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空と鎌地家

「・・・兄ちゃん・・・誘拐?」

さっきの眠たげな声から一転。やたら不安そうな声で聴いてきやがった。

「まて、葵落ち着け葵!」

「兄ちゃんせめて法律は守ろうぜ・・・」

葵の目の色が波がひくように薄くなったように感じた。

「違う。そういうんじゃないこいつは・・・」

俺が弁解しようとするが、葵には聞く気全くないようで、空の目線にあわせてかがんだ。

「初めまして!ここのふてふてぶしいお兄ちゃんの弟の葵だよ」

俺には絶対向けないような満面の作った笑みで空に自己紹介をした。

「空だよ!」

「そっかそっか空ちゃんか!いくつ?」

「小学四年生―!」

葵はやけにフレンドリーに話しかける。空めぶりっ子モードに入ってやがる。

「兄ちゃんとはどういう関係?」

「今日初めてあったよ」

一気に葵のまわりの温度が下がった

「違う。断じて違うぞ。俺にそんな趣味はない。」

「いや、別に隠す事はないんだよ?俺と茜ちゃんが少しアブノーマルな趣味なのに対して、兄ちゃんが普通の趣味してるなんて考えにくいもん」

「いやいや、兄ちゃんはかなり普通だ。」

葵は瞬き一つせずこちらを見つめた後、空の方に振り返った。

「・・・空ちゃん!どういう経緯でここにいるの?」

「このお兄ちゃんに連れてこられた!」

「嘘をつくな!クソガキ」

吉高と同じ用に頭をはたいた。空がキッと俺を睨む。

「うえぇーん痛いよぉ!」

「あーあ泣かせちゃったーよしよし痛くないよー」

白々しい演技してんじゃねぇよ。涙なんて一ミリリットルもでてないぞ。勝ち誇った笑みも見えてるぞ。

「ったく・・・この子は知り合いから預かることになって・・・」

「こんな朝早くに?」

「ママの都合で早くくる事になっちゃったの・・・うるさかったらごめんなさい」

俺のペッラペッラな冗談に助言をしてくれた。相変わらずぶりっこモードだが

「大丈夫だよ」

葵が柔らかくそういった。

「兄ちゃんが犯罪を犯してないんだったら、ロリコンだろうがなんだろうが問題ないから!」

問題ないのか。随分と寛容な弟をもったことだ。

「うーん葵君早起きだねぇ」

葵と全く同じ動作ドアをあけ、茜が入ってきた。

「茜ちゃんおはよう」

「おはー!」

茜はさも当然のように空の隣に座った。座ってから

「・・・あれ」

「おはようございますー!」

茜は一度目をこすってからもう一回空を見ていった。

「・・・お兄の隠し子!?」

「そんなわけあるか!」

葵とはまた違う変化球を投げてきやがった。

「愛人!?」

「残念ながら愛人どころか恋人もいないんでね!」

「じゃ、じゃあ葵君の子!?」

「そこで俺にきたか!」

「落ち着け。少なくとも葵なわけないだろう」

「そ、そうだよね!!」

「兄ちゃんが知り合いから預かってきたんだって。」

茜は葵の言葉を聞くとゆっくりと空の方へ視線をうつした

「空だよーよろしく!」

茜と目があうとにこりと笑ってあいさつをした。茜はそんな空の顔をじっと見つめる。空の笑顔がぎこちなく口許が動いた。ちょっと戸惑ってるみたいだ。

茜はそのままつま先からつむじまでゆっくりと視線を動かしていき、最後に再び顔に戻ってきた。そこから三回まばたきをすると、ぽかんと半開きだった口が横に広がった

「空ちゃん!?キャーかわいいかわいい超かわいいー!!!」

人形を抱きしめるように空を抱きしめた。

「ちょ、苦し、」

「何この子何この子!?お人形が動き出したの!?絵本の中からでてきたの!?たんぽぽの妖精とか!?」

