書かれていないクラスノートのこと
昼休み、いつも通り玄吾たち三人が屋上に集まると、今日のクラスノートに書かれているであろうことの回避方法の相談を始めた。
しかし、回避できそうなところが見つからず、話し合いは難航していた。
「ここはどうしても無理だからなぁ……」
「これも、私どうしても外せないし……」
今回の感想文には、今日の出来事や予定としてどうしても外せないものや、物理的に外すのが無理な物ばかりだった。
「これは、明日の分の回避を考えた方がいいかもな」
「それも、今から考えてうまくいくかはわからないぞ」
乃木斗の提案を、玄吾は一蹴する。
「感想文ノートを見比べたらわかるけど、クラスノートに書く日が感想文を書く日から近いと、わりと詳しく書かれてる。でも、遠いとほんの少しでほとんど書かれてない場合がほとんどなんだ」
「あ、確かに。明日の分だと割合多いけど、あさっての分ってほとんどないわね」
「だから、先のことを考えようとしても、うまくいかないと思う」
「うーん、これは痛い弱点だわね」
感想文ノートを見比べながら、玄吾と夢月は頭を抱える。乃木斗も、ノートを見ながら「やっぱりできそうにない」と頭を抱えた。
「困ったな。これって、やっぱり変えようと思っても変えられないことしか書いてないのかな」
「かもしれないね。それに、ちょっと気になったことがあるんだけど」
そういうと、玄吾は自分の感想文ノートと夢月の感想文ノートを手に取った。
「昨日の僕の感想文のあらすじと、伊本の感想文のあらすじが、まったく一緒なんだ」
乃木斗と夢月は、それぞれノートを読みあって、あっと声を上げた。
「本当だ、まったく同じよねこれ」
「でもさ、これって」
乃木斗は携帯電話のカレンダー機能を開き、玄吾と夢月に見せた。
「土日があったからじゃないか? ほら、九月は特に三連休も二回あるから」
「確かに、土日挟んだら、クラスノートを提出しないからそうなるよね。でも、今回のは違うよ」
玄吾は乃木斗の携帯電話の、今日の日付を指さした。
「昨日から一週間後を考えると平日だし、月曜日でもないから、一週間後も平日でクラスノートは提出されるはずなんだ。ところが、その分の感想文は書かれてない。しかも、二日連続で」
「書くのを忘れた日とか、感想文に反映されてないとか? ほら、日付が遠いと感想文にあまり書かれないじゃんか」
「それならいいけど、これを見比べてみてくれ」
そういうと、玄吾は自分の感想文ノートと夢月の感想文ノートを数ページめくった。
「これは同じノギのクラスノートの感想文で、一日違いなんだけど、少なからずあらすじは違ってるんだ。ほら、一週間後のことも少しだけ書かれてる」
「たしかに。まったく同じっていうのは、一体……」
まったく同じ感想文、書かれていない一週間後のクラスノートの日記。一体何を意味しているのか、三人にはまったくわからなかった。
「わからないけど、とにかく、ノギは来週何らかの原因でクラスノートが書けなかったんだろう。もしかしたら、事故とか病気とかかもしれないから、注意するに越したことはないね」
「そ、そうだな。それは気を付けるよ」
そうこうしているうちに、空が暗くなってきたのに気が付いた。雨が降りだすと面倒なので、三人は一旦教室に引き上げることにした。
放課後、いつも通り三人で集まって、クラスノートと感想文ノートの書き込みを行うことにした。
避けられる事実がなさそうなため、普段通りにクラスノートには日記を書き込んでいく。
一応別のことを書こうとはしたものの、やはりほとんど文章が思いつかずに、思いついたことを書くことにした。
「それにしても、最近書く日記って、なんだか書かされてる感じがするよな」
「本当ね。今までこんな感じしなかったのに」
「まあ、でもスラスラ書けるって言うのは便利だけどね」
夢月が書いている隣で、書き終わった乃木斗がクラスノートをぱたんと閉じた。
「最近、たまに思うの。これ、本当に私の日記のかなって」
「これだけスラスラかけてたらそう思うかもしれないけど、自分で書いた日記だし、自分のことを書いた日記なんだから、これは立派な自分の日記だよ」
「うん、そうなんだけど、さ」
そう言いながらもクラスノートを書き終えると、夢月は乃木斗と同じようにノートを閉じた。
「あ、そうだ。今日は用事があったんだ。悪いけど先に帰るから、感想文は家に帰って書くね」
玄吾はそういうと、書いていたクラスノートを閉じて荷物をまとめ始めた。
「えっと、今日はノギのクラスノートの感想文だったな。書き終わってるだろ?」
「うん、書き終わってるけど……」
「伊本は僕のだったね。はい。じゃあね」
玄吾は夢月に自分のクラスノートを手渡すと、すぐさま教室を出た。
先が書かれていない感想文に、玄吾は嫌な予感がしていた。
一体、何故先が書かれていないのか。何か悪いことがあるのではないか。
急いで家に帰った玄吾は、すぐさま感想文ノートを開き、乃木斗のクラスノートを準備した。
シャーペンを右手に持って感想文ノートの白紙ページに乗せると、頭にクラスノートに書かれていることが思い浮かび、それが即座に感想文ノートに文字として表現される。
そして十分もたたないうちに、その日の乃木斗のクラスノートの感想文が書きだされた。
一度手を止め、玄吾は書かれた文章を読み直した。そして、前に書いた乃木斗のクラスノートの感想文と読み比べた。
「やっぱり……まったく一緒だ。あらすじから感想まで全部」
先が書かれていないクラスノート。これは一体何を意味するのだろう。




