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聖華の異世界物語〜after story〜①

 週末。

 俺ら四人は約束していたクレープを食べに行こうとしていた。俺は今待ち合わせ場所である本屋に行こうとしている途中だ。


 俺が本屋に着いたとき、そこにはすでに聖華せいかがいた。


「ウィーッス」

「……おはよう。……結愛ゆあは? 一緒じゃないの?」

「途中まで一緒だったんだがな、用事があるってどっか行った。まあ、遅れてくるよ」

「……そう」


 用事とは例のごとくアラームが鳴ってどこかへ行くやつだ。


「まあ、あまりに遅かったら、連絡だけして先に行くか」

「……そうだね」


 あまりに遅かったらだ。別に急ぎの用事ではないからそこそこは待つよ。



 その後、特に遅れることなく、理富りふ、結愛の順で集まった俺ら四人は、結愛の指揮でクレープ屋を目指して歩き出した。


「よーし! じゃあクレープを食べに出発だー!」

「人多いだろうな」

「週末だしね」

「……店もオープンして間もないし」

「行く前からみんなのテンションが低い!」




 道中。

 クレープ屋を目指す俺らの前に刺客が立ちはだかった。


 それは猫だった。


「わーい! にゃんこだー!」


 結愛が真っ先に猫に向かった。

 案内役が真っ先に猫に向かったため、俺らは猫と戯れることにした。


「……うっ……猫……」


 聖華が一歩後ずさる。


「どうした聖華、猫は苦手だったか?」

「……いや、猫にはちょっといい思い出がなくて」


 俺が尋ねると聖華は答えた。


「へー、あんなに可愛いのに」


 言いながら理富が猫を撫でようとする。


 シャッ!


「痛っ」


 ………………。


「何こいつ全然可愛くない」

「おいおい……」


 猫にひっかかれた理富は、意見が180度変わっていた。



「……別に苦手ではない」


 そう言い、猫を撫でようとする聖華。


 シャッ!


「……痛っ」


 ………………。


「……苦手だ」

「いや待ておい」


 ちなみに結愛はさっきからずっと猫と戯れている。一回もひっかかれてない。


「くっ、なんで結愛にはできて私達にはできないんだ! こんなのおかしい!」

「……結愛の頭脳は猫と同じレベルだから」

「あー、なるほど」

「聞こえてるからね!」


 理富と聖華の会話に結愛が叫ぶ。



「ちょっ、歩斗も猫撫でてきなよ」

「ん? ああそうだな」


 理富に言われ、俺は猫に向かう。


「ハッ、お前もひっかかれろぉ!」

「性格悪っ!?」


 なでなで、ゴロゴロ

 ニャー


 俺は猫にひっかかれなかった。

 撫でながら俺は猫を改めてよく見る。猫の種類には詳しくない。この猫はなんだろ? 三毛猫? うん、多分三毛猫。三毛猫三毛猫。

 しっかり見てみると背中にハートの形に見える模様が見えた。


「見ろよ結愛。なんかここハートに見えるな」

「あっ、ホントだー」


 と、結愛と猫を撫で回していると


「バカなッ! ひっかかれない……だと……!」


 理富が悔しそうな顔でこちらを見ていた。


「ハッハー、この猫は性格の良し悪しを判断する。性格悪いクソみたいなお前らじゃこの猫は撫でられん! 諦めてお家に帰るんだなぁ!」

「お前も十分性格悪いじゃないかーッ!」


 理富が叫んだ。



 結愛が猫を撫でるのを止め、二人に声をかける。


「あれだよ、猫の気持ちになるんだよ。猫の気持ちをこの身で感じるんだにゃー」


 なんか結愛の講義が始まった。


「わ、分かったにゃー」

「……頑張るにゃー」


 返事をする理富と聖華。別に語尾に『にゃー』を付けなくてもよくない?


「ふふふ、覚悟するにゃー」

「……にゃー」


 じりじりと猫に詰め寄る二人。なんか怖い。


 シャーッ!ガッ!


「痛っ!?」

「……ッ!」


 ひっかかれる理富と飛び退く聖華。


「くっ……何故だ!」

「……やはり私と猫は相容れぬ関係」


 見てられないな。

 俺は聖華に話しかける。


「なあ、聖華。見てて思ったんだが、お前は体に力が入りすぎ。もう少し気楽に行けばいいんじゃないのか?」


 俺が言うと、聖華はなにかに気づいたようだ。


「……そうか。こっちの猫はあっちの猫とは違う。なのに私は自然と体が身構えてたのか」


 そう言い、聖華はふうっと肩の力を抜いた。

 そして猫の元へと向かう。そのまま聖華は猫を撫で始めた。


 なでなで

 ニャー


 今度は猫も聖華をひっかかなかった。気持ち良さそうに撫でられている。


「………………」


 理富が『聖華にあったから次は私のアドバイスの番だ』的な期待に満ちた顔をしている。

 理富は……理富は…………。


「まあアレだ。動物に懐かれない人というのは結構いるもんで、別に落ち込むことは……」

「待って!? 諦めないで!? なんか! なんかあるでしょ!?」


 なんかと言われましても……。

 俺、別に猫に詳しくないし。猫に好かれる方法なんか知らん。

 聖華のは見てて、明らかに気になったから言っただけで、あれでダメだったら俺にもう言うことはなかった。




 〜数分後〜


「さてみんな。何か忘れてないか!」


 しばらくして、俺は猫と戯れている二人とそれを羨ましそうに見てる一人に声をかけた。


「「「?」」」


 なんでみんなそろって疑問符なんだよ。


「クレープ食べに行くんじゃなかったのか」

「おおっ! そうだったね」


 結愛が思い出したように言った。他二人は冗談だとしても、こいつは本気で忘れてそうだからな。


「お別れだね、にゃんこ」

「……バイバイ、にゃんこ」


 結愛と聖華が猫に別れを告げる。


「………………」


 理富は不満そうな顔で歩き始める。


「思ったより時間経ったな」


 俺は歩きながら携帯で時間を確認し、言った。


「まあいいじゃない、いいじゃない」

「……理富は?」


 聖華に言われ俺らは歩みを止める。そういやいない。どこ行った?

 そう思いながら後ろを見る。


 そこには、最後にもう一回撫でようと試みたが失敗してひっかかれている理富の姿があった。


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