ちょっと俺には理解できない事を叫びながら、空をなでまわしたりほおずりをしたり匂いをかいだりし始めた

「ちょっ、お前、さすがにそんな小さい子を!」

ぼ無理やり茜の手空を奪い取った。かわいこぶる事も忘れてやたら男くさい息切れをした。

「さすがにこんな小さい子までストライクゾーンだとは思ってなかったぞ」

「そこまで節操なしとは」

「失礼な!私には節操あるよ!!」

「ちょっと待ってよ。茜ちゃん。それだと俺が節操ないみたいじゃん!」

おっとこれは話が危ない方向に発展するぞ。長年の経験から察した俺は空の耳をふさいだ。

「あるの!?」

「あるよ!!」

「だって、葵君筋肉さえあればだれでもいいみたいなところあるじゃん!お兄の筋肉にも興奮するぐらいなんだし!」

「別に俺筋肉だけが好きなわけじゃないからね!?たまたま好きになる人が筋肉質な男の人なだけだからね!兄ちゃんで好きなのは肉体だけだからね!?」

「それはそれでどうかと思うよ!?」

「茜ちゃんだって顔がかわいければだれでもいいみたいなところある癖に!」

「そんな事ないよ!顔だけの女はかわいいに入らない!心までかわいくないと私の射程圏内には入らないの!」

「茜ちゃんの性格がかわいいってセクハラしやすいかしやすくないかじゃないの!?」

「なっ、私本命にはセクハラしないんだから!」

「本命以外の見境のなさはどうかと思うよ?」

「葵くんだって・・・」

「いい加減にしろ!!子供の前で何て話してるんだ!」

あまりにも生々しい話と葵の聞き捨てならない発言に耐えられなくなり叫んだ。

「「・・・はーい」」

「あと、葵、あとで話あるから」

「ひい!いや、あれはたとえ話っていうかなんて言うか」

「言い訳は後で聞く。今はとりあえず朝食を作れ」

「は、はーい」

葵はそのまま逃げるように小走りでキッチンへ向かった。

「茜。お前はさっさとしたくしろ!鈴鹿が来るぞ」

「あーい」

空は耳をふさいでいた俺の手をぐいっとどかした。

「・・・今の会話聞こえたか」

「うん。かなり赤裸々に」

悟りを開いたような目で淡々と答えた

「もーなんなの今日は!まだ一日が始まって六時間ちょっとしか経ってないのに変態に四人もあったよ!」

「まて、その四人に明らかに俺が入っているだろ」

「変態じゃないの?」

「俺が変態だったらこの世の人はみんな変態だな」

「まぁ鎌地が変態だろうが戦隊だろうが割とどうでもいいんだけど」

「少なくと戦隊ではないかな」

「朝食はまだなの」

「今葵が作り始めたところだ。もうちょっと待ってろ」

「いつも弟さんが作ってるの?」

「家の家事は大体アイツに任せてるからな」

「今流行りの主夫系男子だね」

「生憎さっきの会話が赤裸々に聞こえていたなら察しがつくだろうが、アイツは男にしかモテないし男にしか興味がない」

「えぇ、そんな漫画みたいな・・・じゃあもしかして妹は」

「あぁ。あいつは生粋のレズビアンだ」

「何なのなんで君の周りにはアブノーマルの人ばっかりなの?」

「俺が知りてーよ」

さて、あとは仕事ばかりの父の許可が必要だが、まぁあまり帰ってくる気もしないので大丈夫だろう。フレンドリーな弟と妹でよかったぜ。

とりあえず、俺はトイレやふろの場所を教えてから、食卓についた。ほとんどいつも空席だった四つ目の席に空を座らせる。

「オーソドックスでごめんね!」

そういいながら、手際よくおかずとトーストを俺達の前に並べてく。何か手伝おうと、とりあえず全員分のコップに牛乳をついだ

「ボク牛乳嫌い」

「あ?めんどくせーなぁ」

「お水ないのー?ミネラルウォーター」

「アハハ空ちゃん高級思考だね!」

