髪の行方
《圓城陽奈》
キン!キン!
金属のぶつかり合う音が響く。
「はあああああ!!」
圓城が刀で羽衣に斬りかかる。
「ふっ、」
それをハサミで捌く。
キン!
羽衣は空いている左手で圓城の腹にフックを、
「くぅ!」
圓城の体がくの字に曲がり、…その空いた空間に足を持ってきて、横蹴り!!
ドンっ!!!!
「ッ!!!」
圓城の体が信者の屍の中に吹っ飛んだ。
「……これで終わりか?」
「……。」
スピード、パワー、テクニック。どれをとっても勝てるものがない。……本当、何やっても天才ですか、……そうですか。
私は信者達を払いのけ起き上がる。
「…まだまだですよ!」
「勝ち目はない…さっさと諦めればいい。」
「諦めてたらここにいません!……それに、私が、姉御といつか戦うことになるだろうと考えてないと思いますか?
」
「ほう。」
圓城が左手に数枚の紙を持つ。
「準備くらいしてます!」
圓城は駆け出す。
「はぁ!」
再度、切りにかかる。
「……また同じ手か、」
呆れたのか、羽衣は余裕そうにハサミで防ごうとする。…圓城はそれを見て笑い、左手に持っていた紙を一枚、羽衣の右側に投げる。
「魔法カードオープン!『こっち向いて姉御』を発動!」
「何を馬鹿な……ッ!!!」
首が、ギュン!と音が聞こえそうな速度で羽衣が紙の方を向いた。そして、私の右側には揺れるポーニーテールが現れた。
「スラッアアアシュ!!!」
「ッ!!!」
スパッ!!!!
羽衣の髪が数本はらりと落ちる。……間一髪の所で避けられた。
「……惜しい。」
「…やってくれる。」
羽衣はさっきいた場所から数メートル離れた場所まで退避、そして、チラッとさっき掴んだ紙を見る。
それは写真で、授業中に気持ち良さそうに居眠りしている川が写っていた。
……キュン。
「……小癪な真似を。」
「お互い、ツボは心得ていますから。」
「……その写真はすべて奪う。」
「……あげません。見せるだけです。」
「……。」
「……。」
ザッ!!
相手に向かってお互いが駆け出す。
「はっ!!」
スピードは、やはり羽衣の方が速い。ハサミを広げ、圓城の両眼に刺そうとする。
「くっ⁉︎」
圓城は慌ててしゃがみなんとか避ける。
「…狙いこっちだ。」
だが、急な体の動きにポーニーテールがついてこれず、まっすぐ縦に伸びてしまった。
「しまった!トラップカード!!『ターゲットチェンジ』を発動!!」
圓城は急いで写真を真上に放る。
「今さら遅い!!…ッ!!!」
ハサミで切る。
写真を。
その隙に転がりながら避難する。
その場にはらりと落ちる写真。……山下さんを押し倒す川君の写真。……真っ二つだ。
「…くそっ!つい体がこっちに反応してしまった。」
「無理ないです。……川君のイチャコラしてる写真なんて殺意しか湧きませんから。」
「……こんな写真がまだあるのか?」
「まだまだあります。」
「川は学校で何をしてるんだ。……なるほど、確かに陽奈の他にも敵は多そうだ。」
「はい。」
「……まぁ問題ないか。所詮、私以下みたいだしな。」
「……。」
「前に言っていたな。私と陽奈は月とすっぽん、魔王とスライムと。」
「……。」
「スライムが魔王に勝てると思ったか?」
「……スライムにだって、マダンテくらいあるんですよ。」
「それで勝てればな。……今から本気でいく。引導を、渡してやる。」
「……私が、私が勝ちます!……今ここで、姉御を越える!」
羽衣と圓城が構える。
勝負は、一瞬だった。
お互いが、髪を切り落とした。
……だが、
先に一房の髪を落としたのは
圓城だった。