7話
「さて、ここが本日あなた方を歓待する宿ですよ。」
しばらく歩いてついた先には白塗りの壁でできた西洋の礼拝堂のような建物があった。
その建物には光るコケや蔦の植物などが生えており、しの白い壁に微かに反射して美しい。また、ルスフェトの光珠を使ったシャンデリアのような間接照明がキラキラと天井を彩っている。
「すごいっ!!きれい……っ!!!」
亜人のスタッフ達は、手をぱちぱちと叩き喜ぶ幼子にその宿で魔王の到着を今か今かと青ざめさせていた表情を緩め、
「そうか、ユースティアナはこういったものが好きなのか……。」
そう言って腕の中の幼子を撫でる優しげな魔王を見て目を白黒させ、
「申し訳ございません。大変不躾なお願いとは存じますが、本日の晩餐の給仕にこちらのメイドを使ってもよろしいでしょうか?何分ユースティアナ様は人見知りをなさる性格でございます故…。」
「ひぃっ!あ、は、はいっ!!!そ、そのように手配いたしますっ!!」
礼儀正しく接する山羊の頭蓋骨を被った魔族に丁寧にお願いをされ驚いていた。
噂に聞く極悪非道の魔族とは伝説上の言い伝えだったのかと言いたくなるくらい自分たちの想像より比べ物にならないくらい優良客にスタッフ達は良い意味でふっと気を抜き、最高のおもてなしをしようと決意した。
大広間に用意されたテーブルにクロノス、ユースティアナ、ハインリヒの3人が席につき、カプリコーンとキキョウはクロノスの、デイジーとローズはユースティアナの側で給仕として動いている。
長いテーブルの端っこを3人だけで使うこの作法にユースティアナは初めこそもじもじとしていたが、魔王城では食べなれない亜人の国の料理が出てくると次第にそちらに興味が移っていった。
港のあるアシュクマイヤから馬車で半日程のところに位置するシェンビスクでは、魚介類はもちろん人間の国から輸入する珍しい香辛料なども豊富に揃っているのでユースティアナが食べたことのない珍しい料理が多数出てきた。
デイジーが少しずつよそった料理に舌鼓を打ちながら食べる幼子の可愛らしさは魔族のみならず亜人にも通用するようで、皆微笑ましそうにその姿を見ていた。
しかも、まずクロノスが食べその料理がユースティアナの好みに合うかを判断し、その反応を見てデイジーがユースティアナの皿によそっていくという徹底ぶり。
ただ1人その事に気がついたハインリヒはなんて過保護な奴らなんだと若干引いた目でそれを見ていた。
「それで?アコルハイトに入る前に個人的に今回の来訪に目的をお聞きしても?」
ディナーを食べ終わってうとうととし始めたユースティアナを横目にハインリヒがそう切り出した。
「わざわざ敵地に視察に来て、まさかその幼子に美しい景色を見せるのが理由でもないでしょうに。何をしたいんです?」
先程までユースティアナに接していた時とはうってかわり底冷えのする声で問い詰める。明らかにこちらを警戒するハインリヒのシルバーブルーの瞳にゆらりと魔力が揺らめいた。
「なんということは無い。亜人の国との国交正常化のためだ。」
「っ!!何をっ。生まれ落ちてこれまで他種族と関わりあいを持とうとしなかったあなたが今更何をしようと言うのですか。」
読めない魔王の思考にいっそう眉間にしわを寄せて睨めつける。
世界で唯一のハイエルフであるハインリヒにはただハイエルフにのみ備わったある特殊スキルを持っていた。
真偽眼
その名前の通りその目で捉えたものの真偽のほどを視ることが出来る。
発言が嘘か真かをはっきり視ることができるのだ。
今まで欲深い人間共渡り合う時に幾度となく使った魔法ではあるが、まさかそれを魔王に使うことになるとは夢にも思わなかった。
「今更、か。確かに今まで交流は持ってはいなかったが時代とは移ろうものであろう。……強いていうなら、この子やその子供が生きる後世に憂いを遺したくないのだ。なぜ今、おぬしの所に来たのかは、言わずともわかるであろう?」
じっと注意深く見てみたがこの魔王が魔法を使った痕跡はなく、また偽りを述べている様子もない。どうやらこの魔王相手に腹の探り合いをする必要がないというだけでだいぶ気が楽になったハインリヒは無意識に詰めていた息を吐いた。
「………あなたが言っているのは最近の人間王の動きですか?」
つい2、3ヶ月ほど前のことだ、人間側で不穏な動きがあった。もともと亜人を攫い奴隷にしていたがその数が急激に増えたのだ。さらには火と地に愛されたドワーフばかりをさらい武器を製造しているという話もある。
「そうだ。ここ数か月の人間の動きはあまりにも不自然すぎる。…戦争でも始めるつもりとしか思えん。」
「やはり…。はぁ………、本当は、魔族と手を組みたくないんですよ。国民からどれほど反発があると思っているんですか。」
ハインリヒはこれからなさねばならないことを考え、頭を抱えたくなった。
「せめてあなた方がなぜ自然発生するのかの理由がわかれば、悪魔の手先だとかいう訳の分からない風潮を払拭してやれるんですけどねぇ。」
どうやって亜人の魔族に対する悪いイメージを無くすかについて考えていると、船をこいでいた状態から完全に眠りに落ちたユースティアナをなでていたクロノスがすっと手をあげる。
「その理由、余は知っておるぞ。」
「………そういえばあなた神代に発生した世界最古の個体でしたね。」
投稿に関してのお知らせです。
今まで毎日投稿していましたが、もう一個の方の連載を再開するにあたり、隔日投稿に切り替えます。
あと、1ページ2000字を目処に書いていましたが、このままだと全然話が進まないので、次回投稿話以降の文字数を4000字を目処に書いていきます\( 'ω')/




