俺等の境界線
俺と竜で東條を保健室へ運んだ。
まあ、基本的(正確には全面的)に竜が運んだんだけどさ。
これは別に馬鹿にしてる訳じゃないけど、体が弱いって大変だなって思う。
それに、最近悪化しているようにも見えるし……。
でも俺は何となく中の何となくだけどさ。
竜も結構大変そうに見えるんだよね。
何て言ったら良いんだろう。
いつも俺達が見てるところよりもっとずっと遠くを見てる気がする。
「東條さん、大丈夫ですか?」
竜は心配そうに、保健の先生に問いかけた。
「ええ、君達が運んでくれたおかげよ」
それを聞いて、俺等はほっと胸をなでおろした。
「それよりご両親に連絡がつかないのよ……。貴方達帰る時送って行ってもらえる?誰もいない家に帰すのも心配だし……」
「はい。大丈夫です。」
めんどくせえなあ。
まあ竜がそう言うんなら仕方ねえか。
でも何か嫌な予感がすんだよな。
野生の感ってやつ?
俺と竜の関係は微妙な関係。
すげー仲が良い訳でもないし、悪い訳でもない。
でも竜は俺のお気に入り。
興味があるんだよな。
俺等高校生と一緒だけど、何かが違う。
何かが違うけど、俺等と一緒。
重たい何かを独りで抱えて苦しんでる。
でも、これだけは見ただけで分かる。
彼奴はただのいい奴だ、って。
東條はマシになったのか、さっきほどは汗もかいていないし、息も穏やかになっていた。
気持ちよさそうに眠っている。
その側で、竜が心配そうに東條を見ている。
そして、何かを呟いた。
「千春……」
俺は竜が言った言葉を聞き取れなかった。
「え?何か言った?」
「……別に」
何故かはぐらかす竜。
あーあ。
やっぱり俺はまだ入っちゃいけねえのか。
竜は俺や皆に対し境界線を引いている。
そこには誰も入れようとしない。
だから俺は入らない。
その代りお前がそこから飛び出して来た時は……。
俺が死ぬほど聞いてやるよ――――――。