残り115人
《天野川》
「川、お茶くれへん?」
「ふざけてんのか?」
俺は兄貴と……いや、百夜と家の玄関で向かい合っていた。
「なんや、客に茶を出すんわ当然やろ。」
「客ならな。……そもそも話が違うぞ。何故俺の家に来た。……ここでやり合うのか?」
「ん?自分はそれでもええねんけど、……ある人が嫌がるからせんよ。場所は変えるつもりや。……茶もでんなら今から行こか?」
「……そこに何十人と待ち伏せしてるのか?」
「なはは!大丈夫やって!そこには誰もおらんよ。」
「……そこには?」
「歩きながら話そか。」
「……わかった。」
俺と百夜は家から出た。
《紅夕日&圓城陽奈》
ここは、教団の総本山。田舎で温泉旅館があるくらいしかない小さな村なのだが……その村の住人は全て信者達だった。村の住人を洗脳したのか、敢えてその村に信者達が移り住んだのかはわからないが100人を超える住人たちが教団を守っている。しかも、暇な時でも必ず30人は武装した信者達が待機していてその周りの家の住人も信者達なので一度村に入れば……出られない。
そんな村に二人の少女が二週間前に足を踏み入れた。その少女達もまた……村から出て来ていない。
「…疲れました。」
「確かにね。」
……二人の少女は多くの信者達の屍の上に乗り休憩をとっていた。
「……これであらかたは片付いたわね。」
……本来、朝倉百夜の信者達は300人弱といったところだった。それを二週間で150人に、そして、今日また40人ほど削っていた。
「いい仕事したわ。」
この村に住む信者達は全滅していた。……やり過ぎとはこの事だ。
「後は川君達に任せましょう。」
「…ええ、そうしたいのは山々なんですが、」
「どうした?」
「後一人、なんとかしないといけないようです。」
二人の前に一人の女性がやってきた。
《月宮円》
フードを被った三人の男達に囲まれた月宮は面倒くさそうに空を見上げていた。
「…なんなの?こんな明るいうちから変質者に狙われるなんて。私、何かしたかしら?」
「ひひ、天野川なんかと仲良くなった自分を恨みな!」
信者の一人が月宮に襲い掛かる。
「いえ、天野を恨むわ。」
それを隠し持っていたスタンガンで撃退する。
「……わたしは自分とお金が大好きだから。」
一人、男が倒れた。
「な!情報だとこいつは強くはないと言っていただろ!!」
「……戦闘能力は普通の女性と変わらないとしか言ってない。むやみに襲い掛かるな。……カウンターを食らうだけだ。」
「…ははっ!なら大丈夫だ!俺は元ボクサーだ。女ごときに俺のジャブが見えるかよ!」
そう言って男が襲い掛かる。
「おら!おら!おら!」
「あら、あら、あら、」
……勝負は一瞬だった。華麗なコンビネーションで月宮を殴る。……それを月宮はアイスピックでカウンターを決める。……拳に。
「ぎゃー!!!!」
「無様ね。あなた本当に元ボクサー?私のように蝶のように蜂のように刺せないのかしら?」
地面に転がって呻く男に月宮は止めとスタンガンを近づけ電気を流す。
また一人、倒れた。……残り一人の男。
「ったく、だからむやみに襲い掛かるなと言ったのに。こいつにはどんな格闘家が相手だろうとどんな手を使おうと一対一じゃ必ず負けるのに。」
「……あなた何者?なんでそんなに私の事を、……いえ、能力を知っているのかしら?」
「そりゃね。長い付き合いだからね。」
男はフードをめくり上げた。