。明日それ使ってみようぜ。8年ものの便所かよ。ぶ。ぶはは、もう無理……」


 むせたウェスさんを介抱しながらリードさんが気を使ってくれる。


「いやでも、クエスト中に一番、警戒が薄れるところですし、ことに女性にとっては大事な問題なのでは?」


「げ、ゲホ。えー?そりゃ、そーだけどよ。ブ、クク……」


 ツボにはいったのかむせながら笑うウェスさんに居たたまれなくなってきた。


「あの。私も冒険者ギルドに行って他の冒険者に会って、何かずれてるなーとは思いました。はい」


 私は小さくなった。だって8年間トイレの結界を極める練習をしていたくせに、いざ冒険者になって魔法を覚えて使おうとしたら発動しなかったのだ。あのファイヤーアローですら。

 ……無駄なことをしたとは思わないけれど、もう少し何とかならなかったのだろうか過去の私。


 ところが、ウェスさんは笑いを引っ込めて私に言った。


「でもさ、こいつアホだがすげぇ面白い異能持ってるじゃん。ランドが勧誘するはずだわな。その輪っかを置いたところに穴?普通はできねぇ。木の棒で囲った範囲に壁もな。トイレと言うからには壁は外から見えないようになってんだろ?」


 おお?何か風向き変わった?


「はい。そうです」


「フォルスに戻る道中、色々検証してみようぜ。マジックシールドとどっちが強度があんのかとか使い勝手とか」


 ウェスさんは身を起こしてリードさんにもらった水をちびちび飲んでいる。酔いは多少醒めたのかな?


「そうですね。聞いていると結界と言いつつ、私が知っている結界とは別物な気がします。物理的な壁になったり、穴を空けるような結界なんてありませんよね」


 リードさんは視線を上に向けて何やら考えているようだ。そして再び私に視線を戻す。


「チェスカ、もしかして結界の中で生活魔法を使ったりしてませんでした?」


 私はびっくりした。


「え?使ってますけども何か変ですか?」


 洗い物は洗浄結界と呼んでいるけれども、結界の中に汚れ物を入れて汚れを洗浄する魔法を使っている。これはゴミや汚れをフィルターにかけて除去するイメージなんだけども、魔力は少ししか減らないので何の属性を使ってるかとか分からない。濡れたタオルなんかを乾かしたりもできる。これは結界内の中で温風をあてているのだ。

 オークトロールたちを結界に入れた時は、空間を遮断して血の匂いが外に漏れないようにして温度も下げた。


 何だろう?結界の中に限定すると結構、色々できちゃうのだ。葉っぱや布を燃えないようにとか濡れないようにとかもできる。


「こいつさ。周りに魔法使うやつがいなかったから、自分が特殊だと思ってねぇよな」


 ウェスさんが呆れたように呟いてリードさんが笑った。


「冒険者は自分の力を公表するもんでもないですしね。変わったスキルや能力は広まりにくいものです。チェスカのように普通だと思いつつ、すごいことをしている人間って結構いるんじゃないですか?」


「まあ、ほんとに使えるかどーかは試してみねーと分かんねーけどな」


 ニヤニヤと笑いながらこっちを見るウェスさんに嫌な予感がして、私はぶるりと震えた。


「おいおい親交は深めてくとしてさ。とりあえず俺らは戦闘の連携とあんたが何ができるかを知らねぇとな」


「チェスカとはレベル差がありすぎるので、もう少しゆっくりと思っていましたが明日から頑張りましょう」


 ……何を?めっちゃいい笑顔のリードさんに私は不安しか感じない。


「リードはさ。結構、完璧主義なスパルタなんだよな。あんたも覚悟しといたほうがいいぜ」


 こちらもものすごい、いい顔のウェスさん。

 どうしよう?私、二人がこんな機嫌よさそうなの初めてみたよ。


 結局、その日はそのままお開きになって私が女部屋に戻った。

 部屋にはニーナさんもプリムも戻っておらず、ランドさんも夜通し飲んでいたみたいだった。

いつも冒険者のトイレ問題が気になっています。

ダンジョンとかどうしてるんでしょうかね?日本人が転生したらトイレとお風呂は気になりますよね。

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