11話 神話の話
神話のお話です。
神様の名前は覚えなくて大丈夫です。
あるところに唯一神がいた。
その名前も、その神が何処から来たのかもわからない。ただわかっているのはこの世界を作り賜うたという事だけだ。
その唯一神は、ある日戯れにいくつかの神を生み出した。
世界を生み出した時に使った地水火風の神
昼と夜を作る時に使った闇と光
この世の森羅万象を定めるのに使った真実と正義
神々を生み出した時に使った命
そして、その神々を動かす時に使った時
その10体の神々が原初の神々と呼ばる。
名はそれぞれ
地の神、ボーデンテーレ
水の女神、ヴォダマイヤ
火の神、アゴニブール
風の女神、ヴィエトル
闇の神、オスクロハイト
光の女神、シェーンオール
真実の神、ヴァールハイト
正義の女神、ユスティシー
時の神、クロライカス
命の女神、ヴィアツァリウ
それぞれの神には相性の良い組み合わせがあり、長い年月を過ごすうちに番となり子を成した。
地と水、火と風、闇と光、真実と正義そして命と時。
神々もまた他の生物のような母体による胎生ではなく、魔族と同じように魔力が凝り固まり生まれてくる。
女神の神力、所謂魔力に男神の神力を混ぜることにより新しい神々が生まれた。
地と水の神の間には成長の神、グランセール
火と風の神の間には愛情の女神、アシュクメイレ
闇と光の神の間には安らぎの女神、アコルニア
真実と正義の神の間には戦いの神、ベルムゲーラ
命と時の神の間には死の神、ライデントート
皆思い思いに暮らしていたが、その輪から外れた者がいた。死の神ライデントートだ。
最後に生まれた死の神は、その性質ゆえ触れるものを殺してしまう。しかしその力をコントロールするにはあまりにも未熟すぎたのだ。
唯一死の神に触れることができたのは時を司る神だったが、その性質ゆえ時間を止めて触れることはできてもコントロールを教えてやることはできなかった。
時の神は命の女神の分まで死の神を愛し、触れ合い、時を共に過ごした。
次第に死の神は、自分と唯一触れ合うことの出来る時の神が、自分とは違い他の神々と共に過ごす姿を見て嫉妬心を抱き劣等感を抱くこととなる。
その思いは日に日に増していき、いつしか死の神の精神はおかしくなっていく。
そして、時の神が一等大切にしている命の女神を手に入れれば、自分も時の神と同じように、他の神々と共に過ごせるのではないのかと、愛してもらえるのではないのかと、錯覚してしまった。
ついにその狂った心を押し止めることが出来なくなった死の神は、母である命の女神を襲ってしまう。
追いかけ、追い詰め、手が触れたその時、死の神の凶悪なまでのその力は命の女神を死へと追いやった。
愛する妻を殺された時の神は、戦いの神と共闘し、死の神の時間を永久に止め、海の底に封印してしまった。
殺さず封印したのは時の神から死の神への最後の親心であった。
そして命の女神の時間を巻き戻し、なんとか助けようとしたのだが無くなった魂は還らず、ただただ息をするだけの骸が残ったのだ。
せめて命の女神を後の世に残そうと、神々は命の女神の身体を切り分けて新たな生命体を創り出した。
地水火風闇光の六神が臓器を切り分けて創り出したのがそれぞれの神々の特色を引き継いだ亜人達。
真実の神が心臓を切り出して創り出したハイエルフを筆頭とする妖精族の誕生だ。
残った身の部分を正義の女神が切り分けて創り出したのが人間族。
亜人のように強い特性を持たない彼らは、力の代わりに自分で考える個性が与えられた。立場によって移ろう正義感のように、人の魂はその生き方によって色が移ろうようになった。
しかし死の神の力に犯された肉体から生まれたその生物たちは、いつか死にゆく運命にあったので、成長の神が命に力を与え、愛情の女神がその力を次の代に繋ぐ術を与えた。
真実の神だけはいつまでも亜人達を正しく導けるようにと、自分の創ったハイエルフを真理につなぎ、世界が終わるその時まで生き続けられるようにした。しかし、その過程でハイエルフは活動を始めるまでにしばし眠りにつくことになる。
正義の女神は誰かに愛されたくて、認めて欲しくて、その気持ちが歪んで罪を犯してしまった死の神を哀れに思い、もし死の神が自分で力をコントロールできるようになった時に神々の世界に帰属できるように道を残した。
その道から滲み出た死の神の神力で他の生物が傷つかないように安らぎの女神は自らの神力をそれに混ぜ生命体を創り出した。そうしてできたのが魔族である。
死の神と戦いの神と時の神が戦った後に残った行き場のない死の神の大量の神力に、安らぎの女神が神力を混ぜ、最初の魔族を創り出した。
安らぎの女神はその魔族に、もしも死の神がコントロールを会得しないまま封印を破った時にこの世界の誰よりも強い魔力を宿したその身をもってそれを止めることと、神に準ずる存在として神々が創った命の女神の遺児である亜人や人間が潰えることのないように見守ることを約束させ、この世界の成り立ちと神代の終焉の話を語り、これから続く果てしない時間を自ら封印するという形で眠りについた。
その後神々は祖である唯一神が帰っていった神の世界に向かい、地上には封印された死の神と、その神力に自分の神力を混ぜ死の力が世界を滅ぼさないようにという役目を担った安らぎの女神だけが残ったのだった。
これが神々の物語である。




