預言者の話2
《3年前》
○○会社の社長室をノックし1人の女性が部屋に入ってきた。
「社長、資料とコーヒーをお持ちしました。」
そう言って女性が男に書類を差し出す。
「…うむ、ご苦労。」
男は資料を読みながらコーヒーを飲む。
「…この件については後でまた話し合おう。もう、出て行っていいぞ。」
そう言って男は資料を机に置いた。
「わかりました。……所で社長、貴方は誰ですか?」
「?何を言っているんだ君は。私を社長と呼んでいたではないか。」
「では、私は誰ですか?」
「…君は私の秘書だろう。紅夕日くん。」
「違いますね。私は本来は貴方の上司、……社長です。貴方の仕事は社長の椅子に座っている事と私の命令に忠実であること。あなたが本物であれば私が来た瞬間にこの豚を罵ってください!と服を脱ぎながら言ってくるはずよ。」
「……。」
「姿形、声はそっくりですが貴方からは本人のような不快感や嫌悪感を感じませんし、……何より私のレールを無視するほどの人間ではありません。貴方ですよね?最近、社長を自殺に見せかけて殺していたのは。」
「…やば、バレとるやん。」
男は徐に自分の顔を剥ぎ取りだす。そして、服を脱ぐと同時に体型すら変化した。
「……何でばれたんやろ?なぁ、次に活かすために教えてくれへん?」
そこにはさっきまでいた社長とは別人のチャラい男が立っていた。
「……まるで魔法ね。……私には未来が見えるの。」
「え〜自分こそそれは反則やん。……なら、取り敢えず死んどこか?」
男は右手を私に向ける。
「……今私を殺したら貴方も死ぬわよ?」
「そんなちゃちな脅しは効かへんで。」
「コーヒーに毒を盛ったから。」
「…すこし話し合おか?」
「そうね。コーヒーでも飲みながら。」
《現在》
「それが私と朝倉の出会いだったわ。」
「めちゃくちゃ思い通りに動かしてるじゃないですか⁉︎」
「そんなことないわよ。話し合いをするまでにかなり色々されたから。……私にとってはかなりの出来事よ。」
「はぁ、それから朝倉君と仲良くしていたわけですか。」
「?いえ、彼は警察に突き出したわよ?」
「何故!」
「……だって犯罪者だし。」
「そ、その通りですね。」
「彼、酷いのよ。出所してきたのが先月の事なんだけど。私に会うなり、なぁ、未来には自分にいつ殺されるようになっとるん?とか言いだすのよ。真顔で。久しぶりに会う人の台詞じゃないわよね。」
「…言われて当然じゃないですか?」
「そう?私も少し罪悪感があったから彼が寂しくないように洗脳した犯罪者を彼のいる刑務所に定期的に贈ったりしてたのよ。」
「何故言われないと思ったんですか⁉︎」
「一応、同意の上だったから。」
「どんなドMな…………ちょっと待って下さい。洗脳した犯罪者を定期的に送った。……まさか。」
「……あら、もう気が付いたの?流石ね。」
「…あなた達は、」
「……面白おかしく話してたからバレないと思ったんだけど……やっぱり天才ね。言っておくけどこれは百夜の案よ。私にはどうなるか分かりきってたし、止めようにも不可能だったから。」
「……刑務所の中でカルト教団を創っていたのか。」
「ふふ、正解。洗脳した犯罪者を刑務所に送ってサクラの役割を担ってどんどん大きくしていったの。……馬鹿よね。犯罪者のみで出来たカルト教団を創りたいとか言い出したのよ?心の抑制が一度外れた人間は強そうと思わん?とか言って。……まぁ、誰にも邪魔されない場所だったし。迷惑も掛からないからいいかと思って。」
「出所したらどうなると思っているんだ!……つまらないと言っていたのは嘘か?」
「いいえ、彼が私に思い通りにいかない人間を紹介してくれると言うから付き合っただけ。私はそれについては興味ないの。……それより貴女、話し方が変わったわよ?」
「クソッ!紅夕日、もう一度聞くぞ!お前の目的は何だ⁉︎」
「何度も言ってるわ。
……世界征服よ。」