葵はそういいながらも2ℓの水が入ったペットボトルをもってきた。

「ありがとー!」

にぱーっとぶりっこスマイルでお礼を言って、コップを両手で持って飲みだした。それが計算か天然かはわからないが、小動物のようでかわいい仕草だ

その後すぐに、髪をツインテールに結ってきた茜がドタバタとやってきたのを確認して、朝食を食べ始めた。

「ところでコイツの部屋どうするよ」

「やっぱり茜ちゃんの部屋じゃないの?」

「え!私の部屋!」

パンをほおばりながら茜がキラキラと目を輝かせた。しかしそのキラキラがピンク色を帯びているのを俺達は見逃さない。

「・・・やっぱりやめるか」

「何で!!?」

「じゃあどうしよっかー」

「親父の部屋は」

「私の部屋はどうなったのさー!」

確かに、あまり帰ってくることがない親父の部屋なら心配ないかもしれない。

「親父の部屋なんて汚すぎて何年も入ってないぞ」

「俺もーなんかくさそうだし」

「えーそんな部屋で過ごさなくちゃいけないの?」

「ちょっと私の話きいてよー!!」

いよいよ話がカオスになってきたな。これはいつものパターンを考えるに、あまり子供の教育によくない単語が飛び交うだろう。

「空、悪いが、ソーセージやるからあっちのリビングで食ってろ」

「えー?なんで」

不服そうにしながらもしっかりと魚肉のソーセージを受け取った。

「あとできればヘッドフォンしてテレビみててくれ」

俺は空を先ほどのソファーに無理やり移動させテレビにヘッドフォンをつないでつけた。

「ここから先の議論はあまりきかせたくない。」

「・・・わかった」

空がつまらなそうにテレビのチャンネルをいじりはじめたのを確認して再び食卓に戻った。

「さて、議論を再開しよう。」

俺はそう言って裁判官のようにフォークで机をたたく。

「んん!何で!私の部屋がもぐもぐ速攻もっもっもっ教えてください!!もっもっ」

まず一番に茜が挙手をして、パンをハムスターのように口いっぱいにして意味不明な事を言い出した。

「とりあえず食べてるものを飲み込め」

茜は強くうなずいて、んぐんぐと牛乳と一緒に流し込むと再び手をびしっとあげた

「何で私の部屋は速攻却下になったのか理由を教えてください!」

「お前が危険だと感じたからだ」

「さっき言ったじゃん!私にだって節操はあるよ!」

「でもやっぱり茜ちゃんと二人っきりは危ない気がするよ」

「危ないって何!空ちゃんが筋肉ムキムキな大男だったら葵君にも同じ事言えるんだからね!」

葵は少しひるむが、俺は

「筋肉ムキムキな大男を家に泊める機会はそうそうないからな」

と冷静につけたした。

「と、とにかく、俺達は茜ちゃんが犯罪者になるのと、自分の家が犯行現場になるのを止めたいの!」

俺も何度もうなずく。

それぐらいコイツの日ごろの行いは悪い。学校で見かけると大抵女の子にセクハラしている。ベッドの下から、男が読むようなエロ本がでてきた時は言葉を失ったな。

「なんでみんな私を犯罪者予備軍みたいな扱いするのー!!もう怒った怒ったー!二人枕の下にカエルつめこんでやるんだからー!」

あんまり怒ってるように見えないし、怒り方が陰湿なのが気になるが、これなら放っておいても大丈夫だろう。

「で、空の部屋はどうしようか」

「えーお父さんの部屋後でいいんじゃない?」

「そうだな。まぁ月単位で帰ってきているわけだし大丈夫だろ」

「まぁ部屋の汚さは掃除するからいいとして、一人で大丈夫?小学四年生でしょ?」

「あぁ見えて自立してるんだ。大丈夫だ。」

本人曰く俺より年上らしいしな。死体みても動じないしな。全然問題はないだろう。

