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3話

結局あの老齢の魔族はアヴィアという名をユースティアナから与えられ上機嫌で測定を終わらせいくつかのサンプルの服を置いて意気揚々と帰っていった。きれいな服を着ることにいまだ抵抗を感じるユースティアナはその日から慣れるためにもアヴィアのおいていったピンクや水色のかわいらしいデザインの子供用ワンピースを着ている。

「ユースティアナ!!よく似合っておるぞ!!いつもの白い服もおぬしの魔力とよく合っていて愛らしいがそうやって愛らしい色の服を着ているとより一層可愛らしく見える。」

見るものすべてを魅了するような一級品の笑顔を浮かべていつもの小さな子供に対する反応ではなく、レディーに対するように目の前に跪き賛美するクロノス。

「おとなっぽい…?」

「うむ。きれいだよ、ユースティアナ。」

「うれ、しい!!」

跪いてくれたおかげでいつもよりずっと誓い位置にある大好きなクロノスの首に勢いよく抱き着く。かわいいって言われた!きれいって言ってもらえた!!とご機嫌なユースティアナにクロノスも、いつもより甘えてくれるユースティアナに機嫌よく抱き上げて思う存分甘やかしてやる。


そんなほのぼのとした雰囲気で進んだ亜人の国への準備は問題なく進み、唯一亜人の国の港アシュクマイヤへ船が出ている魔都ベルムトートから船に乗り込んだところまではよかった。

問題は船の中でユースティアナを船酔い防止のために眠らせたことと、亜人側で魔王来訪の伝達がうまく出来ていなかったことだ。

港についてすぐカプリコーンが船を降りると俄にあたりがざわつき始め、ついでクロノスが降りると悲鳴が上がり、キキョウたちに抱えられた眠ったままのユースティアナたちが降りると亜人たちが殺気立ち始めた。

「魔族共めっ!ついに人さらいを始めたか!!今すぐその子供を解放して国に帰れ!!!」

そう衛兵のひとりが叫びこちらに武器を向ける。

「いや、この子は余の……。」

「く、黒髪に赤眼の男、魔王だっっ!!!!」

クロノスが言い終わる前に別の衛兵がそう叫びあたりは騒然とし始める。一般人は蜂の子を散らすように逃げ、衛兵たちは恐怖に戦きつつも武器を構え人間の少女を助けるべく立ち向かう。

これが事の顛末だ。


さすがにそこまで騒ぎが大きくなるとキキョウの腕の中ですやすやと眠っていたユースティアナもうるささに目を覚ます。

「ん…、クロ?」

「な、少女が起きたぞ!!!」

「早くあの子を助けないとっっ!!」

目を覚ましたユースティアナに気付いた亜人の衛兵たちは、下手したらトラウマになりかねない少女の状況に焦りが募る。彼らが玉砕覚悟で突撃を覚悟したその時、信じられない光景を目にした。

「クロ、だっこ…っ!」

「む、今か。」

「……だめ?」

「いや、構わぬ。おいで。」

人間の少女自ら魔王に手を伸ばし、あの冷酷非道と言われた魔王が微笑んだのだ。

唖然とその光景を見つめる衛兵たちの前で人間の少女は魔王の腕の中にわたり、さらには目を細めて気持ちよさそうに頭を胸に摺り寄せ始めた。


「な、なにをやっているんだ!!?こちらに来なさい!!!」

衛兵体の1人がそう叫んで初めて自分たちが囲まれていることに気が付いたユースティアナはその大きな目をぱちぱちと瞬かせ、武器を持った衛兵たちを見やる。

「??そっちに、行けば、いいの?」

状況がいまいち理解できていないユースティアナは困惑しながらもクロの腕から降りる。

いざとなればその場にいる衛兵をすぐにでも始末できるからとクロノスも素直に下におろしてやる。

とことこと自分たちのほうに歩いてくるユースティアナに亜人の衛兵たちは安堵とこの不思議な状況に困惑する。しかし、ユースティアナがちょうどクロノスたちと衛兵たちのちょうど中間地点に差し掛かった時ふとその足を止めた。

「ど、どうしたんだ!?はやくこっちに来なさい!!!」

「ユースティアナ?どうしたのだ?」

衛兵たちとクロノスたちを交互に見てユースティアナは首をかしげる。


「お兄さんたち……どうして、剣を、クロたちに向けてるの?」

「は?」

心底不可解だと言わんばかりの目で訪ねてくる幼子の無垢な視線に思わず衛兵たちはたじろぐ。

「い、いや。魔族は野蛮な奴らだから、な?お兄さんたちは亜人を守るのが仕事なんだよ。」

焦ったようにそう言い募る亜人の衛兵の言葉にユースティアナはその場でバッと腕を広げて叫ぶ。

「クロは、悪い魔王じゃ、ないよ…っ!!」

「っえ!?い、いやしかしだな…っ!!」

「クロは、ひどいこと、しないっっ!!ね、クロ?」

自分が溺愛する義娘むすめにキラキラとした瞳でこんなことを言われて否と言えるか?いや、言えるわけがない。

「ゼッタイシナイ。」

「っっ!!?!?」

人間の幼子の言葉に素直にうなずく魔王がこの世にいるか?いや、この男は本当に魔王か!?

気づけば腕を広げて魔王や魔族たちを守るように立つ少女のそばに魔王が近寄り、その子の頭をなでなでしている。撫でられてる当の本人は嬉しそうに頬を染めている。

ちょっと待て、これ本当に魔王なのか!?!!?

自分たちの知っている魔王はこの世のすべての罪悪の化身で、冷徹無慈悲な存在のはずなのに……。目の前にいるこの男は明らかに凶悪な雰囲気を微塵も感じさせないただの子煩悩な男に見える。

んん??これは自分たちがおかしいのか?

混乱する衛兵たちをよそに


「いったい何の騒ぎですか。」

凛とした涼やかな声が響きわたる。

ざわついていた衛兵たちはすぐさまその口を閉じると、声の主のために道を開け整列する。

そうしてできた道を1人の身目麗しい男がシルバーグリーンの長い髪を風に揺らせてこちらに歩いてくる。まるで芸術品のように整った顔の男性はシルバーブルーの宝石のような瞳でクロノスたち魔族を鋭く射貫く。まるで描いたような眉をぐっと寄せて眉間に作ったしわのおかげで幾分か人間味がある。


「………、妖精王か…。」

「あぁ、やはりあなたですか。魔王。」

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