五話 放課後
「あっ思い出した…赤ずきんお前、俺の英語の教科書にまた落書きしてただろー?やめろよな。もう現国にも日本史にも落書きされてるんだから、いい加減そろそろ飽きてくれ。」
とかオオカミの愚痴を聞きながら帰宅する放課後。
オオカミとは家の方角が違うから、曲がり角の別れ際に立ち止まってしばらく話す。
「そうだ!俺たちもそろそろ三者面談まわってくるな。」
オオカミがふと言い出した話題に、げんなりする。
「うん。うちはおばあちゃんが、学校に来てくれるって言ってる。」
「そうかぁ。けど、肝心の志望は決まってんのか?」
オオカミは最近度々進路のことを聞いてくるのが、煩わしい。
「いーや。まだ・・・ってこの間からその話だよね?」
「そうはいっても、一番の関心事だろ?俺は地元の国公立って言うつもりだけど、学部の方がなぁ…。」
「オオカミは理系だから、理学部?」
「おい、それって赤ずきんは文系だから文学部だなって言われるのと同じことだと気づけ。」
けたけた笑う彼は、進路に悩みが少なそうで結構なことだ。
「学部もそうだけど、どこら辺の学校を受けるかもまだ決められない。」
「いつまでもそうも言ってられないだろー。ちょっとは方向性考えないとな。」
同級生のくせに説教してくるなんて、生意気だ。とか思いながら帰宅する。
オオカミと会話するのを億劫だと感じることはなかなかないのだが、この頃は話題に依ってはものすごく疲れる。その原因は自分の方にあるのだろうけど、それさえも考えたくはないのだ。