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聖華の異世界物語〜after story〜②

 〜クレープ屋〜


「やっぱり人多いな」


 猫と遊んだ後、俺らは駅前のクレープ屋に到着した。クレープ屋は予想した通り人が多かった。


「開店したばっかで人が少ない方が問題でしょ」

「まあ、そうだが」


 それにしても多いなー。駅前だから普段でも人通り多いのに。


「並ぶか」

「そうだね」


 俺らは気長に並んで待つことにした。



 数分後。


「さっきの猫なんだったんだろ? 野良猫にしてはキレイだったし」

「結局私には懐かなかったな……」

「……猫可愛かった。やはり猫はああいう…………ッ!」


 並んで話をしている途中、突然聖華の言葉が止まった。驚愕した顔でどこかを見ている。

 当然気になるわけで、俺らは聖華の見ている方を見る。

 そこにはいるのは人の群れ。うんざりするほど人がいた。

 どうしたんだろ? 知り合いでもいたのかな?


「……嘘…………どうして……」


 聖華がつぶやきながら人の群れの中へと進んでいく。


「え? ちょっ、聖華!?」


 俺らが止めようとするも、聖華には聞こえてないようだった。

 聖華は人の群れの中に消えていった。


「………………」


 残された三人。


「さて、どうする?」

「そのうち戻ってくるでしょ。戻ってこなかったら聖華の分もクレープ買っとこう」

「そうだね」


 意見はすぐまとまった。こういう事態はわりかし慣れてるから、最初は呆然とするが、すぐに対応できる。


「まあ、メールだけは一応やっとこう」

「ん、任せた」


 俺はさっきの意見を、だいたい聖華にメールした。



 さらに数分後。

 結局聖華は戻ってこなかった。俺らは予定通り、聖華の分のクレープも買うことにした。


「おおー! なにがいいかな〜」

「いっぱい種類があるな。これは迷うな」

「だね、どれにしようか」

「お、見ろよ理富、カレーがあるぞ。カレーが」

「カレーか、そういう変わったのもあるんだね。カレーをクレープ生地で巻くの難しそうだな」

「カレーにあうようにクレープ生地じゃなくて、ナンで巻いてるって」

「それもうただのカレーじゃん!?」



「よし、私はこのイチゴかな」


 結愛が決めたようだ。


「じゃあ俺はこのクリームだな」


 俺も決まった。


「私は……」

「この焼きそばをパンで巻いたやつ?」

「いやその焼きそばパンじゃなくて……このバナナにしようかな」


 理富はバナナ。


「聖華は……このチョコにしよう」


 聖華の分も決める。たしかチョコ嫌いではなかった気はする。

 俺らはクレープを四つ買い、近くのベンチで座って食べることにした。



「ん〜、おいしい〜」


 結愛がまず食べてそう言った。こいつホントにうまそうに食うな。


「お、確かにうまいな」


 俺も自分のクレープを食べる。

 ちなみにさっき自分のクレープをクリームと言ったが、別にクリームだけが入っているわけではない。クリームの他にもチョコとかいろいろ入ってる。メインがクリームってことだ。他の三つも同じ感じだ。一応言っとく。


