13話
昨日投稿するのを忘れてました(´・ω・`)
「おうおう、妖精王から亜人と魔族について話があるたァ聞いたが、なんでこんな所に魔王がいるんだァ?」
あの後ハインリヒが呼んだ二人のうちの一人、ドワーフ族のヴラフォスが部屋にやってきた。
彼は入るや否やクロノスを視界に入れると隠すことなく顔をしかめ、背中に背負ったハルバードに手をかける。
「こど……、おと、な……?」
ユースティアナは身長が140か145㎝くらいしかないひげ面の男を怪訝な顔で見る。
白髪交じりの鳶色の髪を後ろになでつけ、同じ色のひげを胸下あたりまで伸ばし、くくっている。
その小さな身長に反し体は筋骨隆々で、服から見える肌には無数の傷が見える。
「あー?……ンでこんなとこに嬢ちゃんがいるんだ。」
ユースティアナの声に初めて気づいたのかこちらを見たヴラフォスが訝し気に見る。
その鋭い視線にびくりと身体を震わせたユースティアナをそっとクロノスが隠す。
流石にその挙動の意味がわからないヴラフォスではなく、気まずげに視線がそらされる。
しばらく気まずげな空気感が漂ったが、ヴラフォスががりがりと頭を掻き、ユースティアナのもとに近づいてくる。
きゅっとクロノスの服を握りしめる少女に余計に罪悪感が募った。
「あー……、わりぃな嬢ちゃん。脅かすつもりはなかったんだが…。俺はドワーフのヴラフォスだ。嬢ちゃんはなんてーんだ?」
厳めしい顔ではあるもののこちらを気遣う様子のヴラフォスにユースティアナは警戒心を解く。
「あ、ユースティアナ、です。」
「そうか、ユースティアナたぁいい名前じゃねーか。」
怯えられないようにそっと手を伸ばし頭をなでるその様子にハインリヒが咳ばらいをする。
「んんっ。ヴラフォス、ユースティアナとは初対面でしょう。きちんと挨拶したらどうです。」
「ん?お、おう。そうだな。」
そういうと右手をこぶしにし左手で覆い、首を垂れる。
「ボーデンテーレの民、ドワーフ族の長、ヴラフォスだ。こんな見た目だが何もおびえるこたぁねぇ。ユースティアナに神の加護を。」
そういうとぶんっと豪快に左腕を振りぬく。その姿に違わぬ荒々しい魔力がユースティアナを包む。
「ん。よろ、しく……!」
ほわっと笑うユースティアナに場の空気が和んだ時、コンコンと扉をノックする音がする。
「妖精王様、ミネルバだよ!」
「ああ、入りなさい。」
ガチャリと扉を開けて入ってきたのは肩くらいまでの燃えるような赤い髪を持つ女性だった。
「まぁ…、魔王殿がこの街に滞在しているのは知っていたが、まさか人間の少女がいるとは思わなかったね。」
そういうとくいっと顔にかけた丸メガネを押し上げる。
しかしユースティアナの視線の先にはその女性の髪と同色の太いしっぽがあった。
「とか、げ………。」
「うん?なんだ、君はドラゴノイドを見るのは初めてかい?」
そう、その女性のしっぽにはドラクーンのような鱗が生えていた。そして顔の、特に目の周りにも同じように鱗が生えていた。
「うん!ではドラゴノイドという気高き種族を知らない君に教えてやろう!!」
そういうとすぐに右手を拳にし左手で覆う。
「あたしは気高きアゴニブールの民、ドラゴノイド族のミネルバだよ!!ここアコルハイトにある学園の学園長も務めてるよ。君が学園に入学できる年になればくればいい!うちは亜人も人も魔族も分け隔てなく知識を求めるものは大歓迎だっ!!君に神の加護をっ!!!」
ぶわっと大仰にふりぬいた軌跡には情熱的な赤い魔力がうごめいた。
「ところでっ!!魔王殿はわかるが君はいったい誰だい?私の情報網に引っかからないということは、君は新顔だねっ!!?」
バッチーンと両手の指を鳴らしてそのままユースティアナを指さす。
