1話
2章は世界観の説明などが多々入ります。
今回はこの世界の地図を挿絵として挿入しております。
レークォの件が起きてから早数か月、ユースティアナがこちらの世界に来て一年がたとうとしているある日のことだった。
「ところでクロノス様、そろそろユースティアナ様も魔王城内以外の場所を経験するべきだと思うのですが。」
魔王城のテラスにて麗らかな日差しの中ユースティアナを膝にのせ一緒にお茶会をしていたクロノスにカプリコーンは唐突にそういった。
「お城、以外…?」
キョトンとした表情でカプリコーンを見るユースティアナとは対照的にクロノスは難し気に眉を顰める。
「ふむ、確かにそうだな……。そうなるとそろそろ勉強もさせたほうがいいのか?ユースティアナ、おぬしはどうしたい?」
「べんきょう…。」
ユースティアナは少し考えちらっと自分を抱えるクロノスを見上げるとその赤い瞳と目が合う。不思議そうに首をかしげるもののユースティアナが自発的に発言するのを待ってくれる。自分が勉強すればクロは褒めてくれるだろうか、役立たずと罵られた自分もクロや自分に優しくしてくれる魔王城のみんなの役に立てるだろうか。すくなくとも何もしないよりはきっとましなはずだと思ったユースティアナは、
「やるっ!やり、たい…っっ!!」
そう大きな声で宣言したのだ。
恐らくだいぶ前から誰が教えるのか決まっていたのだろう、あのお茶会の場で宣言したその日の午後にはユースティアナの勉強が始まった。まず一番初めに教えてくれたのはカプリコーンだった。
「では、僭越ながら私がこちらの世界の基本的なことを説明いたします。一通り覚えた後は実際に街に出てみてユースティアナ様が疑問に思ったことを中心に細かいところを覚えていきましょう。」
「ん…。よろしく、おねがいします…っ!!」
「ではまず、この世界には大きく分けて三つの種族が存在します。人間王のまとめる人間族、妖精王が保護する亜人族、そして魔王が統制する魔族です。うちと亜人の国の国土面積はほぼ一緒ですが、人間族の国は魔族の国の約四分の一程度しかありません。」
まだ幼く四分の一と言われてもきっと理解できないだろうと思ったカプリコーンはあらかじめ用意しておいたリンゴを四等分しそのうちの一つをユースティアナに手渡す。
「ありがと。……ちいさいの?」
「そうですね。とても狭いですが、その分文明は発展していますよ。そもそも魔族の国は魔族が自然発生するエリア全土になりますので国民の数に対してその国土は非常に広いです。また亜人の国は山岳、大森林、湿地帯、砂漠など人が住むには難しく、亜人が住むには適した土地すべてなのでこちらも必然的に広いです。見たほうが早いですかね。」
しゃくしゃくともらったリンゴを大切そうに食べるユースティアナにカプリコーンは一枚の地図を持ち出してきた。
「このように、世界は一つの大きな大陸といくつかの島々からできていて大陸は南むきにコの字型に形成されています。ちょうど右と左の大陸をつなぐ細くなっているところが魔族の国最西端の都市、アパルクライスです。」
カプリコーンはとんっと一か所だけ細くなっている大陸の上部を指さす。
「この都市から東を東大陸、西を西大陸と呼びます。またこの防衛都市はちょうど人と魔族の領地の境目にあるので交易の窓口となっています。」
「アパルクライスから西の山脈までと西大陸の中部に位置するアゴニエトル砂漠までの狭い地域が人間の国であとはすべて亜人の住まう国ですよ。」
興味深そうに地図をしげしげと眺めるユースティアナにカプリコーンはふっと笑みをこぼす。このくらいの幼子なら集中力が続かず勉強が進まないかもしれないと覚悟していたのだがどうやらユースティアナは想像以上に努力家らしい。
クロノスが勉強をするかと聞いたときもクロノスとカプリコーンの顔をちらちらとみてから勉強したいと言った。きっとみんなの役に立ちたいだとかそういうことを考えていたのだろう。けなげな少女に内心癒されながらカプリコーンは授業を続ける。
「人間族の種類は人一種ですが亜人族は地水火風闇光の六種類のタイプの亜人がおりそれぞれその種に特化した魔法が使えます。一方魔族なのですが一応特定の種類はあるのですがその特徴も得意なこともそれぞれ違います。…魔族の種類についてはおいおい勉強していきましょうか。」
魔族の話になるとより一層興味深そうに聞き入ってくれるユースティアナに、ああやはり自分たちはこの子の中で特別なのだとうれしくなる。
「そうですね、まずは亜人について勉強しましょうか。」
「わかった……。」
その日の夜ユースティアナはカプリコーンにもらった地図をベッドの上で眺めていた。
「ユースティアナ、勉強はどうであった?」
「楽し、かった!クロたちのこと、知れてうれしい…。」
頬をほんのりと染めてそんないじらしいことを言う養い子にふっと頬を緩めベッドの上のユースティアナを抱え、その手に持っていた地図をサイドテーブルにそっと置きユースティアナを抱えたままベッドにもぐりこむ。
「嬉しいことを言ってくれる。しかし今日はもう夜も遅い、眠れ。お休み、ユースティアナ。」
「ん。おやすみ、クロ。」