「おお、これはうまいな」


 理富も絶賛だ。


「ねえ、歩斗のも少しちょうだい。私のも少しあげるから」

「おう、いいぞ」


 俺と結愛は互いのクレープを交換し食べた。

「うん、おいしいね」

「そっちのもうまいな」


 俺らボキャブラリーなさすぎだろ。さっきから「おいしい」と「うまい」しか言ってないぞ。いやまあ俺も「うまい」しか言ってないけど。

 相手のクレープを食べた俺と結愛は再び交換し、元に戻した。


「………………」


 そしてその一部始終をじっと見ていた理富。


「ねえ、歩斗」

「ん?」


 俺が返事をすると、理富は顔を少し赤らめながら、こっちにむかって自分のクレープを出してきた。


「え、えっと……その……よ、よかったら……わ、私のクレープ……少しあげるから……その……歩斗のクレープも……」

「あ、俺バナナあんま好きじゃないからいいや」

「〜〜〜〜〜っ!!」

「え? なに? なんで?」


 理富が涙目でこちらを殴ってくる。俺がなにしたって言うんだ。



 クレープを食べ終わっても聖華は来なかった。もちろん今の場所はメールしてある。


「来ないな」


 聖華の分として買ったこのチョコクレープどうしよう。


「どうする? 探す?」


 理富が提案する。


「探すって言ってもなあ……どこ行ったか分からんし」


 駅前にはそこそこ人が多い。そもそも駅前にいるかも分からん。


「まあでもここでじっとしてるぐらいなら、探した方がいいでしょ」


 俺は渋っていたんだが、どうやら結愛は探す気のようだ。


「でも聖華がメール見てて、こっちに向かってたら、ヘタに動くよりじっとしてた方がいいぞ」

「いいの! 探そう!」

「……はいはい」


 仕方ない、探すとしますか。


 探そうと決めたとき、突然爆発音が聞こえた。


「!?」


 突然爆発音なんかが聞こえれば、当然そちらを見る。煙が上がっているのが見えた。ここからそう遠くはなさそうだ。

 周囲もざわざわし始めた。さっきまでも騒々しかったが、今は別の騒々しさがある。


 一方結愛は、例のアラーム音が鳴るデバイスを見て、


「……反応はない。デモンの仕業ではないか」


 と呟いている。

 理富は、


「……戻るか……いや、様子を見てからでも遅くはない」


 と呟いている。

 こいつら爆発に心当たりがある可能性があるのか。



 とにかく俺らは、その爆発音がした方に行くことにした。周りも行く人が多い。やっぱ気になりますよね。俺はクレープが崩れないように気をつけて走った。


「そういや、理富この後、春火とケーキ食べに行くんじゃなかったっけ? 時間大丈夫か?」

「ええと……」


 理富が自分の携帯で時間を確認する。


「うん。もう少し大丈夫」

「『もう少し大丈夫』ってそれ大丈夫なのか?」

「移動時間も入れて、5分前には着くように考えての大丈夫だから大丈夫」

「ならいいんだが、そっち遅れんなよ」

「分かってる分かってる」


 前に人だかりができているのが見える。あの中心地が爆発地点かな。

 人が多くてこれ以上中心地にはいけないな。どこが爆発したかも分からん。

 と、俺らが立ち尽くしていると


「ねえ! あれ聖華じゃない?」


 人だかりの後ろの方、人だかりと爆発地点を見るように立っている聖華を結愛が発見した。


「………………」


 聖華は呆然とその場に立ち尽くしていた。服が所々汚れている。


「聖華? おい! 聖華?」

「…………はっ! え、えと……なに?」


 近づき、呼びかけると、聖華はこちらに気づいたようだ。


「『なに?』じゃねえよ。急にいなくなりやがって」

「……え、あ、うん……ごめん」


 あ、ダメだこれ。いなくなったことを責める気はないが、返事が適当だ。こっちの声が聞こえてないほどじゃないけど、別のことで頭がいっぱいいっぱいという感じだ。

 ここで何があったかきいてみるか? いや、きいてもおそらく答えてはくれないだろう。なら無理にきくことではない。


 さて、じゃあどうするか……。

 おれは少し考えて答えを決めた。


「よし。解散!」

「「ええっ!?」」


 結愛と理富がびっくりしている。


「理富はこの後予定あるだろ? そろそろ解散どきだろ」

「え、いやまあ、そうだけど……」

「聖華も今日のとこはもう帰れ。あ、これお前の分のクレープな。チョコ嫌いじゃなかったよな?」

「……あ……うん。ありがと」


 と、このモヤモヤしたまま、俺らは解散することにした。結愛と理富も最初は何か言いたげだったが、今はもう俺の意見に賛成のようだ。まあ、俺ら四人の中ではこんな感じで解散することはよくあることだ。今更誰も口は出さん。



 夕方。ここであった爆発はガスボンベが爆発したものだと報道された。

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