入院
《圓城陽奈》
「……え、ここは?」
目が覚めたら私はベットの上にいた。……ここが自分の部屋だと気付くのに少し時間が掛かった。何故なら
「……どうして、」
「…わたしから話しましょうか?」
……ベットの横で本を読んでいる、紅夕日がいたのだから。
「頼む。」
《天野川》
俺は天井を見上げていた。
「……痛い。」
「当たり前だ、ボケカスが。全身打撲プラス複雑骨折で全治2週間だそうだ。俺は動くなって言ったよな?」
「蒼夜、……悪い。俺も危ないことをする気はなかったんだよ。」
「はい嘘。この裏切りポンチ。」
「……姫、悪い心配かけた。」
「え?別に心配なんてしてませんよ?私の友達だった人は約束を守り、嘘をつかない人ですから大丈夫ですよ。……所であなた、だれですか?」
「…………。」
「……こりゃめちゃくちゃ怒ってんな。…と思ってるわね。」
「……月宮、お前も。」
「あ、私はもともとあなたの事を嫌いだから大丈夫よ。全然変わりなし。」
「それはそれで辛い。」
ここは病院。とりあえずやる事やってぶっ倒れたらしい。目が覚めたときにはこの三人に囲まれいびられ続けている。
「……トラックに轢かれて異世界転生とか最近よくあるじゃん?あれ、嘘だった。轢かれても何処にも飛ばされないしただ痛いだけだったぜ。」
「「「そのまま死ねばよかったのに。」」」
「……本当に死ぬとこだったんだよ。……蒼夜の血がなければ。」
「俺はこんな事になるために飲ませたわけじゃなかったんだがな。」
蒼夜の血、それは吸血鬼の血。少しでも体の傷が瞬時に回復するそれを俺は蒼夜に結構な量を飲まされた。
「お前の顔と喉と刺された腹を治すためにと思っていたが……。」
「おかげでトラックに轢かれても死なないですんだよ。てか、手足の骨とか折れてたのに今はほとんどくっついてるし、蒼夜の血って本当に凄いよな。」
「本来、全治2週間とかあり得ないらしいわよ。」
「だろうな。」
正直、紅の所に行った時点でも死ぬかもしれないくらいヤバかった。それが今は歩けるくらいには回復している。
「……ねぇ、黒野君。その血を私に売ってくれない?エリクサーとかいって高額で売れると思うのだけれど。」
「いや、無理だろう。確かに傷は治ると思うが実は副作用があってな。……使った前後の記憶が曖昧になるんだ。」
「……蒼夜!俺、初耳!」
「……こうなるんだ。」
「それは確かにめんどくさいわね。」
「しかも、量や時間でいつの記憶が抜けるかがわからない。……丸一日ならまだしも一カ月の奴もいたらしい。」
「……それは厳しいわね。」
「……ねぇ、それじゃあ川君は昨日の事どこまで覚えているの?」
《圓城陽奈》
「…あの後、いったい何があった。」
「ふふ、そうね、まぁ色々と説明しづらい事もあるからこれを見て。」
そう言って紅が本を横に置いてビデオを取り出した。
「……本当に撮っていたのか。」
「まあね。……始まるわよ。」
「……。」
写ったのは縛られた圓城と紅夕日。そして、携帯の画面に圓城が叫ぶ。
「……川に意識してもらいたかっただけなんだぁぁぁ!!!」
「ストップウウウウウウ!!!!」
圓城が停止ボタンを押す。
「あら?何故?」
「もっと後!そこはいらない!」
「……わたし的にはお気に入りなんだけど。……ここら辺かしら。」
「……。」
少し早送りして画面を見ると天野川と片膝をついた紅夕日が写った。
「……かしこまりました。……天野様。」
「ストオオオオプ!!!」
「今度は何?」
「いや!だって!……何が起きたの?」
「それを今から見るんでしょ?」
「……想像がつかない。」
「……そうね。想像が出来るわけないわよ。……まさか、天野様がここまで馬鹿な人だったとは。」
「それは知ってる。」