強き者たち
《公園》
「私は圓城陽菜です。初めまして、紅夕日さん。……あと、」
「ん?自分?自分は、朝倉百夜って言うんよ。よろしゅー!」
「…紅夕日さんに朝倉百夜君ですか、」
……クソ厄介ですね。内心で圓城は毒吐く。
「あなた達2人にはこれ以上好き勝手はさせません。」
「あら、いきなりね。私たちが何かしたのかしら?証拠でもあるの?」
「夕日ちゃん夕日ちゃん。自分から証拠とか言うたらあかんやん。ここはシラを切り通さな。……ほんまでっか。」
「(イラッ)……沢山ありますよ。」
「……例えば。」
「さいでっか〜」
「(イラッ!)…大手の大企業の社長や幹部の自殺騒動。強盗、殺人などの犯罪で刑務所に送られる犯罪者の急増。そして、若者による……性格異常の犯罪。全てあなた達の引き起こした事件ですよね。」
「……心当たりはないわね。」
「ちゃいまんがな。」
「あなた達は催眠で人の記憶を消してたみたいですけど、さっきの電話の通り私はあなたの催眠を解けます。私が動けばこれからあなた達の犯行が明るみに出ますよ?」
「…やってみなさいよ。そんな事してないから。」
「そやそや、証拠なんか出るかい。なんせみんな殺したんやから。…………はっ。」
「……。」
「……。」
「…ゆ、誘導尋問とはやるやないか。」
「…今の会話は録音しています。大人しく捕まってくれませんか?」
「……朝倉、あなたの責任よ。」
「そんな、夕日ちゃん!……まっ、そやね。」
朝倉百夜はいきなり圓城に襲い掛かる。
「証拠隠滅!」
朝倉が圓城を押し倒そうとのし掛かる。普通だったら大の男にのし掛かられたら華奢な女性にはどうしようも出来ない。
「…はぁっ!」
だが、圓城が倒れるどころか朝倉が宙に舞った。
「グェッ⁉︎」
そして、朝倉は地面に叩きつけられると同時に関節技を極められ、更に手錠をかけられた。
「な、なんちゅう早業!」
「あいにく、これでも極上な美少女ですから、護身術くらいは一通り身につけてます。」
「何を習っとるん?」
「特には……ただ、剣道5段、空手4段、柔道6段、」
「めちゃくちゃやっとるやんけ!」
「を瞬殺した事があるくらいです。」
「…経験やなく経歴かい。」
女って怖いわ〜朝倉がうつ伏せのまま嘆く。
「…ま、自分も負けてへんけど。」
「この状態でまだ何か出来るとでも?」
「ん?何かも何ももうし終わっとるよ?」
「なん……あれっ?」
突然、圓城の体が糸が切れたように倒れる。
「よいしょっ!」
朝倉はその隙にゆっくり立ち上がり
「ほいっ!」
手錠をカチャカチャと鳴らすと簡単に外してしまった。
「なっ!」
「ごめんなぁ、投げられてる間、暇やったからちょっと薬を打たせてもろうたわ。大丈夫、ちょっと痺れて動けへんだけやから。」
いつの間に、
「自分もな、圓城ちゃんと同じく極上な美少年やからね、欲にまみれた老害からプロの殺し屋まで人通り手を出しとるんよ。」
「……くっ!」
「…ちゅーわけでどないする夕日ちゃん?」
「…生かしておくわけにもいかなわね。ただ、場所を変えましょう。……あと五分で人が来るから。」
よく見ると公園の周りには車どころかひとっこ一人見当たらない。
「相変わらず夕日ちゃんの無人スペース確保の技術は神レベルやね。」
「……別にこんなの大した事ないわ。この市にいる人間の数を憶えて行動パターンと範囲を計算していけば自ずと分かるものだから。スペースが必要なときは誘導すればいいのだから。」
「…いやー惚れてまうわー。」
朝倉は呑気にボケながらも圓城を担いで紅夕日と共に何処かに消えていった。
その五分後、公園は子供や通行人などが通り賑わう。少し前に誘拐事件があったと知らずに。