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8話、起きて学校へ。

《???》


私は貴方を愛している。好きで好きで好き過ぎて貴方の全てを壊してしまいたくなるくらい。いつでも触れられるほど近くにいるのに貴方は私に気付いてくれない。私は他の女と抱き合い触れ合う貴方をただ、見てるだけ。


私の方が貴方を知ってるのになんで貴方は他の女を選ぶの?許さない赦さないユルサナイ!……そうだ、貴方に気持ちが伝わるまで手紙を書こう。毎日毎日、それこそ私の事しか考えられないくらいに。








《病院》



「いったいどうしたらこうなるんだい?完璧な処置の上から怪我が悪化するなんて。……まるで傷口に塩を塗り込まれたみたいな。」


……正にその通り。


「まぁ、見た目は酷いけど、問題はないよ。包帯だけ取り替えれば大丈夫そうだ、」


「そうですか。ありがとうございます。」


医者に礼を言い、病院を出る。昨日は大変だった。いや、今日なのか?ストーカー事件がお遊びに見えるくらい夜中圓城に痛めつけられた。決してエロい事なんかなかった事だけ伝えたい。


時間はすでに昼過ぎ、この時間になると学校に行きたくなくなるから不思議だ。…このままサボってしまうか。いや、無理だ。そんなことしたらますます圓城に怒られる。俺はため息をはきながらトボんトボと学校に向かった。






《翼陵高校探偵部前》



取り敢えず、二時間目が終わるまで部室でサボろう。途中から教室には入りずらいし、圓城に何て言い訳するか考えないとだし。俺は扉を開けた。


「おはようだな川。えらく重役出勤だがいつからそんな大物になったんだ?」


まだ心の準備も出来てないのにそこには眠たそうにアクビをする圓城陽菜がいた。さながらバイオハザードでゾンビが現れたのに銃に弾が入ってなかった時みたいな心境だ。・・・おかしい、まだ二時間目は二十分は残ってるのに。

「あぁ、これでも探偵部の副部長を務めてるからな。てか、何でいる?まだ授業中のはずだろ。」


「私が探偵部の部長だからだ。」


お互いにまったく理由にならない言い訳を言う。まぁ、圓城がここにいるのはおそらく寝不足だろう。……昨日、朝まで俺を苛めてたからな。


「たく、優等生なんだからサボるなよな。」


「教室で居眠りするわけにはいかないからな。仕方が無いだろ。」


「まぁ、確かにな【天才】と呼ばれる圓城陽菜が授業中居眠りしてたら格好がつかないもんな。」


「別にそれはどうでもいいんだが、仕事が溜まっていてな。先にそれを終わらせようと思ってね。」


見ると大量の書類が机に積み重なっていた。すげー、とても一日で終わる量じゃないのに。


「昨日は部活動勧誘であまり出来なかったし、お前も怪我するし、暫く依頼を取る量を減らそうと思ってね。」


「それはいい事だ。最近、仕事があり過ぎて大変だったんだ。」


「おまけに今年は部員が一人も入らないし。」


「……悪いと思ってるよ。そういえば昨日はあいつが来てなかったよな」


「あいつ?」


「圓城命の哀戦士だよ。普通だったら絶対に入部試験に参加してる筈なのに。」


「……あぁ、あいつか。」


あからさまに嫌な顔をした。そんなに嫌いかな?見てて面白いのに。


「圓城の側にいられるチャンスだったのにな。あいつなら圓城の変装も多分一発で見抜いてたと思うぜ。そういや学校にも来てなかったな。」


間違いなく入部試験は合格出来てただろうに。


「……あいつは、昨日は朝から一人で動物園にいた筈だぜ。」


「動物園?平日にか?わざわざ何で?」


「私が呼び出したからな。……デートと称して。」


「……鬼か⁉」


「あいつがいたら昨日の試験が全て駄目になるからな。仕方ない。」


「まぁ、確かにな。……あいつの事嫌いなのか?同じクラスだろ。」


「別に嫌いではない。ただ、鬱陶しい。」


そこまで言うか。


「それに部員にしなくても言う事聞いてくれるしな。だから、部員にするなら他の奴がいいな。」


それを見惚れるような笑顔で言ってきた。……やっぱりこいつ真っ黒だ。


「そうですか。なら代わりに仕事を俺も手伝うよ。二時間目終了までだが。」


少しくらいなら何とかなるだろう。そう言った俺に圓城は首を横に降る。



「今ある依頼はだいたい終わらせたよ。だから特にない。」


「マジか⁈」


この分厚い書類の山を?


