姉対弟
《月宮円》
「……あんた頭、大丈夫?」
月宮判は苦笑する。
「酷いな。……僕が伊沙の事をどれだけ好きか知ってるくせに。」
それは知ってるわよ。惚気られるくらいだったのだから。……ただ、別の意味で、
「判、いったい。」
「それより聞いてよ!朝倉がさ、僕の側に伊沙がいるんだって!ずっと僕の事を心配で見てくれているんだって!」
「……。」
ここまで判も馬鹿じゃなかったはず、……朝倉に洗脳されたか。……まぁ、相手がインチキじゃないのがタチが悪いわね。
「…それでさ、天野が死んだら、……誰が伊沙を殺したか聞いてくれるんだと。」
「……。」
……まだこいつはそんな事を、いつまで気にしているつもりなのかしら。
「今、朝倉が天野を殺しに行ってるんだ。……だから、邪魔する奴は誰だろうと容赦しない。」
「……私が邪魔するとでも?」
「…するつもりだろ?だから、こんな場所で待ってたんだろ?」
凄い勘違いよ、ただの散歩なのに。
「そんな事ないわ、天野なんて死ねばいいとすら思ってるし。」
「嘘だね。……姉さん、じゃあなんで……僕から逃げないのさ。」
「……。」
……やっぱり、おかしいと思った。判の奴、自覚してるのね。
「さっき倒した連中みたいに僕を倒せると思ってる?」
「……。」
距離良し、人数良し。……なのに、
「出来るかな?僕が何をすると思う?当ててみなよ?……姉さん。」
「……。」
……判の頭の中が読めない事を。
「……心が、読めないでしょ。」
「……。」
「実は姉さんのサトリ、心が読める能力を使えない状況が3つある。」
「……。」
「ひとつは思考が複数ある時、人数が多い時や考えてる事がたくさんあったり、強すぎたりするとたくさんの思考がごちゃまぜになって、読み取れない。」
「……。」
「二つ目は思考速度があまりにも速い時、頭の良い人の計算に普通の人はついていけないように思考が次々と変わっていくとそれにサトリの能力が追いつかなくなる。」
「……。」
「そして、3つ目、……理解が出来ない時だよ。」
ダンッ!!
「…っ!!」
いきなり、判がズボンから取り出した銃を私に向けて撃ってきた。
銃弾が腹に当たり服がジワジワと赤く染まる。
「あはは、姉さん。どうして僕が撃ったか分かる?……空が晴れてたからだよ。」
……薬をやってるわねこの馬鹿!!
どおりで心が読めないわけだ。
「……こんな事していいの?彼女が見てるんでしょう?」
「彼女?ああ、そうだね。だけど、怒ってくれないんだ。叱ってくれないんだ。……ならいいって事だよね?」
ダンッ!ダンッ!
「んっ!!!」
また腹に当たりますます服が赤く染まる。私は膝が崩れうずくまる。それを見て判は右手でクルクル回しながら聞いてくる。
「姉さん、痛いだろ?伊沙はもっと痛かったんだ。なんで伊沙がそんな目に遭わないといけなかったと思う?」
……空が晴れてたから。なんて言ったらまずいわよね。
「僕は許さない。どんな事をしてでも伊沙を殺した奴を地獄に叩き込んでやるんだ。」
……冷静に……言葉を選んで喋らないと。
「姉さん、伊沙は優しく誰からも愛される人間だったんだ。幸せになっていいはずの人間だったんだ。それがどこの誰かもわからない人間に殺された。……何故、この世界にはもっと悪い人間は腐るほどいるだろ!それなのに何故!伊沙が殺されなくちゃいけなかったんだ!なぁ、教えてくれよ姉さん!」
……理由なんてひとつしかないじゃない。
「いったい、伊沙が何か悪かったんだい?」
……………………言っていいのかしら?
「……殺されるから悪いんじゃない。」
「……死ね。」
月宮判は怒り、懐から取り出した銃が火を吹いた。