「う、あの…。」
高いテンションについていけずうろたるユースティアナにクロノスが苦笑いを浮かべ腕の中に抱き込む。
「ミネルバよ、おぬしの何事にも動じぬその精神は感服だが、この子にはもう少し抑え気味にしてはもらえぬか?驚いておる。」
「うん?ああ、魔王殿がそういうのであればそうしよう。しかし、魔王が子育てをしているとはまた珍妙だな。」
ミネルバは顎に手を当て心底不思議そうにそういった後、さてっと手を打ち気持ちを切り替えハインリヒの方を向く。
「それで!?一体妖精王様は今度はこのあたしにどんな知識をもたらしてくれるのかね!!?」
キラキラと輝く瞳でハインリヒに詰め寄るが、うっとうしそうに押しのけられる。
「正確には今日の話はそこの魔王からの情報ですよ。」
くいっと顎でクロノスを示すと、ミネルバも、横で胡乱気な瞳でミネルバを見ていたヴラフォスも一斉にクロノスを見やる。
「そのあたりも含めての話し合いですよ。座りなさい。……ところで、あなたの方は誰も来ないのですか?」
自分の横にミネルバとヴラフォスが着席したのを見てからそう切り出した。
「む?ああ、すでにカプリコーンとアルカードを呼んでおる。今日はユースティアナもいたからな。あまり人が多いと緊張するだろう?」
クロノスは事も無げにそう言って、もう一度使い魔を飛ばすと数秒とかからずカプリコーンとアルカードの二人がクロノスの座るソファの後ろに顕現する。
「お呼びでしょうか?」
「………。」
恭しく礼をとるカプリコーンと、無言ながら首を垂れて控えるアルカード。
「なんというか……、統率が取れていますね…。」
ハインリヒが自分が呼んだヴラフォスとミネルバの騒々しさとくらべ苦笑いをする。
「魔族は亜人と違い真に一つの種族だからな。強いものには絶対服従だ。おぬしは亜人の中で随一の実力を誇っていたとしても種族が別だからな。」
「待ちたまえっ!その言い方だと、もしや君は種族の成り立ちを解明したというのかね!!?」
「何を今更言ってんだ。魔王っていやぁ世界最古の個体だろ。成り立ちを知ってたっておかしくねぇ。」
「何!?しかし最古イコール博識とは結び付かないであろう!!?」
ぎゃーぎゃーと言い合う亜人側の二人を見てハインリヒが大きくため息をついてこめかみを抑える。
「ヴラフォスと、ミネルバ……けんか…?」
ハインリヒが注意しようとしたその時、クロノスの腕のなかのユースティアナが悲しそうにそういった。
「っ!!け、喧嘩じゃねぇ!!俺とミネルバは、アー、その…。」
「あたしとヴラフォスは別に喧嘩してたわけじゃないよ。いいかい、ユースティアナ。学者っていうのはね、時には激しく意見を交わすことがあるのだよ!!君だって好きなものがかかわるとこうっ…気分が高まってしまうことがあるだろう!!?」
言葉が見つからず気まずげに言葉を探すヴラフォスと対照的に、手をわさわさ動かして焦ってはいるものの何とか言葉を探しそう説明するミネルバ。
「気分が、高まる……。」
ミネルバに言われた言葉を頭の中で反復し考える。
「私が、クロのこと好きなのと……同じ?」
好きなものと言われて一番に出てきたのがクロノスだった。
そのかわいらしい質問に思わずクロノスがユースティアナをぎゅっと抱きしめプルプルと震える。
「うん!?そ、そうか。君はその魔王のことが好きなのだな!なら例えばそこの魔王が褒められるとうれしいだろう?」
「んっ!」
ミネルバの言葉に元気よく頷くユースティアナをクロノスはより一層強く抱きしめる。
「ハインツ……うちの子が可愛いっっ!!!」
「そうだな。ハインツと呼ぶな。」
ミネルバとユースティアナの会話の邪魔にならないように小声で悶えるクロノスにハインリヒが冷たく返す。
