サンタ捕獲祭の前夜
《???》
サンタクロースの事件は実は3年前から続いている。最初の被害者は3年前、とある女性に付き纏うストーカーだった。そのストーカーは毎日のように言っていたらしい。《ずっと彼女のそばに居たい》と。クリスマスの日、彼女の家に差出人不明のプレゼントが届いた。白を基調とした可愛らしいブローチだった。その1カ月後、彼女の家から異臭が漂う。……調べてみると彼女の家の床下でそのストーカーが死んでいた。左手には紙が握られ血文字で《メリークリスマス》と書かれていた。……右手は何故か無かった。
2年前、1人の少女に恋をした少年がいた。少年は《少女の笑顔が見たい》といつも恥ずかしそうに言ってたらしい。クリスマスの日、少女の家に差出人不明の花が植木鉢にささって玄関に置かれていた。その前日に少年は行方不明になっていた。見つかったのは2ヶ月後、学校の裏の土の中、動物の墓と一緒に埋められていた。やはり、手には紙が握られ血文字で《メリークリスマス》と書かれていた。……眼球が何故か無かった。
そして、去年は5月に見つかった3人の家族。子供はいつも言っていた。
…仲良く3人でご飯が食べたい。
パタリと見ていた資料を閉じる。
1年に一度だけ、願いと同時に命を奪うイカれたサンタクロース。また、今年も7ヶ月後に願いを叶えるために人を殺すのだろう。
「今年は必ず止めてみせる。……何故なら。」
不可能なはずだ。犯人は1年にたった一度だけしか犯行に及ばない。場所も人もバラバラで困っている人を助ける善人のつもり。快楽殺人でも衝動殺人でもない。幸せになって欲しくて行う計画的殺人、しかも、一年がかりの。まだ顔も性別も年齢も断定されていない。12月にのみ現れる。文字通りのサンタクロース。正体が知りたいのならベットの下に靴下を吊るして眠り、願い事をするしかない。……目が覚めるかはわからないが。
だから不可能なはずだ。
「何故なら。犯人はうちの学校の生徒だから。この翼陵高校の。」
……不可能な…あれ?
「まだ、名も顔も知らない犯人だが、明日、必ず捕まえてやる。靴下の中を覗きに来い。……足どころか体ごと収まる特大のを用意して。」
……あれ?
「私が待っている。」
圓城が不敵に笑った。