「何その根拠のない自信・・・まぁ兄ちゃんが大丈夫だっていうならいいけど」

「じゃあ葵、部屋の様子見てきてくれ」

「うん」

今だにぎゃーぎゃー騒ぐ茜をおいて、葵と同時に立ちあがりソファーに寝っ転がりながらテレビを見ている空の方へ行った。

「空、お前ひとり部屋でも大丈夫か?」

空はヘッドフォンを外してから口をへの字にした。

「子供扱いしないでって言ってるじゃん」

「かわいこぶりっ子はもういいのか」

「だって鎌地しか見てないし」

なんてかわいくない女なんだ。小学生ぐらいの女の子なんて無条件でかわいいと思ってた。

「思ったより早かったね」

「茜の意見を徹底的に無視したからな」

「それであんなにぶーたれてるんだ」

「アイツの意見なんて採用したらお前が大変な事になる」

「あぁそういう趣味なんだっけ・・・あの子」

「だからアイツには気を付けろよ」

「はーい」

「とりあえずお前の部屋候補決まったから」

「さっき言った君のお父さんの部屋?」

「あぁ。二階の一番端っこの部屋。隣の部屋が俺と葵の部屋だ。親父あんまり帰ってこないから汚いかもしれない。」

「・・・まぁ一番安全っていうなら」

そういいながら空は俺にとことことついてきた。

二階にあがると、丁度親父の部屋から葵が顔をだした。

「意外と散らかってない」

「マジか」

「少しほこりくさいけど全然生活できそう」

あのだらしない親父が・・・驚いてる俺と葵をよそに、空は踊るような足取りで俺を追い越し親父の部屋に入っていった。

「わぁひろーい」

続いて俺も中をのぞくと、葵の言った通りほこりが少し煙たいだけで部屋はきちんと片付いていた。

「ここで決まりでいいか」

「わかったー!」

葵がいるせいか、ぶりっこモードで元気よく答えたところでインターホンの音が響いた。慌てて時計を見る。

もうそんな時間か。平日だという事をうっかり忘れていた。

時間的に鈴鹿だろう。

「ボクがでるー!今日からここに住む人としてあいさつはしなくちゃー!」

空はぴょこぴょことかわいい足取りでかわいくない速さをだし玄関へ向かった。

「待て!余計な誤解をまねくからやめろ!!」

相手は小さい事は気にしないバカ、茜と葵ではなく、割と融通のきかない真面目っ子鈴鹿だぞ!

ドアに手をかける空をとめようと手を伸ばした時にはもう遅く、親の不倫現場を見てしまったような目をした鈴鹿が立っていた。

「えっと・・・その子は・・・」

「初めまして!今日からしばらくここにお世話になる空だよ!よろしくねー!」

「え!えっと鈴鹿柚葉です・・・?」

おどおどとしながら俺と空を交互に見た。

「おはよー柚ちゃん!」

そこへ先ほど放置されて拗ねていた茜が飛び込んできた。

「この子は空ちゃん!お兄が知り合いから預かってきたんだ!」

「あ、なんだ・・・よかったぁ・・・」

「もー何と勘違いしてるんだよー柚ちゃんったらぁ」

茜はそう笑いながらほっとした顔をする鈴鹿の背中をバンバンっとたたく。そういうお前も最初は隠し子だなんだ言ってただろうが

「痛いですよぉ茜ちゃん」

「心配しなくてもお兄は隠し子がいるほどただれてないよ」

「おい」

やはり隠し子と思われたのか。コイツとの共通点が一切見いだせないのだが、そんなに俺は軽薄そうに見えるのだろうか

「っつーかお前早くっパジャマ着替えてこいよ」

「あ、そうだそうだ!着替えてくるね!柚ちゃんちょっと待ってて」

どたどたと階段を上がっていった「本当にぎやかな子だね」


ヒロインの吉高さんが一切でてこないっていうね

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