表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

百合小説とR18ボーダーライン

 最近「小説家になろう」に投稿されたある百合小説が運営から一八才未満には相応しくないと警告を受けるということがありました。問題になった作品は基本的に濃厚な百合キス描写がメインであり性行為そのものは描かれないものです。だからかやはり作者ご本人も読者の多くもR18に相当するとは思っていなかったようで、この警告自体に疑問の声や不当だという声が上がっていました(中には総合ランキング一位作品の中の性行為描写と比較してその扱いの差に納得できないとする声も)。


 今回の件、一見すると運営によるR18裁定の正当性の有無が最大の問題点であるかのように見えます。が、実際のところはこれも「作者や読者の考えるR18ボーダーラインとなろう運営が考えるR18ボーダーラインの間に少なくないずれが生じている」という問題が引き起こした結果に過ぎません。そして、その直接的原因はガイドライン規定の曖昧さにあります。


 実際に「小説家になろう」のR18ガイドラインを見てみましょう。


http://syosetu.com/site/ratingb/


 「R18に対しての判断基準」として挙げられている項目の中で、今回の件に関係する部分は「性的感情を刺激する行為の直接的描写」と「性描写全般」辺りでしょうか。これだけを見てどこまでがセーフでどこからがアウトが判断するのはどう考えても無理ゲーです。あらゆる性描写にはR18指定が必要であると受け取ることも出来ますし、直接的描写でなければ性的感情を刺激する行為があってもR18指定しなくてもいいと受け取ることも出来るわけですから。


 流石にこれだけでは不親切だと運営も分かっているのか、ガイドラインの中では「R18指定が行われていない場合に警告を行う可能性のある例」としてさらに踏み込んで「具体的な性器の描写がある場合」と「明らかな性交の描写がある場合」という二つの事例が紹介されています。なるほど、この二つはダメなんだな……と早合点してはいけません。 よく見てみましょう。この二つの具体例はあくまでも「警告を行う可能性のある例」なのです。決して「警告をする例」ではありません。この二つの例がある非R18指定作品があっても、運営は警告することも出来るし、警告しないことも出来るのです。おお流石、運営汚い。


 「こんな汚い運営のなろうなんかにいられるか! 俺は別のサイトに行くぞ!」となる方もいるかも知れませんが、正直な話、ガイドラインの曖昧さに関して言えばカクヨム( https://kakuyomu.jp/legal/guideline#expression )もアルファポリス( http://www.alphapolis.co.jp/faq/#help0601

)もツギクル( https://www.tugikuru.jp/terms/tugikuru )も大差ありません。pixivにいたっては小説向けガイドラインすら見当たりませんでした(探せばどこかにあるのかも知れませんが)。もちろん運営が違えばガイドラインの運用の仕方も違うでしょう。なろうではダメだったものがR15でOKと受け入れられるという事もあるかも知れません。ですがそれは必ずそうなると約束されたものではありませんし、どのサイトを利用してもガイドラインの曖昧さによる運営基準との認識の齟齬という問題は起りうるものだという覚悟は必要でしょう。ルールの枠組みは大ざっぱに作って、細かな部分はその運用で対応していくというのは極一般的なことでもありますから。


 なろうの場合、(あくまでも幾つかの事例を見た上での私個人の直感とイマジネーションによる憶測に過ぎませんが)性交といった行為そのものの描写の有無よりも性的な描写全般において官能的であるかどうか(ガイドラインの言葉を借りれば「性的感情を刺激する」かどうか)がR18警告の運営基準になっているように感じられます。実際私が見た範囲では淡泊な描写で官能的でない性交描写は割りと生き残っている感じがあるので(ただ単に違反通報されていなくてまで運営のジャッジを受けてないだけかも知れませんが)。


 そう考えてみると、今回の件も濃厚な百合キス描写が官能的であると認識され、作者ご本人が百合キスを描くための作品と公言されているくらい百合キスがメインの作品だったことで官能を主目的とした作品と判断されてR18警告が出された、という辺りが考え得る理由としては、納得できるかどうかは別として、妥当な線ではないでしょうか。


 百合オタとしては、濃厚であろうとただのキスである百合キスが露骨な性交描写と同等のもとして扱われるのは腑に落ちないことではあるでしょう。ただ一方で女性同士のキスというものがAV(アダルトビデオ)業界において所謂「レズキス」として作品の売り文句になったり、キスシーンだけを集めた十八禁コンピレーションが幾つか作られるほどにはポルノ的・官能的的なものとして捉えられているのも事実です。


 この認識ギャップみたいなものがある限り、これからも今回のような百合小説へのR18警告は起こりうるものだと考えた方が良さそうです。そういう事態を避け自作を守るためには、官能性のあるものは極力R18指定をするか、R15指定辺りで収まるように官能度を抑えるしかありませんが、作者さんそれぞれの拘りというのもありますし、なかなか難しいところではあります。


 さしあたって、今回問題になったであろう百合キス描写ですが、「リップ音」「唾液などの液体音」「キスに伴うキャラの嬌声」辺りを極力抑え気味に書くというのが取り得る防衛手段になるでしょうか。


 というわけで、運営の心の中の百合棒をエレクチオンさせたらアウト、みたいな状況ではありますが、なんとか百合作家の皆様が妥協点を見いだし、なろうにおける百合小説界隈がより一層繁栄することを願って今回の話を終わりにしたいと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] なろう外のどこかでいわゆるディープキスは性行為と同等なる記述を見たことがあるのでそこらへんも絡んでいるかもにゃ、運営の基準に。
[一言] その作品を読んだ事ないのでなんとも言えないとこもありますが キス描写だけでR18警告もらうなんてその作者さんはすごいですね! しかしボーダーラインが曖昧過ぎる状態で頭を抑えられちゃうのは困…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