プロローグ
いつも通りの日常だった。そう、そのはずだった。
朝起きて、いつも通りに寮を出て、大学へ向かう。
「教科書に、ノート、筆箱に、水筒、財布に携帯・・・よし、忘れ物なし」
俺、如月桂はいつも通り、持ち物をチェックし尞を出、歩いて三十分ほどのところにある大学へと歩みを進めていた。
「今日もいい天気、だけど、今日のドイツ語二時間連続は答えるな」
などと、独り言をつぶやきながら目的地へ向かっていると、突如目の前の景色がゆがみ始め、まぶしい光が一面を覆った。
「ここは?」
光が晴れ、あたりを見渡すと、見慣れない大地が広がっていた。
しばらく、歩くと、そこには村のようなものが見えた。
その村に入ると、そこは活気にあふれ、老若男女皆笑顔で生活せていた。
「そこの君」
「はい」
突然、老人に話しかけられ返事をした。
「見慣れない人じゃの、君はどこのものだ?」
「えっと、日本の東京の」
「にほん?どこじゃそこは」
話がかみ合わない
「えっと、今何年ですか?」
「光和2年(179年)じゃ」
「光和2年・・・・あと5年で黄巾の乱じゃないか!」
一人驚くが、周りの人は意味も分からず困惑している。それもそうだろう、俺はあの光によって過去に飛ばされてしまったようだ。
「えっと、図々しいですが、村に住ませてもらえませんでしょうか?一文無しで行くところのないので」
迷惑なことは分かっているが、生きるためだ。
「ふむ、いいじゃろう、じゃが、村の一員になるからには、働いてもらうぞ」
「はい、ありがとうございます」
俺は精一杯頭を下げた。
それから俺は村で暮らし始めた。初めは未来から来たため、薪割りのやり方や狩りの仕方もわからず悪戦苦闘していた。そもそも元の世界では飯は黙っていれば出てくるものだったが、この世界では、一日の収穫によって飯の量が決まるため、面倒だと言って狩りをサボるわけにもいかず、体力がなく軟弱な体でも必死に村の人たちについて行って狩りをした。初めて仕留めたのは小さなウサギだった。仕留め方は村の人たちが俺のほうへ誘導してくれたものを剣できるという単純な作業だったが、今でも覚えている動物を切るという感覚を、そして生き物を殺したという感覚がすぐに襲ってきた、その場に泣き崩れる俺を、村の人たちは慰めてくれた。
そして、村に来て一年がったころから、俺の仕事はもっぱら狩りと農作業になった。この時期から俺はこの先のことを考え始めた。4年後に黄巾の乱、そして、反董卓連合と群雄割拠の時代に突入していく。もし俺の知っている通りの未来になるなら、戦乱に巻き込まれ俺は死ぬだろう。そう思い至った俺は漠然と武術を村一番の武闘家に学び始めた。農作業で足腰を鍛え、狩りで素早い動きになれ、動体視力を鍛え、帰ったら稽古するという毎日を送った。
二年がったころには大分武術になれウサギ程度なら仕留められるようになった。だが、剣で切るのとはまた違う感覚があって初めは慣れなかったが、今はある程度慣れた。他の生き物のおかげで生きているということを身をもって知れただけでもこの世界に来てよかったと思う。元の世界ではそのありがたみを感じることはあまりなかったからそう思う。だが、人を倒せるに至るにはまだまだ掛かりそうだ。このころから勉学にも励むようになった。乱世を生き残るためには純粋な武力だけでは生き残れないと思ったからだ。手始めに子供に混ざって字を覚え始めた。そして、それから兵法書、歴史書、小説、専門書など読めるものをかったぱしから読んだ。元から本が好きだったので本来の目的も忘れ本に没頭した。
三年たったころには、人も倒せるほど武術も上達し、師匠には免許皆伝をもらった。そして暇なとき読書によって得た知識を村の子供たちに教えたりするようになった。子供は純粋に話を聞いてくれ教えるこっちも楽しかった。このころには武術の稽古の合間に棒術を自己流で稽古し始めた。たまに師匠やそのお弟子さんたちに相手をしてもらったりしながら棒術にも磨きをかけていった。
