霊
百夜が出て行って……30分、誰も口を開こうとはしなかった。
「……教えろ川、あれはなんだ。」
…初めに口を開いたのは蒼夜だった。
「……。」
「あいつは右手のナイフを意識させてポケットに隠し持っていた方の拳銃を会話中の俺の瞬きを狙って撃ってきた。相当の戦闘経験者だ。さらに俺の全力の攻撃を避けてカウンターまで、…吸血鬼として最高レベルの俺の身体能力についてきた。」
「……。」
姫も口を開いた。
「私の嘘を見抜く能力が……あの人が話している事全てが嘘だと。…いいえ、あの人の存在自体が嘘だと叫ぶの。……真実と嘘の区別がまったくつかなかった。」
「……。」
「私は、もう二度と彼に会いたくないわ。……これは家族の問題でしょう?」
月宮は……わかったみたいだ。
「…川、あいつが異常な犯罪者、それだけならまだわかる、……だが何だあの超能力じみた能力は?」
「……。」
「人を浮かせて首を絞める、見えない壁を作って攻撃を防ぐ、人の動きを止める。どんな原理だ?……教えろ。」
…この30分で必死で考えたんだろう。マジックや薬、催眠なんかを、
「……信じるかわからないが……言うぞ。兄貴は…………」
《圓城陽奈》
「…幽霊と話ができる?」
「そう、朝倉百夜は霊能力者なの。……かなり凄腕の。」
「…信じられないな。」
「まぁ、無理もないわね。……でも事実よ。しかも話ができるだけじゃなくそれを使役する事も出来る。物を浮かせたり、遠くの景色を見てきたりね。」
「なんて至れりつくせりな能力だ。……それでカルト教団を創ったのか。」
「……正解。……でもその能力にも色々と条件もあるのよ。」
「どんなだ。」
「死んだ人は数日中に成仏してしまうらしいの。そして、数日では物を浮かせたりとかは出来ないらしいわ。」
「ん?じゃあ実質不可能じゃ、……ああ、成仏させなければいいのか。」
「その通り。成仏しない、いえ、出来ない霊を使役するんだって。成仏出来ない霊って基本的に未練や後悔、怒りや悲しみが強すぎて成仏出来ないらしいわ。……まぁそれも時間が経てば薄れて成仏するみたいだけど。」
「…なるほど、そういう霊と交渉して使役すると。」
「そうね、でもそう簡単じゃない、まず霊を見つけて、成仏しないか確認して、話して仲良くなり、言うことを聞いてもらう……他人で、死んだ後によ。」
「かなり大変そうだ。……ならあるんだな?他に使役する方法が。」
「ええ、悪霊を使うの。」
「悪霊?」
「普通に死んだ人は時間が掛かろうと必ず成仏するわ。それが人としての天命たから。…でも、悪霊は成仏しない。人である間に罪を犯して死んだ霊は成仏が出来ない。」
「……聞いたことがあるな。善人のまま徳を積んで死んだ人間はマル。頭に輪っかを着けて天に昇る。だが、悪人のまま罪を背負って死んだ人間はバツ。胸に罰を受け、その重みで天に昇れない。」
……私は最初、人が教会なんかで十字をきるのは神様にまだ天には昇りませんとアピールしているんだと思っていた。
「そう、悪霊になったら成仏は無理なの。……でも方法が二つあるの。一つは除霊すること。もう一つは誰かのために尽くすこと。」
「……なるほどな。」
「……そして、使役しやすい相性があるの。……魂が似ていると良いらしい。……血縁者とかね。」
「……全部わかった。」
「……どうする?」
「朝倉百夜を潰す!」
「そうこなくっちゃ!」
《天野川》
「というわけなんだ。」
「……幽霊を相手にしろって事かよ。」
「とんだ化け物ね。」
「……PGってポルターガイストの略だったのね。」
「……みんなには悪いんだけどさ。今回の件はさ、月宮の言った通り俺の、家族の問題だからさ。……危険だし、何も知らなかった事にしてくれないか。」
「「断る!」」
「わかったわ。」
「「……。」」
「いや、それでいいんだ。月宮、助かる。……2人もよく考えてくれ。さっきも全くなにも出来なかっただろ?」
「「……。」」
「そんな危ない事に近づかないでほしいんだ。」
「それはお前もだろ!」
「…俺は大丈夫だ。…家族だから。」
「「そんなわけないだろ(でしょ)!」」
「……。」
「…………まだ二週間あるしさちょっとよく考えてから答えを出してくれ。」
「「……。」」
「今回は、……本当に死ぬかもしれない。正真正銘の化け物だ。蒼夜にも姫にも……死んでほしくないんだ。」
「「……。」」
「というわけで今日から見舞いも来なくていいから。俺もちょっと準備をすることあるし。」
「……わかった。」
「……そうね。」
「「じゃあ。」」
「ああ。」
「「二週間後な」」
「……。」