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弱き者たち

《竹林》


「携帯が切れたな。」


「はへはほへ!(かけ直せ!)」


「……繋がらない。電源を切ったんだろう。」


クソ!なんだかわかんないが嫌な予感がする。俺と蒼夜は焦る。


「とりあえず山下は月宮と姫星を呼ぶから二人に任せて俺は圓城を探しに行く。」


「はあほへほ!(じゃあ俺も!)」


「…お前は病院に行け。……そのままにしたら本当に死ぬぞ。救急車は呼んでおくから。」


「へ?…あ、」


…痛みを感じなくなってたから忘れてたけど右バラに包丁が刺さってたんだっけ。…あ、意識しだしたら気分悪くなってきた。視界が歪んで思わず倒れた。


「ほら、そんな状態じゃ無理だろ。…必ず連れてくるから少し待ってろ。……その前に。」


そう言って蒼夜は俺に近づきーーーー












……きて。


ん?


せ……ん……て。


誰かが何かを言っている?


「川君!起きて川君!」


グラグラと体を揺らされ俺はゆっくりと目を開ける。



「……姫星、」


「良かった!気付いたんだね!死んでるかと思ったよ。」


何故か涙目の姫星が目の前にいた。……いつの間にかに意識を失ってたらしい。


「蒼夜君から大体の話は聞いてる。もうすぐ救急車も来るからもう少し待ってて!」


「……杏奈さんは?それに月宮も」


確か呼ぶとか言ってたような。


「月宮さんには山下さんの服を着替えさせて家に送ってもらったよ。」


「そうか、」


どうやら杏奈さんの方は大丈夫みたいだ。


「姫星、俺は、「駄目だよ。」……。」


まだ言い切ってねぇよ。


「圓城さんを探す気だよね。それは蒼夜君達に任せなよ。」


……。


「心配なのもわかるし、大事なのも凄くわかるよ。でもね、今は川君の方が心配だよ。……あんまり無茶しないで。」


……わかってる。今俺が出来ることなんて。


ピリリリ!ピリリリ!


手に持っていた携帯が鳴った。……確認すると、


「…圓城からだ。」


俺はすぐさま通話ボタンを押した。


「圓城!今どこだ⁉︎」


「残念だけど圓城さんじゃないわよ。」


そこから聞こえてきた声は圓城ではない女の声だった。…最近聞いた。


「…紅夕日か。」


「ええ、体の具合は大丈夫?」


何故圓城の携帯から紅夕日が出る?友達?代理?



…………そんなわけがない


「圓城に何をしやがった!」


「まだ何も、……これからあなたが指定の場所に一人で来るならもう少しだけ生かしておいてあげる。もちろん断れば……わかるわよね。」


「……場所は?」


俺は尋ねながら携帯のスピーカーを押す。


「場所は南区の廃工場、その中で圓城さんと二人で待っているわ。時間はそうね、6:00までに来てね。」


…今、5:30。廃工場までならギリギリじゃないか。


「あなたがいる竹林からなら大丈夫よ。……寄り道しなければね?」


「……。」


…何で場所を知ってるんだ⁉︎俺は辺りを見渡すがわからない。


「もちろん来なくても大丈夫よ。あなたは圓城さんに酷い扱われ方されてるみたいだし、メリットもないしね。……助ける理由もないでしょう?」


「……行くさ。だが何で俺だ?それに何で圓城を攫った?紅夕日、お前は何者だ。」


こいつの行動理由がわからない。


「ふふふ、理由は簡単。この世界がつまらないからよ。そして私は預言者よ。」


「…さっぱりわからないんだが。」


「それならそれで構わないわ。……あなたが死ぬだけだから。」


「……なんでそんな事を。」


「……私には未来が見えるの、」


「は?」


「……ふふふ、……それじゃあ待ってるわ。」


携帯を切られた。


「……。」


…本当に意味がわからない。だが、何もしないわけにはいかないか。俺は再度時計を見る。


5:34


……今から走れば間に合うな。俺は立ち上がり前を向く。


「…姫星、どいてくれ。」


「…君は行っちゃいけない。蒼夜君に電話して任せるんだ。」


姫星が俺の前に立ち塞がる。


「…俺じゃないといけないんだ。どけ、姫星。」


「…彼女との会話は一部始終おかしい。何故私達がいる場所を知っているのか。川君が怪我をしている事を知っているのか。圓城さんを攫った。これがどれほど大変か。そして、…川君が死ぬと言った。内容も意味もわからない。けど、彼女の声を聞いて……嘘が一切なかったの。」


姫星、……いや、姫か。


「それでも行かないと。」


「彼女は言ったわ、死ぬと。」


「……。」


「貴方は言ったわ。……友達になってくれると。」


「……。」


「…死ぬかもしれないところに、友達を行かせたりしない!」


「姫、……」


姫は俺を睨みながらさらに続ける。


「私に約束をしてくれた友達は私を一人にする嘘つきなの?」


「……。」


「私に手を差し出してくれた友達は私の手は振り払うの?」


「……。」


「お願い、行かないで。圓城さんはそんな簡単に死ぬ人じゃないわ。……それに私達には仲間がいる。蒼夜君たちが必ず助けてくれる、大丈夫よ。」


「……。」


「……もし、それでも行くと言うなら……絶交よ。」


「……。」


「もう友達だなんて思わない。約束も知らない。あなたの事を……いいえ、全ての事を信じない!」


……姫がここまで言うなんて、俺を睨む目が下を向く。


「……わかってるの。川君はそれでも行くんだろうって。……でも、」


必死で止めてくれる姫。俺はこんなに必要とされてたのか。……圓城からはこんな風には思われないだろうな。


「怖いの!彼女の声を聞いて!川君はこのままいなくなるんじゃないかって!」


それなのに何で圓城を助けにいきたいと思うのか?それは、きっと俺が圓城の事をーーー


「姫。」


「私は!」


「姫、俺を信じてくれ、姫が信じてくれるなら俺は姫との約束を嘘にしないから。」


「……。」


「俺を友達と呼んでくれる人に嘘をついたりなんかしない。」


「……。」


「俺と約束をしてくれた友達を一人になんかさせない。」


「……。」


「たとえ、嫌われても、絶交されても、」


「……。」


「俺は何があっても友達を裏切らない。……圓城もその一人なんだ。」


ーーー大好きだからだ。


「……嘘なし。はぁ、……約束だからね。」


姫が俺のまえから横にずれ道を譲る。


「ああ、」


俺は走り出す。


「必ず。」


姫に背を向けて竹林から抜け出す。目の前に子供が遊んでいて。


「……っ!」


横からは猛スピードで走ってくるトラックが、


「嘘だろ!」


子供に向かって突っ込んでいった。


ガッシャン!!!!!!!!








「……。」


壁に激突したトラックとその間に押しつぶされた人、辺りには血が飛び散っている。


「うわわああああん!!」














その横で子供が大声で泣いていた。



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