四年目に入ると黄色の布を頭に巻いた賊がしばしば村の近辺に出てきはじめた。やはり来年黄巾の乱が起きてしまうようだ。賊退治で初めて人を殺した。動物を殺していたので慣れていると思ったが違った。さっきまで目の前で動いていた人が死ぬのはまた違った。手刀で首の骨を折ったり蹴りで肋骨を折る感触は気持ちのいいものではない。だがこれで俺も殺人者になってしまった。村を守るためとはいえ人の命を殺めたことに変わりはないのだから。その重みを背負っていかなければならないと思う。来たるべき乱世のために自分用の武器を作った。普段は武術でもいいが、さすがに大人数相手だと棒術のほうが戦いやすい、だがそれでもつらい時のために、仕込み槍を仕込んだ棒を作った。どうしても危ない時に不意打ちで相手を殺すため、殺傷能力を追加して効率よく敵を殺すために仕込み槍を追加した。
五年目に入ってしばらくしたる夜、初めて村に来た時僕に声をかけてくれたおじいちゃんと僕は話していた。そして、僕はすべてを話した。実は未来から来たこと、この先に乱世が起こること、そのほかにもさまざまなことを話した。
おじいちゃんは初めは目を見開き驚いていたがすべてを話し終えると、笑って
「ようやく話してくれたの」
と言って僕の頭をなでてくれた。おじいちゃんは疑問に思っていたらしい、俺と村の皆にある壁のようなもの、そして、何かに追われるように日々さまざまなことに励んでいること。
「今やおぬしはこの村で一番強くなり、学もある、もしこの先乱世があるなら自分に正直生きることじゃ」
自分に正直に
「ありがとう、また明日」
「おう、またあしたのう」
そういって別れた。いつも通りの言葉。だけど・・・・
おじいちゃんにすべてを告白してから数日が経った。おじいちゃんの口から村のみんなに伝わり俺は差別されると思ったが、どんな人だろうと俺が俺であることには変わらないと村に人たちは受け入れてくれた。みんなと農作業に汗を流し、皆でにぎやかに飯を食べ、皆とこれからを語る。こんな日常が続けばいいなと心から願った。だがその願いは無残にも裏切られることになった。黄巾賊がまとまった軍を率いて村を襲った。俺たちは応戦したが多勢に無勢だった。
「ハアアアアアア」
棒を使い首の骨を折りその勢いで後ろの敵も巻き込んで吹っ飛ばす。二人を飛ばしたころ敵の親玉は目的を達成したのか撤収を始めた。村に残ったのは俗に蹂躙された生々しい爪痕。さっきまで笑っていた仲間の死体のみだった。
「どうしてこんな」
目の前に惨状に悔しさがこみ上げ、怒りがわいてきた。
「桂」
がれきの中からおじいちゃんの声がした。
「おじいちゃん!」
俺は急いで瓦礫をどかし何とか助けだすがおじいちゃんの足はつぶれ出血も多い
「わしはもう助からん、だからその前に」
「助からないなんてそんな!」
「いいんじゃ、わし長く生きた、だが、村の若者たちまでこうして死んでいったのは何よりも悔しい、だから桂よ、二度と賊が出ないような、そんな強い王になってくれ、なれないならそのような主に仕えてわしたちの無念を晴らしてくれ!」
「わかった、わかったよおじいちゃん、約束する」
それを聞くとおじいちゃんはいつも通りの優しい笑顔で、息を引き取った。
村が賊に襲われ数日が経った。生き残った人たちはちりじりに別の場所へ逃げて行った。俺は旅に出ようと思ったが、出る前にこれで死んでいった人たちの記念碑を造ろうと思い造った。死んでいったすべての仲間の名前を彫った。そして、それを村の入り口に建てた。ちょうどそのとき遠くに砂煙が立ち、官軍が来た。
side華琳
ひどい惨状だった。私たち官軍が手をこまねいている間にもこうして村が、力のない民たちが犠牲になっているのだ。そして目の目の村に一人の男が立っていた。見慣れない格好の男が石碑を前に立っていた。
「そこのあなた」
私は何かを感じこの男に話しかけた
side out
「そこのあなた」
振り向くと官軍の大将と思われる少女が立っていた。
「なんでしょうか?」
「あなたはこの村のものかしら」
「はい、といっても俺以外はもう残っていませんが」
自嘲気味に笑いながら言った。
「じゃあ賊を退けたのは」
「俺しか残ってないがこの村の男たちだ」
「そう、あなたこれから行くあてはあるかしら?」
勧誘か?確かに俺には王の器はないかもしれない。目の前の少女からはすさまじいオーラを感じる。だが、俺が求める主かどうか確かめさせてもらう。
「ない、だが一つ聞かせてもらう、あなたが描く理想は何ですか?」
「私は、覇道ですべてを治めるつもりよ」
覇道、目の前の少女はさしずめ覇王か。ならこのようなことは二度と繰り返されない世を作ってくれそうだ
「わかった、不肖如月桂、あなたに忠誠を誓おう」