落し物2
私は小さい頃から体が弱かった。
外に出るのも限られている。
勿論、友達と遊んだことなんて一度もない。
そんな私に両親はとても気を使う。
最近は異常なくらい。
言われなくても分かる。
――――――多分私はもう長くは生きれないんだろうな。
昨日私は変わった男の子と出会った。
それは私が熱を出して早退しようとしていた時。
2組の窓に一人の男の子を見つけた。
自殺をしようとしているのかと思った。
『大丈夫。僕は自殺しようなんて思ってないよ。ただのさぼり』
私の早とちりだった。
恥ずかしさに、頬が赤くなった。
その時、男の子の目は私を見ていた。
でも、その目は私を見ていて私を見ていない。
誰を見ていたんだろう?
私はそんなことを考えながら、学校へ行く支度をした。
昨日早退したのは正解だった。
今日は調子が良い。
このままなら、今日は最後まで学校にいられそうだ。
インターホンが鳴った。
「おはよう、桜。今日は学校行けるんだね」
インターホンごしに幼馴染の美代が話しかける。
久しぶりに一緒に行けることが嬉しくなり、急いで玄関へ行く。
扉を開くと、美代が微笑みながら待っていた。
「今日は調子がいいから。お母さんも行っていいよって」
「そうなんだ。でも嬉しいな!昨日はお母さんに送ってもらってたもんね。だから桜と一緒に学校行けるの久しぶり!」
本当に嬉しそうに笑う美代。
私と同じことを考えていた。
どれだけ私のことを大切に思ってくれているかがすごく伝わってくる。
でも、何だか逆に辛い。
お別れするとき、その分美代を悲しませてしまう。
嫌われた方が良いのかもしれない。
でも私には……。
「ありがとう」
それしか言うことが出来なかった。
美代と別れ、教室の前へ行くと、昨日の男の子が手月君(咲耶)と話をしていた。
私が見すぎたせいか、男の子と目が合ってしまった。
目のやり場をなくし、目が泳ぐ。
挙動不審な私に、手月君が声をかけた。
「こいつ東條さんのこと好きなんだってよー」
ふざける手月君。
すかさず男の子が否定する。
「違うよ。忘れ物届けようと思って」
そう言って、男の子はポケットをごそごそとあさり、生徒手帳を取り出す。
それは私のものだった。
「わざわざありがとうございます……」
なんだか顔が熱い。
嬉しいからかな。
あれ……?
でも、なんだか頭もくらくらしてる。
「大丈夫……?」
心配そうに私の顔を覗く。
大丈夫。
そう言いたいけど言葉が出てこない。
足もおぼつかなくなってきた。
ふらふらと何かに寄りかかる。
その何かが私を受け止めた。
「え……ちょ……。
汗すごいよ……?
まさか熱があるんじゃ……!?」
その何かの声がだんだんと遠くにいるように聞こえてくる。
視界がかすむ。
息も苦しい。
私はそのまま気を失った。
あれ?
何だか気持ちが良い。
ふかふかしてる。
遠くから誰かの声が聞こえる。
それはとても悲しそうな声。
その声は小さく呟いた。
――――――「千春」と。