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思い出すだけで

《姫星織彦》


私は電話切る。


「……どういうことかしら?」


明星綺羅は笑顔で、そして不思議そうに尋ねる。


「……あなたの誘いはとても嬉しかった。川君にも言われてた、いろんな人と知り合って、認めてもらって友達になることを、」


「……。」


「あなた達が私を認めてくれることも、私が本当の素顔をだせるのもわかってる。」


「じゃあどうして。」


「それでも、……私を思ってくれても、川君を思ってくれ・・・・・・・・てないあなた達とは・・・・・・・・・仲良くなんか出来ない!」


「……そんな事、言ってないわよ?」


「……無駄ですよ。……あなたは最後に言いました。『私と仲良くなったと言って』と、」


「?それがなにか?」


「そうですね、言葉は別に嘘は含まれていません。……ですが、」


「……。」


「あなたの好意が私に嘘だと教えるんです!」


「ッ!!!」









《明星綺羅》


朝倉さんから天野川には友達の裏切りを味わってもらい仲間との信頼を疑わせると言っていた。だから、姫星さんの言葉で信者と仲良くなったと言えば、天野川は裏切りかもと疑うだろうと思って仕向けたのに。…………まさか、バレるとは。朝倉さんの話じゃ言葉の嘘を見抜けるとは聞いてたけど、思いの、感情の嘘まで見抜けるなんて聞いてないわよ。










「……バレちゃったか。」


「……。」


「もうすこしで、天野川の心に疑心暗鬼を与えられたのに。」


「私に嘘は通じません。」


「本当にね、あなたには嘘をつかずに籠絡するつもりだったのに。まさか、心の真偽まで見抜けるなんて思わなかったわ。」


「……つい、最近になってわかるようになったんです。……きっと心に触れ合う機会が増えたから、」


「そんな理由で、普通は無理なんだけどね。……素直に騙されてもよかったんじゃない?」


「…。」


「私の心に嘘はあったかもしれないけど、言葉には嘘をついてないわ。彼がいなくなればあなたはいつか1人になる。…彼が少し特別なのよ。私達のように心の性別に悩むこともなくそれを理解して気にせず接するなんて。」


「…。」


わかってるんでしょ?おぼえているでしょ認めてくれないことが、理解してくれないことが、否定され続けることが、……自分の中で閉じこもることが、孤独が、どれだけ辛いか。」


「…。」


「また戻るの?その場所に……。次にいつ、私達のような人と出会えるかわからないわよ。」


「…。」


「これから、会う人すべてに否定され苦笑され続けるの?親に理解されず忌避な目で見られ続けるの?自分の中でこの気持ちを誰かに打ち明けられずに、耐えれられる?……これから先、あなたは生きてて良かったと……思えるの?」


「……。」


「あなたは生きる道があるのに今の現状が居心地がいいからと無視しようとしてる。」


メリットは教えた。大丈夫、天野川がいなくても生きられる場所は他にもあると。


「私達はあなたの側にいれる。ね?仲良くしましょう?」



デメリットは隠した。天野川の事を除けば私の言葉は純粋な好意、あなたはそれに耐えられない。……さぁ、来なさい。


「それが?」


「……え?」


「川君がいなくなったら1人?だからどうしたんですか?あの時の孤独を知ってるから戻れない?当たり前です。戻ることなんてもう出来ませんよ。」


思い出すだけで震えが止まらない。毎日が自己犠牲で自分の存在を殺す毎日、怖い怖い怖い怖い怖い怖い……知ってる。……だけど知ってるから。


「……その孤独を、川君が……私を救ってくれた事が!それがどれだけ嬉しかったと思ってるんですか!」


「……。」


「川君から貰ったものが、どれだけ私を勇気づけてくれたか!どれだけ私を支えてくれたか!……どれほど感謝してるとおもってるんですか?」


「……。」


「誰かが側にいなくてもいい。」


いったいどうやってあの頃に戻れと言うんだろう。


「みんなにわらわれたっていい。」


私の否定を、嘘を、心を、すべて見つけてくれたあの人と出会ってしまったというのに。


「この先、川君が私の前からいなくなってしまって、」


忘れることなんてできるわけがない。


恩を返したい。



川君のためなら、



「私が1人になったって!」


もうすべてを捨てることになったって。


「誰にも打ち明けられなくなったって!」


自分の存在を殺すことになったって。


「この気持ちを忘れたりしない!」


川君を、……友達の幸せを望み続ける。



「……私は1人でもいい。」


昔に戻った、でも、昔と同じじゃない。


だから、耐えられる。


















1人じゃないよ。



ふと、私の心から声が聞こえた気がした。



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