向日葵学院
気が付けば、時代は平成へと変わっていた。
ある日僕は河原で星を眺めていた。
無数の星が夜空にきらめく。
唯一のお気に入りの場所。
すると、僕に一人の若い男が近寄ってきた。
耳にはピアス、首にはジャラジャラとした鉄のネックレス。
がたいもごつく、鋭い目つきは今でいうヤクザを思わせた。
その男僕に声をかけた。
『今日から俺達の家族だ』
僕等は初対面。
それなのに無理やり僕の手を引っ張り、ある場所へと連れて行った。
つぶれそうな小さな孤児院。
たくさんの子供達が僕を出迎えた。
『おにいちゃん、おなまえは?』
『……滝川 竜左衛門』
僕の名前は現代の子供達からすれば変わった名前なのだろう。
少し不思議そうな顔をして僕を見ていた。
時代はやはり変わっているのだ。
『好きな食べ物は?』
『……白米』
『はいはいはーい!チューしたことありますかー?』
『……ないよ』
馬鹿な質問をした男の子と、それに真面目に答えた僕。
それに対して子供達が笑った。
人と話したのは久しぶりだった。
今までは誰にも見つからないように隠れて生きてきた。
何だか暖かい。
気付けば僕は笑っていた。
眩しい朝日が顔を出した。
そっと目を開けて起き上がる。
久しぶりに昔の夢を見た。
僕は今も孤児院においてもらっている。
もう3年目位だろうか。
出るにも出られず、僕はずっと此処にいる。
あの日、院長は僕に何も聞かなかった。
そして、僕をずっと此処に置いてくれている。
「りゅうちゃん、ごはんだよー」
「こなかったらおれがたべるぞコノヤロー!」
ノックもせずに僕の部屋へちび達が入って来た。
翔琉が僕の上に飛び乗ったせいで咳き込んでしまう。
琴音は僕の腕を引っ張った。
「りゅうちゃんだっこー」
「じゃあおれかたぐるまー!」
「ことちゃんがさきにいったの!かけるちゃんじゃましないで!」
「いいじゃんか!いっつもことねばっかずるい!」
これは日常茶飯事。
毎朝同じような事で喧嘩がはじまる。
結局は僕がなだめなければならない。
「喧嘩は駄目だよ。順番ね?」
「やだー」
「やだよーだ!」
どうやら聞く気はないようだ。
ちび達は僕の体へよじ登る。
結局僕は、両方を同時にやるというはめになってしまった。
何だろう、この朝からのパパ状態は……。