「それでは君にもう一つ質問だ。君の大好きな魔王を誰かにけなされたりしたらどう思うかね?」
ミネルバも優し気に表情を緩めてそう尋ねる。
「クロは、悪い人じゃ…ないもん……っ!」
思わず力強く否定するユースティアナにクロノスは涙が出そうになる。長年生きてきてこんなにもキラキラした瞳で好意を向けられたことがあったか?いや、ない。
「ハインツっっ!!」
「うるさい。ハインツと呼ぶな。」
感極まったクロノスの瞳がわずかにきらりと光る。
それをハインリヒがめんどくさそうに返す。
「君は、ほんとに…。いや、まあそのように自分と意見が違えば好きだからこそ言葉を荒らげることが事があるのだよ。」
「っ!!……わかった!」
「うん。君は呑み込みが早いようで素晴らしいね!魔王殿、この子の入学先が決まっていないのであればぜひあたしの学園を利用してくれ!!」
「う、うむ…。約束しようっ!!」
ユースティアナのかわいらしさに悶えていた魔王は図らずとも今の発言を導き出したミネルバに固く約束をした。
「おいおい、いったいいつになったら話し合いってーのができるんだァ?」
呆れた声色のヴラフォスの発言に皆思い出したかのようにぴたりと動きを止め席に着いた。
「んんっ!!とりあえず。先ほどの魔王との対談で決定したことを話します。」
「今回亜人側との対談で、魔族と亜人との間の技術交流が行われる。我々魔族側からはアパルクライスの守護を担うアルカードを出す。魔族の技術者を亜人の国に運ぶもよし、亜人の技術者をアパルクライスに招待するもよしだ。」
「はァ!!?」
「……御意。」
クロノスの言葉にヴラフォスは声をあげて驚き、アルカードも目を見開いたものの、静かに賛同の意を示した。
「おいおいおい!!そりゃぁ、俺は別に鍛冶場にこもって新しい技術が知れるってんなら構わないけどよ。他のドワーフの連中は納得しねぇぞ…。」
ヴラフォスは一瞬新しい技術への欲でぐらりと揺れるが、族長として他の者たちのことを考えると渋い顔になる。
「ふむ。そこにあたしが呼ばれた理由があるというわけだね?」
「ならば私はミネルバ様と共闘する、というわけですか。」
顎に手を当て考えるミネルバと納得した様子のカプリコーン。
「そうです。あなた方には魔族の成り立ちと神代の話を広めていただきたい。ミネルバの学園でだれか魔族の教員を雇ってもらえますか?」
「神代の話!!!素晴らしい!!魔王殿は古の知識の宝庫だとは思ってはおりましたが、まさか本当に知っているとは!!」
立ち上がり腕を広げ天を仰ぐミネルバはそのままの勢いでダンッと手を机にたたきつける。
「そこで君がその教師候補ということだねっ!!?歓迎しようじゃあないか!!!」
「ええ、お願いいたします。」
腕を大きく広げて歓迎の意を示すミネルバとは対照的に恭しく礼をするカプリコーン。
「座りなさい、ミネルバ。今回はまず学園で魔族を悪とする考えを正しましょう。そして二次創作として舞台演劇や読み物として神話を世に広めます。あとでどういった話を広めるかについてはこちらからお話しします。」
「心得たよ!!」
「かしこまりました。」
ひとまず全員自分の役割を納得したのかミネルバはカプリコーンを、ヴラフォスはアルカードを見て、これから得られるであろう新しい知識に目をぎらつかせ、その目を向けられた二人は思わず身をすくめた。
「さて、魔王よ。これから見る世はあなたも私も見たことのない世界となりますね。」
そう言って笑うハインリヒの顔にもまた、好奇心と喜びを顔に浮かべている。
「みんな、たのしそう……?」
「うむ…。亜人は学者気質や職人気質の者が多いからなぁ……。」




