四話 クラスメイト
クラスでいつもつるむ仲間がいる。
3限目の休み時間、数学が終わってクラス全体が脱力感に包まれていた。
いつものように自分の席でうつ伏せになってぐったりと時計を見やる。オオカミは大抵休憩が入るたびに自分のそばにやってくるから、学校に居る間はしょっちゅう話す。
けれども・・・、よくよく考えてみるとこんなにオオカミといろいろ話すようになったのは高校に入ってからで、なぜか中学の頃なんかは同じ学校にいてもほとんど会話することはなかったような気がする。なぜだろうな?
そういえば、オオカミと中学でクラスが一緒になったことは一度もなかった。それにひきかえ、今では一クラスしかない普通科に朝から晩まで代わり映えのないクラスメイトと過ごすことを余儀なくされているのだから、自然と話す人間も定まってくるし、自分はオオカミとそのほかでだらだらと過ごすのが、一番おさまりが良かったからいつのまにかそんな風になったのだろう。基本私とオオカミで会話していて、気が付いたら4,5人くらいで話しているのが最近よくあるパターン。
「次の英語、予習してきたか?」
オオカミがだいたいこんな風に話し始めて
「してるわけないだろう。」
で、私がいつものごとくの返しをする。
「俺そろそろ当たりそうだから予習みせてくれよー。」
脇ですぐにちょっかいを出してくるのは、黒木修。オオカミとも良くつるんでいるのが彼だ。
修はオオカミのノートをあさりだして離脱。
「ペンギンになりたいな。ペンギンに。」
また言い出したよ、とばかりのオオカミは気にしない。
だいたい私は気分が悪い時にはペンギンうんぬんを語りだす。
普段はいちいち突っかかりもしないようなセリフだけど今日に限ってオオカミの反撃があった。
「ペンギンって言ったって、あれはあれで過酷な生活を送らないといけないんだぞ、赤ずきんには無理。」
「じゃあ、そこの動物園にいるペンギンでいいよ。」
「それ、ペンギンである必要があるのか?」
「またまた、二人で何話してるのー?まぜてよ。」
で、やってきた二人組。小林香奈と高橋めぐみ。これで私たちの集団はだいたい全員集合する。ここにランダムに誰か入るけど、まぁだいたい基本メンバーはこの5人だ。
黒木に小林、高橋、それと私とオオカミ。
もちろん私やオオカミにも苗字はある。名前にコンプレックスがあるなら苗字呼びすればいいのに、と何度かそんな風に言われたこともあるし、自分たちでもそう思う。けれどオオカミと私の間ではごく自然にオオカミ、赤ずきんと呼び合うわけだ。
理由があるとすれば、純粋にお互いの名前を自分たちを指すだけの単なる記号そして呼びあえるから、だろうか。
どことなくメルヘンになりがちな名前をそうやって物語から外して呼びあうことができるのは、貴重なことかもしれないし、そうでないかもしれない。
ともかくオオカミとの間のことは別として、かなり幼いころから私とオオカミは苗字呼びされてきた。それが周囲からの気遣いでもあり、違和感でもあり続けた。
自分についてはなんとも言い難いけれど、オオカミについては名前にそれなりの由来があってのことだというのは知っている。でも、そんなことを人にいっても仕方のないことなのかもしれない。
ぼんやりしている間に隣ではおかしな話が始まっていた。
「なんか沢城たちって、いっつも変な話してるよね。」
小林と高橋が2人で勝手に納得し合いながら、頷いている。
「変な話ってなんだよ。」
これにばかりはオオカミに同意した。変な話って一体何だ?
「いや、なんかどことなくそんな雰囲気をかもしだしてるのよ。」
そんな雰囲気醸し出したくない。
「そうだな。赤ずきんはそうかもしれないけどな。」
さっきまで食ってかかっていたくせに、オオカミは自分だけを切り離そうとしている。薄情な奴だ。
「そんなわけあるかよ。」
腹いせにオオカミの教科書にこっそりペンギンを書きこんでおいた。これを授業中にでも見つけて悔しい思い出もすればいい。
そんなことをしていたらチャイムが鳴った。