「基本的に相談事が多いからな。主に恋愛相談とか。だから、私が知ってる情報、噂を使って無理矢理、相手と結びつけたり、離したり、諦めさせたり、教えたりするだけなんだよ。」


「聞いてると極悪にしか聞こえないんだが。」


「恋愛なんてそんなものだよ。ちょっとドラマのような体験させてあげればコロリと堕ちるさ。」


「極悪だな。」


否定しようがない。


「あれ?じゃあ今日の部活は終わりか?」


「いや、一件だけ残っている。何故か恋愛相談にしては妙でな。もう一度話を聞こうと思ってな。」


「へ~、いつ?」


「昼休みに相談を受ける予定さ。だから」


そう言ってソファーにゴロンと横になる。


「……昼休みになったら起こしてくれ。」


「ずっと寝てる気か!」


「乙女には睡眠が必要なんだよ。……お前のせいで。」


どうやらまだ根に持っているみたいだ。


「俺は寝かせろと言ったが。」


「あぁ、永眠させてやろうと思ったよ」


「どんな聞き間違えだ⁈」


「……お前も聞き間違えたくせに。」


「え?なんて?」


かなり小さくて聞き取れなかった。


「なんでもないよ。」



そう言って圓城は俺に背を向けて喋らなくなった。








《Dクラス》


二時間目の終わりのチャイムと同時に俺は自分の教室に入った。



「おはよう。」


「おはよう。てか、もう昼だぞ。」


蒼夜が普段通りに挨拶をしてくる。


「いや、学校で会ったならまずはおはようだろ。」


「まぁ確かに、」


「それよりも。」


俺は蒼夜の前に歩いて行ってそのまま蒼夜の手に



グキッ!


関節技を極める。


「お前は俺に言う事があるだろ?」


「痛い!痛い!なんの事だ?」


「入部試験の時真っ先に逃げただろ、ストーカーにやられてた時黙って見てただろ。」


「そ、その事か!いや、悪いとは思ったが仕方がなかったというかだな。」


「お前がもうちょっと早く助けてくれてたら俺はあんな目に合わなくてすんだのに!」


「ちょっと待て!なんの話だ?せ、説明を?」


俺は夜中に起こった悲劇を蒼夜に話した。蒼夜は頭を抱えてしまった。


「……そうか、圓城もそこまでやったのか。まったく、よくやるよ。」


「だろ。てかやり過ぎなんだよ圓城は!」


「いや、川。お前が馬鹿過ぎなんだよ。どうしてそこまでしてもらって気付かない⁉」


「え?俺が悪いの?」


ちょっと待てよ。あの痛みで身動き取れない状態で死の危険以外に何に気づけと?


「あのな川!圓城はな『天野君大丈夫ですか⁈』ーー」


勢い良く蒼夜の話を遮って山下杏奈が声をかけて来た。そういや同じクラスだったな。


「おう、山下さんおはよう。寝坊せずに来れたか?」


「ね、寝坊したのは貴方じゃないですか!私はちゃんと来ましたよ。」


「あぁ、そうだったな。悪い悪い。」


「そ、それに昨日私はずっと電話してたのに何で出てくれなかったんですか!」


「え?マジで⁈」


俺は携帯を見てみる。



着信12件。


おお~、これはヤバイ。俺はゆっくりと携帯を閉めると。山下さんの顔を見る。


「すまん。寝てたみたいで気付かんかった。」


「もう!本当に心配したんだからね。」


「はい。」


どうやらかなり心配させたみたいだな。申し訳ない。


「電話かけて来たって事は何か用事があったのか?」


「は、はい。少し話があるんですけど。」


なにやら言いづらそうで少し声が小さい。


「んで、どうしたの?」


「あ、実は昨日、ストーカーが捕まった話を黒野君に聞きました。」


なんだ、知ってたのか。蒼夜の方を見ると顔に右手を置きまったく別の方向を向いている。……さっき話を遮られたのが応えたか。


「あぁ、そうなん……あれ?じゃあ用事って。」


これで安全!もう心配しなくていい筈。……なのに何故か山下さんの顔は納得のいかないような顔をしている。


「それでてすね、今日は一緒に帰れないんでしょうか?」


俯きがちに言いづらそうに言ってきた。しかも、上目遣いで。


「へ?何で?」


「あ、あの捕まったのは聞いたんですけど、やっぱり不安で。もう少し私が慣れるまで一緒に帰ってくれないでしょうか。」


本当に申し訳なさそうに言ってきた。……それはそうだよな、いくら捕まったと聞いてもまだ暗い道を帰るには不安だろう。


「まぁ確かに。」


「もしかしたら二人目のストーカーが出るかもとか考えてしまって。」


それは否定は出来ない。すでにでている時点で。次出たら三人目だ。


「それに本を買うのは何時でも付き合ってくれるって言ってくれましたよね。」


あぁ、確かに約束したっけ。


「だから、もう少しだけ私と一緒に帰ってくれませんか?」


うーん、どうしよう。確かに二度ある事は三度あるって言うが、……幸い今日の依頼はあと一件、しかも依頼の量も減らすって言ってたし。部活外なら大丈夫かな。


「部活もあるし毎日は無理かもしれないけど、それでもいいか?」


「は、はい!もちろんです!」


とても嬉しそうに頷く山下さん。……まったくそんな笑顔を見せるから変な男が寄ってくるんだぞ。自覚あんのかね?


「じゃあ、今日部活が終わったらテニス部で待ってるから。」


「はい。よろしくお願いします。では、また。」


そう言って山下さんは自分の席に戻っていった。横を見るとさっき以上に頭を抱えている蒼夜がいた。


「……どうした?」


「いや、……なんでもない。」


……とても大丈夫そうではないんだけど。そのまま何も話さずにいるとチャイムがなり、休憩時間が終わりを告げた。





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