名を変えて。
《天野家 玄関》
「…悪いな変なとこ見せて。」
「いえ。……だけど何ですか!どうして天野くんがあんな風に言われないといけないんですか!」
「昔からあんな風じゃなかったんだよ。…だけどいつの間にか俺と兄妹でいる事を嫌がるようになりだして。…いちおう、兄妹として話もするし遊びにも行くけどなんか…やっぱりよそよそしいんだよ。」
「…それだからって、家を出て行けなんて普通言いませんよ。」
「まぁ、そこらへんはハゴ姉にしかわからん。ただ、学校を卒業したら俺は天野じゃなくなってしまうな。…前の姓名を名乗らないと。…川って呼んでいいよ。」
「…それでいいんですか?兄妹から家族じゃないなんて言われて、辛くないんですか?」
…少し、おどけて言ってみたが山下さんは真剣に俺を見て聞いてきた。少し怒りが混じっている。…俺は頭を掻きながら冗談が通じないことを察して溜め息を吐いて答える。
「…俺は感謝してるぜ。家族がいなくなって1人になった時、ここだけは俺に優しくしてくれたんだから。」
「……。」
あの頃は何もかもが分からない状況だった。ただ、不安と恐怖に押しつぶされそうで……周りより自分が怖い。…心境だった。それを天野家は救ってくれた。言葉じゃ語れない。心で、想いで返したい。
…だから
「例え、ハゴ姉に嫌われてても俺は父さんも母さんもハゴ姉も大好きだ。だから、別にそんなに気にしてすらいない。」
…真面目に言うと凄い恥ずかしい。ただ、その言葉が通じたのか山下さんは怒りを緩めてくれた。
「…天野君、……川君!」
「…なんだ?」
怒りは緩めてくれたが真剣さがずっと増した。
「私は!ずっとずっと仲良くしますから!私も1人だった時、川君に助けられた恩がありますから!その!…辛いとき、頼ってくれていいですから!私はずっと!……あの、その、…えっと……これから川君って呼びますから。」
「……うん、もう呼んでる。」
「知ってます!…そうじゃなくて、…卒業しても、仲良くしましょう!」
「…うん。」
山下さんはいつも俺に…優しさを教えてくれる。
「これからもよろしくお願いしますね。」
その言葉が嬉しくて、……でも恥ずかしいので少し茶化して答える。…感謝の気持ちを。
「あぁ、こちらこそよろしく。……杏奈さん。」
「…………あぅ。」
顔を赤くして俯きながら恥じらうやま、杏奈さんを見ていつも思う。
俺じゃなければ惚れてるぞ。