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預言者の話

《廃工場》


「はぁ、はぁ……くっ!」


1人の少女が工場の鉄骨に身体を縛られ手には手錠を付けられて拘束されている。何度も解こうと身をよじるがまったく動かず皮膚に紅くロープの跡が残るだけだった。


「無駄な事はやめなさい。どうせ死ぬのだから。」


「…もう一人は、」


「彼?ああ、飽きたから帰るわ〜って何処かに行ったわよ。もともと、興味なさそうだったしね。」


「…つまり、私をこうしてるのも貴女の趣味って事ですね?」


……そして、私に用があるのも貴女ということ。


「……最後の記録としてビデオに収めてあげる。売ったら高値が付きそうよ。……かなり良い絵面だから。」


「やめてください!最後の記録がこんな姿なんて!辱しめられるくらいなら今死にますから!……貴女の趣味も墓に持っていきますから!」


「……カメラ準備オーケーよ。」


「嫌ですよ!これくらいで怒らないで下さいよ!そして準備早すぎです!やっぱり趣味ですよね!」


「…スタート。」


「話を聞きなさい!この盗撮魔!」


「…割と元気ね。…普通こんな状態にされたらもう少し取り乱すものだけど。」


「…別に冷静ではないと思いますけど、口は出せても手も足も出ないどうしようもない状態ですからね。…腹ぐらい括りますけど。」


「…助けが来るとでも?」


「そうですね。もうそれくらいしか助かる方法がないですから。……あと神頼みですかね。」


「…ふふ、そうね。なら少し待ってみましょうか。暇つぶしに私に聞きたい事はあるかしら?」


「そうですね。……では、何故私を狙ったんですか?」


「貴女の方から来たんじゃない。」


「いえ、確かにそうですが、それは貴女が私を狙っているとわかったからです。私の近くで多くの事件を起こしたり、川君を洗脳しようとしたのもそのためでしょう?私を知るために。…だから、何かされる前に飛びたしたんですけど。」


「返り討ちにあったと。」


「……彼は反則ですよ。彼みたいな人がいると知ってたらもう少し準備をしていたのに。」


「…あら、私なら大丈夫みたいな言い方ね。」


「まぁ、準備してましたし。…怒りました?」


「いいえ、嬉しいくらいよ。……私はそういう風なのを求めていたんだから。」


「……。」


「…私はね、実は天才なの。」


「私もです。」


「知ってるわ。それが理由。」


「……そんなに、暇だったんですか。」


「ええ、それはもう。生まれてこのかた私の思い通りにならなかったことなんて二回だけよ。」


「……なんて羨ましい人生。」


「…体験してみたら分かるわよ。先が見えてるレールの上を歩くのがなんてつまらないか。」


「…踏み外す気は……ああ、それも見えてるんですね。」


「ええ、その通りよ。どんなに馬鹿な行動をしても、その先が見えてしまうの。…今から出会う人、語りかけられる言葉、起こる事象、見える景色まで全てが秒単位で理解出来てしまうの。」


「貴女の人生が…いえ、世界が全て貴女の敷いたレールの上なんですね。」


「…貴女も同じなんじゃないかと思っていたんだけどね。……全然違ったわ。男一人上手く落とせない。」


「馬鹿にしてますね⁉︎ですがその通りです!私の人生のレールはいつもいつも亜空間と繋がりますから。思い通り?計算し、策を仕掛け、罠を張り、全力で挑んで!…ほら、この通り♪」


「…一体何が違ったのかしら。私と貴女は……羨ましい。」


「……ちなみに思い通りにいかなかった二つって何ですか?」


「…一つは兄の行方を探せなかった事、そしてもう一つは…朝倉百夜と出会ったことかしら。」


「ほほう!彼とどんな出会いをしたんですか?」


「……そうね、あれは確か私が幾つかの会社を立ち上げてホームレスに社長をさせてた時かしら。」


「…ああ、私にもそれをやろうとした時期がありました。お金集めくらいしかもう生き甲斐がなくなってた頃ですね。……なんでも上手くいくから。」


「…似た者同士ね。だけど、それは上手くいかなかった。……社長が次々に自殺していったの。」


「任せる役が重すぎたんですか?お飾りだったんでしょ?……なんて、それが朝倉百夜君の仕業ですか。」


「あまり先を読まないでくれる?空気読めない人ね。」


「すみません。続きをお願いします。」


「……監視カメラには社長が自ら首をくくる映像があり、警察は自殺と断定したのだけど、私にはそれはあり得ないと判断したの。……だって、私のレールの上では社長達はみんな生きているはずだったのよ。」


「……。」


「私はおかしいと思い、自殺した社長の共通点を探したわ。けれどいくら探しても見つけられない。せいぜい、……自殺した社長全員が一週間以内に必ずある人と道をすれ違っていた事くらい。」


「…よくまぁそんな共通点を見つけ出しましたね。確率の低いにも程があるでしょう。」


「まぁね。……でも、それが彼との出会い。」


「………。」


「…何せ初めての経験だったのよ。未来は見えてるのに何が起こるかわからないなんて。」


「……。」


「彼がどんな人間かは分かってたの。殺人、強盗なんかを繰り返す犯罪者。誰にも捕まらない。誰にも殺されない。そして、誰も知らない犯罪者としてね。」


「異議あり!貴女の言葉は矛盾しています!」


「ふふ、そうね。その通り。とても矛盾した話よね。………でも、それが事実だった。私のレールに彼はいない。でも、確かに人として存在しているの。彼の存在は探しても見つけられないような人だったの。」


「……どうやって見つけたんですか。」


「……記憶を思い出すと私のレールの上であり得ない脱線が起こっていたの。未来と違った事象が。…でも原因がわからない。だってそこには何も、誰もいないはずだったのだから。そんな脱線を過去から調べていたら……その脱線が一つのレールになったの。」


「なるほど、貴女のしらない誰かが歩いた道は貴女の思い描いたレールを壊して新しいレールを作っていたと。そして、彼の後を追うために……乗ってしまったと。」


「…正直、あの時は私もかなり興奮していたのよ。どう考えてもこの人には近づいちゃいけないって分かってたのに。私にも知らない事があったなんて!と思ったらね。」


「……往復切符を買っておくべきでしたね。」


「ちゃんと買ってたわよ。…ただ、出会った頃には帰りのレールがなくなってたのよ。」


「あら、暴走特急のほうがまだ可愛いですね。レールに乗ってる分。」


「そうね。どんなに迷惑をかけても最後は何処かでぶつかって止まるのだから。レールに乗らない彼は人のレールを壊して歩き続ける災害、いえ、死神と呼ぶべきかしら。」


「…そんな死神と貴女は出会ったんですか。」


「…ええ、初めて対面したのは……そう、彼が私を殺そうとした時だったかしら?」

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