兄弟
《病院》
「……ここやな。川が入院しとる病院は。」
男は病院の中に入って行く。
《天野川の病室》
「おいバカ!あれだけ死ぬ思いしてその記憶がないってどういう事だ!」
「知らねえよ!そもそも、お前の血のせいなんだから仕方ないだろが!」
「…私との約束は?……仕方ないで済ませる気?」
「…えっと、いや、そんなつもりは…姫さん?だ、大丈夫だ!ちゃんと覚えてるよ!」
「その上でブッチしたのよね?」
「月宮ちょっと黙れ!今どんな状況かわかるだろ!」
「「「馬鹿が全てを忘れている。」」」
「そうだよ!みんなごめんな!てか、なんでこんな時だけ息ぴったりなんだよ⁉︎」
病室だというのも忘れて騒ぎ弄られていた。
「……病院内では静かにお願いします。」
「「「「…すみません。」」」」
だからだろう、白衣の男性がこちらを睨みながら入ってきた。
「天野くん、今から検査があるからこの車椅子に乗って少し来てもらっていいかな。……お見舞いの方達は悪いけど帰ってもらってもいいかな。」
どうやらまだ何かしないといけないらしい。
「あ、わかりました。…悪いけどみんな今日は帰ってくれ。見舞いありがとな。…………蒼夜?」
蒼夜は俺の言葉に耳を貸さずというか姫も月宮もずっと白衣の男性を睨みつけている。
「……どうしました?」
「…お前は誰だ。」
「蒼夜、何言ってんだ?医者だろ?」
「…こんな血の匂いをさせている医者が」
「医者なんだから当たり前だろ。」
「薬品の匂いが一切しない。」
「……。」
「おまけに検査があるって言うのは嘘。」
姫がつぶやく。
「……もう一度聞くぞいったいお前は誰だ。」
「……。」
「……。」
にこやかに笑っていた白衣の男性は諦めたように下を向く。
「……もうばれてしもうたか。…まあええか。川、久しぶりやな。」
「……いや、誰だよ。初めて見たぞ。」
「…なんや、声で気付いてほしかったんやけどなマイブラザー。……これでどうや。」
「「「「えっ!!!!」」」」
白衣の男性が顔をめくり上げた。するとさっきと全く違う顔になり全員が驚いた。
「凄いなマジックか。」
「……。」
「…嘘だろ。」
「どうした、川。」
「やっと思い出したんか?」
「……。」
「おい、誰なんだ。」
「……兄貴だ。俺の五歳の時に生き別れた。……いや、両親と一緒に亡くなったはずの兄弟。」
「今な、苗字変わって朝倉百夜っていうんよ。」
「生きてたのか。」
「まあな。数式家の感動の再会やな!」